菅元首相のブログ「ヤッコNRC前議長の脱原発発言 」に異議あり

北村 隆司

標題の菅元首相のブログ(4月11日)の内容は、誤解を呼ぶので加筆したい。

ヤッコNRC前議長の「脱原発発言」は、数年前に突如言い出したもので、今に始まった事ではない。

但し(ヤッコ前議長の発言で?)「アメリカでも脱原発の動きが強まった」と言う菅元総理の結論は間違いである。

ヤッコ議長が、任期を残して議長の職のみならず委員の職も辞任した経緯は、全米で大きな話題になったので、知る人も多いと思うが、少し書き添えて見たい。

Wikipediaにもある様に、ヤッコ前議長は、かねてから委員会の専門スタッフ(特に女性スタッフ)から「パワハラ」が酷すぎると言う抗議書が出されていた。

この苦情調査に当たった「監査当局」は、「行き過ぎはパワハラに限らず、極めて重要な資料でも自分の主張にそぐわない物は、意識的に他の委員に見せないなど、職業倫理上も重大な問題がある」と言う事実を明らかにしてヤッコ前議長の立場は極めて弱い物となった。

この報告を受けた規制委員会のメンバーは、民主共和の別なく全員がヤッコ前議長の不信任を決める事となる。

パワハラ問題でも、ヤッコ博士自身が「興奮し易い性格で、怒りの管理が難しい」と認めている様に、安全問題で急に立場を変えたり、怒りのコントロールが出来ない点は、偶然とは言え、菅元首相と共通である。

NHKがヤッコ前議長を日本に招いた時に、ヤッコ博士が個人的にも職業的にも信用を失っている事には’一切触れず「原子力委会前議長」の肩書きだけで反原発発言をさせたのは、何か特別の意図があったのであろうか?

何か、腑に落ちない。

ヤッコ前議長がユッカマウンテンを使用済み核燃料の保管場所にする事に強硬に反対しているのも、彼の政治的後ろ盾であるリード上院院内総務(民主党の議会トップ)の地元だからだと言う噂が強い。学者出身のヤッコ前議長が、原子力業界との縁が薄い事が彼の孤立を招いたと言う同情意見も、今となっては手遅れである。

2013年4月12日
北村 隆司