G0(無極化)時代の到来

2013年04月14日 08:00

先週、韓国出張時に、アメリカ人の友人と話す機会があり、アメリカの現状を直接聞く機会があった。 

彼らの話では、株価が値上がりしているが、実体経済は、非常に低水準でガソリンの値上がりで、生活は苦しくなっているとのことだった。 

ここでは、アメリカの影響力の低下と無極化する世界について考えたい。


ドルが基軸通貨でなくなる日

アメリカの経常収支は、ずっと赤字続きでGDP比2%を超える赤字が続いている。

経常収支(対GDP比)の推移 - 世界経済のネタ帳

これに呼応する形で中国の外貨準備高が3.4兆ドルを突破している。これはドイツのGDPと同規模という途方もない規模だ。 負債の増大分を差し引けば、アメリカ経済はマイナス成長を続けているとも言えるだろう。

このようなことが可能なのはドルが基軸通貨であるからだ。アメリカの経済成長率が高い時期は、経常収支赤字が大きいのが良くわかるが、経済が好調のときには、資本流入が大きいからだと考えられる。  

しかし、中国もこういった状態を快くは思っていない。 最近、ブラジル、オーストラリアとドルを仲介せずに直接お互いの通貨を用いて貿易をする取決めを行った。 また原油価格のドル本位性にも綻びが生じている。実際、中国はイランからの原油輸入を一部人民元で支払っている。 

ドルを基軸通貨とする国際金融体制は、現在まで、ドルの代替物が見つからなかったため維持されてきた。 しかし、近い将来、ドルが基軸通貨でなくなる可能性は上記のように着実に増している。 このように、アメリカが対外債務を増大させて、過剰消費を継続し、経済成長させることは、困難になっていることは確かである。

先進国経済の矛盾

前節で述べたアメリカの場合、対外債務が増大し続けても、それ以上の経済成長があれば、問題は生じない。 しかし、経済成長は対外債務の増大のスピードを大きく下回っている。 ここに大きな矛盾がある。 現在、アメリカ議会内では、共和党と民主党の財政の崖を巡る対立が続いているが、ここにその原因がある。 

これと同様に、日本の財政も、経済成長が政府債務の増大に比べてずっと小さい状態が続いている。 

EUも今年も昨年に引き続きマイナス成長が予想されており、南欧諸国の財政破綻危機という金融問題を抱えている。 

このように先進国は全て、低下する経済成長と指数関数的に増大する債務という矛盾に直面している。 

これを解決するには、経済成長を大きくすることが最も痛みの少ない解決方法であるが、これは極めて難しい。 何故なら BRICSを始めとする新興国の成長が著しく、それを支えるためにエネルギーを始めとする資源が消費されており、資源の有限性から価格が著しく高騰しているからである。 実際、原油価格は、ここ15年でドル換算で6-7倍になっており、IMFは2022年には1バレル180ドルにもなるという予測を発表している。

エネルギー価格の上昇が、賃金の低下を招き、経済成長しても総賃金のGDP比は低下するという現象が起きており、税収も低下する。(つまりエネルギーコストの上昇分だけ賃金が削られる)。 その結果、先進国の政府債務は雪だるま式に増大している。

原油価格の高騰が車社会であるアメリカに如何に大きな影響を与えているのかは、ガソリン販売高(単位 千ガロン)の推移を示す以下のグラフを見れば明らかだ。

Weekly%20Total%20Gasoline%20Retail%20sales%20By%20Refiners_0

(ソース:EIA)

世界経済のインバランス

先進国のこうした窮状と同時に新興国でも経済の疲弊が著しい地域がある。 中東から北アフリカに掛けて、食糧価格、原油価格の高騰から多くの国が窮乏しており、エジプトではクレジットクランチが起きている 世界銀行によると、中東・北アフリカ(MENA)の若年層の失業率は世界最悪で、労働人口の半数が就職にも就学もしていない状態であり、新たなアラブの春が起こりかねないと警告している。 日本では想像もつかないかもしれないが、エンゲル係数が高い貧困層にとって、食糧価格の高騰は死活問題である。世界全体で6秒に一人の割合で、飢餓と低栄養のために子供が死んでいるという。  

今後、資源、食糧の価格高騰から、新興国の一部が窮乏して難民が出たりテロリズムが一層ひどくなるだろう。中東が不安定化すれば、エネルギーの中東依存度の大きい日本は窮地に立つことになろう。  

2013年度の世界の経済成長は世界銀行の予測では2.4%となっているが、この数字は世界の人口増加率1.2%を考慮すると、一人当たりでは実質1.2%程度である。従って、人口増加が止まり、政府債務が限界に近付いている、先進国の経済成長は必然的に0%台にならざるを得ない。  

無極化する世界

以上のように、アメリカは次第に世界の中で、急速にその存在が小さくなりつつあり、先進国全体も低成長の中で、その影響力が急速に小さくなりつつあるように思われる。 

これは、熱力学的な現象であり、先進国の債務増大と低成長の矛盾は、先進国の生活水準の低下という形でしか、解決できないように思われる。 

大量生産、大量消費の時代は、終わりを告げ、 先進国は、その影響力が低下し、世界は無極化(G0)の時代を迎える。 その中で、我々はどのような秩序が形成されるのか、あるいは混乱が生じるのか、日本は他国とどのように連携すべきなのか、見極めてゆかなくてはならない。 

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