先進国の経済成長の持続可能性について

2013年04月24日 11:30

人間は誰でも豊かな暮らしがしたいという願望を持っている。そのため、経済成長を目指すことは、自然であるし、豊かさのパイがどんどん大きくなれば、豊さの分配に苦労することもないし、債務の問題も解決し易い。 


しかし、その一方で、物質的な豊かさに限界があることも事実だ。例えば、中国人が現在の日本人と同水準の生活をしようとすれば、地球が3つ必要だと言われている。 つまり、中国人は、現在の日本人並みの生活を実現することは、永遠に出来ないということだ。これは大変なことだ。

だから、中国、インドといった巨大な人口を持つ新興国が豊かになってくれば、当然のことながら、先進各国は、その豊かさを減じなければならない。
   
ここまでは完全に正しい。  

先進国の持続的成長は可能なのか?

上のような簡単な考察からも分かるように、先進国の経済成長は、近い将来止まって、豊かさが徐々に失われる過程に入ることになる。 

実際、先進国の経済成長は続けられなくなってきている。 今のところ、先進国全体としても経済成長はプラスだ。 しかし、ユーロ圏は、今年もマイナス成長とIMFは予測しているし、アメリカも最近のIMFの予測では、今年の経済成長は1.9%と小さい。 

しかも、アメリカ経済は凡そGDP成長率の2倍のGDPの3%以上の規模の経常赤字を継続的に出しており、経済を回すには海外からの対米投資が必要な状態だ。 しかし、アメリカ国債の海外投資家の購入比率は、減少している:

US-BOND

FRBが最後の買い手という状況で、経常赤字を現在のような規模で出し続けることは、不可能なように思われる。 昨年末「FOMC:米国債を毎月450億ドル購入、保有資産が拡大へ」というニュースがあったが、これは景気回復を後押しする金融緩和というよりも、アメリカ国債の最後の買い手としてFRBが買うという面も否定できないように思われる。

その上、国家も、世帯も借金漬けである。

us-debt-by-sector-dec-2012

Low oil prices lead to economic peak oilから転載)

このようにアメリカ経済は、とても持続可能とは言えない。

最近中国がオーストラリア、ブラジルとの相互貿易をドルを介すことなく、それぞれの通貨で決済したり、2007年にクウェートがドルペッグ制を廃止し通貨バスケット制に移行するなど、幾つかの国で、外貨準備の多様化を進め、ドル外しを進めているのは、偶然ではなく、ドルの信認の低下は、否定できない。ドルが基軸通貨であり続けることも、近い将来、困難になるだろう。 巨額の経常赤字を計上しながら、アメリカの消費が世界経済を牽引する構造は続けられない。 

一方、日本も巨額の財政赤字を抱え、財政を再建するのは困難を極めるだろうし、EUも南欧諸国の政府債務問題の解決は困難を極めている。  

以上のように、現在の先進国経済は、総じて持続可能性を欠いたもので、経済成長は今のところプラスではあるが、問題を先送りしている状態である。いずれ問題が噴出し、先進国経済が混乱することは避けられないように思われる。  

つまり、現在の先進国の経済成長は、無理に無理を重ねて漸く実現している極めて危ういものなのだ。 これ以上無理を重ねれば、矛盾が拡大し、それが臨界点に達すれば、巨大なカタストロフを招きかねない。 

先進国の持続的成長の前提条件は完全に失われている。
 

金融危機を防げ

それでは現在、蓄積しつつある矛盾は具体的にどのように表面化するのだろうか。

現在の通貨は、金といった現物通貨(hard currency)を除くと、政府がその価値を保証している(fiat money)。 これは金本位性では、金融政策が機動的に行えないといった、欠点があるからだが、その反面、政府が通貨の価値の裏付けを担保する注意を怠れば、問題が生じる。  金融資産に裏付けがないことに皆が気付けば、そこで終わりだ。「王様は裸だ」と皆が気付くようになる前に、政府債務を減らしたり、生活を倹しくすることが、必要だ。矛盾の顕在化は、まず金融危機という形で表面化するだろう。

グリーンスパンが金本位制への回帰について言及したことを重く受け止めるべきだろう。
  

現在、日銀の異次元緩和が続いているが、これも持続可能性に逆行している。今の先進国に必要なのは、財政再建と社会保障の削減といった持続可能性の担保であって、成長を目指しても、矛盾が拡大するだけの状況と言えるだろう。 

豊かな生活を維持したい気持ちは分からないわけではないが、今後、先進国の国民に必要なのは、より倹しく生活することであって、より豊かになることではない。 

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