ユニクロに求められる、グローバル・スタンダードでのコンプライアンス

2013年04月27日 01:33

朝日新聞のインタビュー記事:『「年収100万円も仕方ない」ユニクロ柳井会長に聞く』でファーストリテイリングの柳井正会長が、世界同一賃金の導入について語っています。 

年収100万円という言葉が衝撃を持って受け止められたようですが、私は別のところに衝撃を受けました。 


主なやりとりは:

――「世界同一賃金」を導入する狙いは何ですか。

「社員は、どこの国で働こうが同じ収益を上げていれば同じ賃金でというのが基本的な考え方だ。海外に出店するようになって以来、ずっと考えていた。新興国や途上国にも優秀な社員がいるのに、同じ会社にいても、国が違うから賃金が低いというのは、グローバルに事業を展開しようとする企業ではあり得ない」

――中国などに比べて賃金が高い日本は下方圧力がかかって、逆に低い国は賃金が上がるわけですか

「日本の店長やパートより欧米の店長のほうがよほど高い。日本で賃下げをするのは考えていない。

一方で途上国の賃金をいきなり欧米並みにはできない。それをどう平準化し、実質的に同じにするか、具体的な仕組みを検討している」

――いまの離職率が高いのはどう考えていますか。

「それはグローバル化の問題だ。10年前から社員にもいってきた。将来は、年収1億円か100万円に分かれて、中間層が減っていく。仕事を通じて付加価値がつけられないと、低賃金で働く途上国の人の賃金にフラット化するので、年収100万円のほうになっていくのは仕方がない」

――付加価値をつけられなかった人が退職する、場合によってはうつになったりすると。

「そういうことだと思う。日本人にとっては厳しいかもしれないけれど。でも海外の人は全部、頑張っているわけだ」

というものです。  

年収が低くなるのは仕方ないが

要素価格均等化圧力によって、低スキルの労働者の賃金が、グローバル化により新興国のそれに収斂してゆくのは、仕方ないことであり、これは止めようがないというのはその通りです。 しかし、私が衝撃を受けたのは、

――付加価値をつけられなかった人が退職する、場合によってはうつになったりすると。

「そういうことだと思う。日本人にとっては厳しいかもしれないけれど。でも海外の人は全部、頑張っているわけだ」

のフレーズです。 これは本当にグローバル化の問題なのでしょうか。 確かに、柳井氏の言うように、新興国の人たちは、低賃金でも頑張って働いています。 

しかし、ユニクロの職場環境は、東洋経済の特集「ユニクロ疲弊する職場」で伝えられるような、過剰なノルマを与えられ、1か月240時間以内という労働時間をパソコン上の退勤操作で形式的に守りながら、長時間のサービス残業を行うといった、過重労働をしなくてはいけないもののようです(朝日新聞の記事:「両刃の同一賃金、社員選別 ユニクロ」にも月に300時間を超える勤務をする人物が登場しているので、これは真実でしょう)。 

こういった働き方が、グローバル・スタンダードだとは、私には到底思えませんし、グローバル化とは全く無関係の違法行為ではないかと思います。海外の企業では、ユニクロのように、3年で半数、5年で8割といった高い離職率が一般的だとも思えません。 

柳井氏のグローバル・スタンダードは、自分にとって都合のよいところをつまみ食いしたもののように思えてなりません。

問題の本質はコンプライアンス

ユニクロが、「グローバル・スタンダード」を標榜するのであれば、コンプライアンスに於いても、それを最高水準で満たす必要があるはずです。 

私は、ドイツのボンにあるマックス・プランク研究所の研究員として、90年から91年に1年間、ドイツに滞在したことがあります。その時の経験では、ドイツ人の就業時間の守り方は徹底しています。終業時間になると職員は一斉に帰ってしまいます。仕事の途中でも、本当にパタッと仕事を止めて帰ってしまうのです。 そもそも、店が早く閉まってしまうので、遅くまで残業してしまうと食料品などの買い物が出来ないのです。この辺の時間の守り方は、とにかく、しっかりしていて、土曜日は午後早くにガソリンスタンドやレストランを除き全ての店が閉まってしまい、日曜日は、開いている店はガソリンスタンドやレストランを除きありません。バスも日曜日は全く走っていませんでした。最近は、長期滞在したことはありませんが、出張の際の印象では、こうした習慣は、基本的に変わっていないように思います。  

このような国民性ですから、ドイツ人の店員が、東洋経済の特集「ユニクロ疲弊する職場」に書かれているような、過重なノルマをこなすために、サービス残業を恒常的に行うことは、あり得ないということは、自信を持って断言できます。 

ドイツのようにコンプライアンスが徹底した国では、社会通念として、こうした不当労働はあってはならないものだからです。 日本のように、コンプライアンスにグレーゾーンが広い国は、ヨーロッパでは珍しいのではないかと思います。 

日本人は、総じて真面目であり、個人の権利といったものより、組織の論理を優先する性質が顕著なように思いますが、こういった考え方は、欧米では通用しません。

日本の店長やパートより欧米の店長のほうがよほど高い。  

と柳井氏が述べているのは、欧米の店舗では、現地の時給が日本より高いというよりも、サービス残業が欧米の店舗では、できないからではないかと思いたくなります。 

1年と少し前に台湾で、「ユニクロに罰金、違法な長時間労働で」というニュースがありましたが、グローバル企業としては、これはあってはならないことでしょう。 

ファーストリテイリングが、真のグローバル企業になるためには、グローバル・スタンダードで就労条件のコンプライアンスを満たす必要があるでしょう。 
 
参考文献
 

労働力ダンピングは社会を豊かにするのか?

ユニクロの高い離職率が意味
するもの

ユニクロ、「世界同一賃金」導入の衝撃!

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