アベノミクスを経済だけで論じるな!

田村 耕太郎

アメリカの新聞社はテレビ局のようになっている。NYタイムズやウォールストリートジャーナルのオンラインサイトではテレビ局顔負けの動画見える。日本では東京都知事のイスラム国家に対する発言が問題になっているようだが、しょせんオリンピック誘致がどうしたという平和な話である。


アメリカで話題になっているイスラム国家絡みの話は”シリア”である。シリアに対してアメリカが介入すべきかどうか?もちろん、現実的に考えれば、ただでさえ戦争が嫌いなオバマ大統領なので今の段階でのシリア介入はあり得ない。しかし、話はそう簡単ではないようだ。その理由は以下のようなもの

・時間がたてば介入はより難しくなる
・放置すればイスラエル等、中東の同盟国に難民が流れ込み中東が不安定化する
・シリアの裏側にいるイランは米国と米国の同盟国にとってより厳しい状況を作るべくシリア支援する

最新のニュースによると爆弾テロを逃れたアサド大統領率いる政府軍はロシア製の地対空ミサイルを入手したという。今後時間がたてば、どんどん新しい装備を購入していく予定だという。ロシアにとってシリアは重要な機動拠点であり、いくらオバマがプーチンにプレッシャーをかけようが、白々しくあらゆる形で武器が流れていく可能性がある。米国内の早期介入論者は、「シリア政府軍の装備が改善されるほどアメリカ軍の被害者は増える見込みで、時がたつほど介入のコストは大きくなる。だから早くすべき」と主張する。

かといって、反政府軍に武器を供与し、政府軍を間接的に倒そうとするのも簡単ではない。アメリカはアフガンや南米でこの手の謀略を繰り返し、何度も返り血を浴びてきた。反政府軍が勝てばシリアが元のさやにおさまるということでもない。

もともと分裂国家だったものを冷血なアサド氏が恐怖で国家としてまとめてきただけだ。今の状態ではいずれにせよ、シリアは元の状態には戻ることは難しいだろう。

このようなケースに米国が介入するだろうか?そもそもアメリカにそのような余裕が政治的にも財政的にも今あるだろうか?オバマがそのような決断ができるだろうか?

いずれにせよ、この話は我が国に関係ない話ではない。アメリカが中東情勢で忙しくなることは、北朝鮮、中国と日本にとって安全保障上の懸念がある東アジア情勢に変化を与える可能性がある。原発が止まって、化石燃料に頼り、円安になっているエネルギー自給小国日本にとっては中東の不安定化は深刻な問題と言っていいだろう。皮肉な話だが、シリア情勢が、エネルギー価格高騰を通じて、アベノミクスが目指すインフレを引き起こすかもしれない。日本経済を経済政策だけで議論していていいほど、世界は平和ではないのかもしれない

この記事は田村耕太郎のブログからの引用です