イタリア新政権樹立、政治混乱は終わるか

2013年05月01日 07:30

新政権の特徴と課題

2ヶ 月に渡る政治混乱を経て、イタリアにようやく新政権が樹立された。左派民主党のエンリコ・レッタ氏を首班とする、中道左派と右派の大連立政権。退任するモ ンティ首相の中道連合もこれに参加する。議会で左派民主党と右派自由国民両党に匹敵す る勢力を持つ五つ星運動は、予想通り政権には協力せず独自の路線を突き進む、と明言した。


レッタ新政権はいろいろな意味で、イタリアの政治変革の兆しを感じさせる要素に溢れている。それは、

一つ、激しく対立を続けてきた左右の議会最大会派同士が手を結んだこと。
一つ、その流れが87歳という高齢を押して、二期目の大統領選出馬を含む政党間の仲介に奔走した、ナポリターノ大統領の真摯な行為によって作られていったこと。
一つ、エンリコ・レッタ氏がイタリアでは珍しい若手(46歳)の宰相であること。彼は英国のキャメロン首相と同い年である。
一つ、閣僚21人中7人が女性という、イタリア憲政史上最大の女性登用比率を誇る内閣であること。
一つ、これまたイタリア憲政史上初の、黒人閣僚が誕生したこと。
など、などである。

連立新政権は、何よりも先ず、若者の失業者が巷に溢れる異様な経済状況を改善するべく、即座に行動を起こさなければならない。それは取りも直さず、イタリア財政危機からの脱出を目指すということであり、それがEU(欧州連合)全体の債務危機改善に貢献し、ひいては世界経済の安定と発展にもつながる重要な取り組みになる。

そうした即効の実利を目指さなければならない宿命もさることながら、レッタ新政権は押し寄せる社会変革の大波に乗って形成された、必然の出来事であるように僕には感じられる。

新政権の背後にあるもの

社 会変革の大波とは、なによりも先ず「世代交代」である。イタリアにおいては、過去20年近く政界を牛耳ってきた76歳のベルルスコーニ元首相世代が退却し て、レッタ新首相の世代以下の政治家が台頭する兆しがある。それは多くの若者が連帯して、イタリア政界にセンセーションを巻き起こしている、五つ星運動と も水面下で繋がっている。

面 白いことに、大きな若い波動に敏感に反応したのはイタリアの老国父、87歳のナポリターノ大統領である。彼は宰相候補の最右翼と見られていたベルルスコー ニ世代のアマート元首相を退けて、新世代のレッタ氏を首相に指名し組閣を要請した。また以前には、五つ星運動の盟主グリッロ氏を道化師と 呼んだ、ドイツ社会民主党(SPD)のペア・シュタインブリュック氏に腹を立てて、グリッロ氏を尊重するべきだ、と強く抗議したりする気骨も見せている。

変 革のうねりの中で頭角を現したレッタ氏は、欧米先進国の中では比較的遅れているイタリアの女性の社会的地位を、閣僚登用率を一気に高めることで改善しよう としたようにも見える。同時に、これまた欧米先進国中では出遅れている、有色人種の閣僚起用も実現して、人種差別意識が強い部分もあるイ タリア社会に警鐘を鳴らした。

新首相のそうした一連の動きには、前述したように歴史の大きなうねりが作用しているのであり、決して偶然の出来事ではない、と僕は思う。

例えばイタリア国民が熱狂するプロサッカー界では、アフリカ系のマリオ・バロテッリ選手がイタリア代表として活躍して、国民の中にある人種差別意識に揺さぶりをかけている。また3月に行なわれたローマ教皇選出会議・コンクラーベでは、黒人のピーター・タークソン枢機卿が有力な教皇候補と見な されたりもした。

タークソン卿が、カトリック教会の最高位聖職者であるローマ教皇に選出されるなら、それはほとんど「革命」と形容しても過言ではない歴史的な出来事となる筈だった。

黒人教皇の実現は先送りされたが、コンクラーベの変化は、人種差別主義の巣窟と見なされ続けてきた米国に、史上初めて黒人のバラック・オバマ大統領が誕生して、人類の負の歴史の厚い壁に風穴を開けたこととも連動する、巨大な変革のうねりの表出以外の何ものでもない。

新政権の問題点

レッタ内閣にはまた、きな臭ささが目立つ新しさもある。それは、

一つ、昨日まで口汚く罵り合っていた民主党と自由国民党が、「あっさり」と形容しても良い手軽さで歩み寄って大連立を組んだ、その軽さの胡散臭さ。

一つ、エンリコ・レッタ新首相が、ベルルスコーニ元首相の右腕ジャンニ・レッタ氏の甥である事実。これはポジティブな効果を生むとも考えられるが、百選練磨のベルルスコーニ氏が背後にいることを考えれば、何らかの裏取引があったと勘ぐりたくもなる。

一 つ、ベルルコーニ氏にべったりの、自由国民の幹事長アンジェリーノ・アルファーノ氏が、内務大臣兼副首相になったこと。政権与党の幹事長が連立内閣の重要 ポストに就くのは当然かもしれない。が、ベルルスコーニ政権の法務大臣だったアルファーノ氏は、少女買春疑惑を始めとする多くの疑惑で訴 訟まみれになっているボスのベルルスコーニ氏を保護するために、でたらめな法整備をしたという批判がいつもついて回っている。ここもなんだかいかがわしい のである。

そうした不審からごく自然に導き出されて見えてくるのは、連立内閣の危うさである。民主党と自由国民の確執が再燃すればレッタ政権はあっという間に崩壊するだろう。事実、新政権の短命を予想する人々は多い。

そうした負の印象もあるが、しかし幸いにも、新世代のエンリコ・レッタ首相には、若さと清潔感がある。

日本と同様に汚れた老人が多くのさばっているイタリア政界だが、五つ星運動に代表される世代交代を求める社会の大きなうねりを追い風に、レッタ内閣は山積するイタリアの問題を次々に解決して歴史に名を残すかもしれない。ぜひそうなってほしいものである。

仲宗根雅則
テレビ屋
イタリア在住

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