日本の家電の未来を占うシャープ片山会長の進退 --- 岡本 裕明

2013年05月07日 07:00

読売新聞を皮切りに朝日、毎日とシャープ片山会長退任の可能性を示唆する記事が飛び出しました。日経は本稿を書いている時点ではあがってきていませんが。

このニュースの真偽のほどは確認できていませんが、仮に正しいとするならば当然の成り行きだったといえましょう。


シャープの一連の動きについてある程度興味を持っていた人ならばシャープの社内と関係者がどれぐらい不安な時を過ごしているか手に取るようにわかっていたと思います。表面的な理由は液晶テレビで競争力を失い、一本足経営がぐらついていることであります。ただ、シャープの問題がここまで広く話題になったのは他でもないその再建プランが遅々として進まないことであります。その結果、2013年3月期の決算は営業利益はかろうじて確保したようですが、最終損益は見込みを更に下回るという結果になりそうです。

今回、ニュースになりつつある片山会長の退任がどんな意味があるか考えてみましょう。

片山会長はシャープ5代目の社長として49歳という若さでトップにつきました。4代目社長で「液晶のシャープ」の名前を欲しいがままにした町田勝彦氏の路線を忠実にたどりました。日経ビジネスによるとシャープの問題点は二代目の佐伯旭氏であり、三代目の辻晴雄氏、四代目の町田氏は佐伯氏の縁戚関係であり、かつ、5代目片山氏は父と佐伯氏の親交という流れだというのです。つまり、2代目から5代目は親戚関係を含めた一種の同族であったわけです。

その片山氏は代表権がないにもかかわらず、出資者探しに奔走します。現社長の奥田隆司社長は社内や金融機関との関係を主にハンドルするという分担化をしていたようですが、片山ー奥田ラインには冷たい空気があったという報道もありました。結局それで困ったのは社内。いったい誰が正しく、誰についていったらよいのか、という求心力が欠如していきました。

町田氏が持ってきたといわれる台湾の鴻海精密工業との出資ディールは堺工場を除き、頓挫。片山氏は手当たり次第、出資してくれる可能性のある企業をノックし、最終的に得られたのはアメリカクアルコム社が技術提携の意図を持って100億円、サムスンがシャープの技術を狙って103億円の出資を決めたことにとどまりました。

しかもサムスンとの提携はアップル社や鴻海のライバルとの話であったわけで専門家からすれば驚愕の判断と映りました。

片山氏の社長就任以来、町田路線を引き継ぎ、液晶を更に筋肉質にする経営方針は氏の社長着任当初から間違っていたことは多くの経営者や専門家が気がついていたはずです。が、そこに更なる投資を進めざるを得なかった片山体制は思うに、退路が絶たれていた中での奮闘だったように思えます。

代表権を返上し、会長職になってからもその奮闘は続くのですが、私のような外部の素人が見ていても明らかに奇妙な行動であり、銀行もよく放置していると思っていました。多分ですが、銀行はタイミングを見ていたはずです。それは今期決算がどんなことになれ、社内の再構築、責任の明白化を考えれば佐伯一族の一掃を図っていていよいよその時期に来たということかと思います。

今の流れからすればシャープは銀行管理の下、再建の手法を含め、一から再検討することになるかもしれません。それは分社化や新たなる資本注入、合併など考えられるあらゆるケースが机上に並ぶはずです。なぜならば会社の看板である液晶と太陽光発電が赤字の元凶であり、これがなければ会社は再建出来るかもしれないとするなれば液晶にこだわる片山氏に席を空けていただくしかないのは自明の理なのです。

私は以前からシャープは応援していました。そして同社がもつユニークな発想と能力は社内全体のベクトルが再び正しい方向に戻るなら極めて高い力を発揮するとみています。私は鴻海とのディールは進めない方がよいと発表した時に意見しました。それを思ったのは経営者としての独特の勘であります。同社を再生させるなら政府系金融機関からの大幅なバックアップ、および、ジャパンディスプレー社との連携が妥当な方向性ではないかと思います。

同社は今後、相当厳しい場面もあるかと思いますが、なくすには惜しい会社です。同社の再建は日本の家電業界が元気を取り戻すかどうかの試金石ともいえるのではないでしょうか?

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年5月6日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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