地球温暖化と水資源危機(カリフォルニアの事例)

2013年06月02日 00:48

地球温暖化について、皆さんはどのように考えているだろうか。多くの人は、まだ身近なこととは考えていないだろう。 温暖化問題は、影響が体感しにくいスローモーションクライシスである上に、正確な予測が難しく、地域により影響の出方が異なることもあって、コンセンサスが得にくいため、現状では、十分な対策が取られているとは言えない。  

しかし、日本だけでなく、世界に目を転じると、気候変動の影響が既に顕在化していると強く疑われる現象が数多く存在し、しかも、それは、既に我々の生活に影響を及ぼしていることが分かる。  

ここでは、そのような現象の一つとして、カリフォルニアの水資源危機について取り上げたい。


カリフォルニアの水資源 Snowpack

私は、カリフォルニアに通算2年間ほど住んだ経験があるが、夏は涼しく、冬は暖かく、年間の気温の変動が小いため、とても住み易い。雨は主に冬から春に掛けて降り、5月から10月の長い期間は、ほとんど雨は降らない。従って、夏季は乾燥するため、春は青々としていた草原も、夏は枯れてしまい、草原は一面、枯れ野原になる。

こうした5月か10月の乾季の間、カリフォルニアではどのようにして、水を確保しているのだろうか。 

この時期の水を供給しているのは、シェラネバダ山脈の残雪(snowpack)である。サンフランシスコから東に車を走らせると、巨大な山々のあるヨセミテ国立公園があるが、カリフォルニアは、平地の背後にシェラネバダ山脈が走っており、ここに冬季に降る雪が、夏季の主な水源となっている。凡そ、カリフォルニアの水資源の3分の1が、この残雪によって賄われている。

カリフォルニアは、セントラルバレーに西部では最大の農業地帯がある。セントラルバレーの年間降水量は約500ミリであり、このままでは農業には適さない土地であるが、シェラネバダの雪解け水や、コロラド川からの取水を水源として灌漑がされており夏季の豊富な日照時間を利用して、様々な農作物が作られている。カリフォルニア米として有名な、国豊ローズや錦も、ここで作られる。米1トンを生産するのに、3000トン以上の水が必要、小麦1トンを生産するのに2000トン以上の水が必要であることを見れば、カリフォルニアの農業にとって、シェラネバダの残雪がいかに重要な生命線であるか、理解されるだろう。 カリフォルニアの場合、水資源の大半は、農業に使われている。    

降雪量の減少

しかし、昨年のシェラネバダの残雪は、降雪量が減少したために、5月初めの時点で平年の17%しか残っておらず夏の水不足は非常に深刻になっている。平年の35%しか水を使用できないというのだから深刻である。 このような場合、農家は作付面積を減少させる以外に対応する方法はない。

実は、こういった水不足は今年だけのことではなく、最近、ひどくなっている。2009年には3年連続の水不足が起き、デモが行われ、非常事態宣言が出された。 このことと温暖化による気候変動の関係は、強く疑われており、気候変動が残雪量を劇的に減少させカリフォルニアの水資源の枯渇を招くことが、懸念されているのである。

降雪量の減少は、単に水不足だけでなく、毎年のように報じられる大規模な山火事の原因の一つになっている(California Kindling: A Dry Winter and Reduced Snowpack Means Wildfires for the Golden State)。

また最近の研究では気候変動によりシェラネバダの融雪がかなり早まると考えられている。 融雪が早まれば、春先に洪水が起きる一方、夏季の水不足が一層深刻になる可能性がある。
snow-future-changes

(上記記事から転載)

前記事;「アメリカ西部の水資源危機」でアメリカ西部の水資源が危機に瀕していることを書いたが、よく知られているオガララ帯水層の地下水位の急激な減少や、コロラド川の流量の減少などだけでなく、降雪量の減少や融雪の早期化も、水資源の減少に拍車を掛けていることが分かる。

このままでは、Global Warming and California’s Water Supplyに報告されているように、地球温暖化と共に、カリフォルニア州の水資源は減少する一方、温暖化により、水需要の増加が見込まれ、その対策に巨額の費用が必要となると考えられる。

「シリアの内戦が示唆する世界経済の成長の限界」に書いたように、世界の乾燥地では、気候変動が食糧危機に直結し、政変さえ引き起こす。昨年、アメリカは史上最大規模の干ばつに見舞われたが、これも地球温暖化とは無縁ではないだろうし、最近大きなニュースになったアメリカの竜巻被害も温暖化と無関係ではないだろう。

地球温暖化による気候変動は、乾燥地を灌漑により農地にしたカリフォルニアのような乾燥地に甚大な影響を与えることが懸念される。 グレートプレーン、インドのパンジャブ地方、華北平原などの地下水位の低下は深刻だ。地下水は、石油や石炭と同様、化石資源と考えるべきだろう。 食糧自給率が低い日本が、将来、恐らく確実な世界の食糧の減産に対して、どのように対応すべきか、今から考えるべきだろう。 このままでは、世界全体で大量の餓死者が出る可能性があり、我が国も例外ではない可能性もあろう。 

あとがき

アゴラでは石井孝明氏が、「気温が歴史を動かした–過去の適応策から温暖化対策を学ぶ」「温暖化対策、「地球を守れ」と感情先行は無意味 ? 書評ロンボルグ」といった温暖化は防げないので、それに適応すべき、といった意見を述べているが、こうした意見は、思慮が浅い意見のように思われる。

なぜなら適応出来ない場合のリスクが非常に大きい上に、適応には巨額の費用が必要だからだ。 少なくとも環境ジャーナリストを名乗るのであれば、適応が可能なのか、あるいは適応する場合にはどの程度のコストが必要なのかについて、不完全なものとはいえ現時点で予測される気候変動予測を元に、きちんとした考察を行うべきだろう。 

温暖化防止のために二酸化炭素排出を抑制することは、経済にダメージを与えるとの意見もあるだろうが、温暖化を放置する場合、温暖化に適応するためにも巨額の費用が必要だ、という認識を持つことが、大事なように思われる。

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