「仮面」を脱がない社長に情報発信力はない --- 岡本 裕明

2013年06月04日 12:24

日経ビジネスの恒例の特集、「社長発信力ランキング2013」の発信上位者はいつもと変わらぬ顔ぶれで特に孫正義氏は不動の地位を確立しつつあります。上位企業はほとんどをB to Cが圧倒しており、消費者向けビジネスにおいてトップの作り出す企業イメージがいかに重要かということを物語るものであります。

一方、一年間発信ゼロだった企業の主体はB to Bが多く、「うちの会社は顧客の会社様としっかり仕事をしていますし、IRはネットを通じて見られるのですからそれ以上何を聞きたいのですか」という声が聞こえてきそうな気がします。


私も株主である某一部上場の機器メーカーさんは過去20年以上ほぼ間違いのない利益を安定的に計上し、配当のブレもほとんどないのですが、不思議とこの会社にはほとんど成長というものがありません。事実、この会社の新聞記事を見たこともないし、社長が誰かということも記憶にありません。あまりにも地味すぎるこの会社は「発信ゼロ」ランキングにも表れないほど目立たないということでしょうか?

考えてみればインターネットが出来る以前、アメリカでは手紙の下にCcという形で多数の関係者の名前が連なっていました。この手紙はあて先の人のみならず、これらの人々にコピーが回覧されています、という意味でした。私が80年代にアメリカ企業のエグゼクティブオフィスで見たこれらの配信方法は衝撃的でした。なぜなら、手紙をカーボンコピーで多くの人に回すという発想は日本の稟議制度と似ているようで明白に違っていました。

その後、インターネットというツールが出来てCcはEメールにおいて欠かせないものとなりましたが、もとをただせばアメリカに根付いた文化が電子化されたものでありました。これは画期的な変化であり、社長が社員全員にメールを送信するという形で社長のメッセージが瞬く間に伝わることを可能にしました。

そして次に表れたのがメルマガ、ブログ、ツィッター、SNSといった特定多数、不特定多数向けのさまざまな情報発信ツールが生まれたことでしょう。いまや、世界中で多くの人がそのツールに接点を持っています。

社長の発信力は時代の変化の中でその流れに乗りながら先手を打つ、という意味で欠かせない能力であると考えています。いつも取り巻きを通じて指示だけして自分は社長室にこもりっきり、というスタイルは流行らないというより社長失格なのです。社長とは社員のみならず、顧客やパブリックに対して直接的に企業の社会的責任(CSR)を開示し、やり取りすることが求められています。いまや、情報は即時開示が原則であり、結果として場合によってはそれをわずか数時間の開示遅れでも社会的弾圧を受ける時代になっているのです。

日本では一昔前、「仕事は5時から」と言われました。これは酒を酌み交わしながら「本音トーク」をするということですが、結果として会社にいる時の顔は仮面をかぶっており、本当のことはお仲間内としか話さないという隠蔽体質であるとも言えたのです。もはやそんな時代は終わったわけですから社長でなくても役員でも部長でも課長でも特定多数の人には少なくとも発信する癖をつけてもらいたいのです。そして発信内容によっては「炎上」するということも経験しながら言葉のもつ怖さも学んでいかねばなりません。

私もこのブログを通じて時々炎上させてしまっています。その際、反省をしながら、読み手の立場を理解しようと努力してきています。結果として最近は皆さんから頂戴するコメントもまじめな議論という形になりつつあると思っています。勿論、炎上を恐れて発信内容が不明瞭になることは避けねばなりません。ですからトピック次第では物議をかもし出すこともあるでしょう。しかし、それが本音であれば恐れてはいけないのだろうとも思います。

社長の発信力は日本人がもっとも不得手とするところではないかと思います。それ故に日経ビジネスの特集で不名誉な形で名前が載らないよう社長は切磋琢磨しなくてはいけない時代になったということでしょうか?

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年6月3日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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