気候変動と食糧危機

2013年06月05日 11:30

昨年、アメリカは大干ばつに見舞われ、史上最大の自然災害と言われた。ところが、この干ばつは今も続いており、昨年よりひどい状態が続いている。 
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(2012 5.29)

上の図が、今年5月28日の時点での干ばつの概況、下の図は、昨年5月29日時点での干ばつの概況である。これら2つの図を比較すると、今年はアメリカ西半分に干ばつが限定されている一方、干ばつの程度がひどいことを示す色の濃い部分が多く、干ばつは一層深刻になっており、昨年の干ばつを上回る深刻なものという見方も出ている。 

食糧危機に備えよ

昨年、今年の干ばつの被害地域は、アメリカの小麦、トウモロコシの主要生産地帯に掛かっているだけに、このような事態が生じると、食糧の確保が心配になるが、昨年のアメリカの干ばつを受けて、現在、世界の穀物備蓄は世界消費の約2か月分しかない。現在の状態は、食糧危機に突入しているといってよい。 

こういった大規模な干ばつは、2012年オーストラリアの大規模干ばつで小麦輸出が過去6年で最大の落ち込みブラジル北東部で過去最大規模の干ばつ(2012-13)旧ソ連の大干ばつ(2010)東アフリカで過去60年で最大の干ばつ(2011)と頻発しており、最近の頻度は異常である。 地球規模の気象異変が起きていると言ってよい。 

先ごろ日本で開かれた第5回アフリカ開発会議でアフリカ気候変動適応支援プログラム(AAP)が取り上げられたように、気候変動が起きていることは、世界共通の認識であるといってよい。

今後の見通し

こういった干ばつの頻発が一時的なものか、長期的に続くものなのかは、不明である。しかし、実際に温暖化が進んでいる状況であることは間違いなく、気候変動が温帯域の干ばつを頻発させるというNASAの研究結果など、温暖化と干ばつの関係を指摘する研究は多数存在する。

また、温暖化により、一般的には、乾燥した地域は、より乾燥し、降水量の多い地域は、降水量がより多くなる傾向にあるという気候モデルのシミュレーションを信じれば、乾燥した地域での農業は難しくなる傾向にあると言ってよいだろう。

実際、アメリカ西部の主要な水源であるコロラド川の渇水の解消はロッキーの雪解け水を使っても不可能という研究結果コロラド川の20%は2050年までに渇水により消滅する可能性があるといった研究結果も出ている。実際に、コロラド川をフーバーダムで堰き止めたミード湖の水位は低下し続けている。

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世界のパンかごである、アメリカの穀倉地帯での農業は一層の困難に直面することになるだろう。

その一方で、世界の食糧生産はカロリーベースで、2050年には2006年の60%増しにする必要があるが、一般的に食糧生産の増加に比例して、水資源の使用も増やす必要があり、これは、遺伝子組み換えといった技術では克服できないし、如何に科学が進歩しても、降雨をコントロールすることは、不可能であり、水は非常に重いため、運搬は困難である。 地下水位が下がり始めれば、やがては枯渇することは避けられず、それが降雨により自然に補充されるには、千年単位の時間が必要である。

しかも、地下水を汲み上げるのには、莫大なエネルギーが必要であり、地下水位が下がれば必要なエネルギーは、それに比例して増加する。中国の地下水汲み上げだけで、ニュージーランド一国分の二酸化炭素(年間3000万トン)を排出しているという

海水の淡水化にも原理的に莫大なエネルギーが必要であり、農業用水を賄うのは不可能だ。実際、地下水資源の枯渇に瀕したサウジアラビアは、飲用水を海水の淡水化で作る一方、農業を事実上放棄し、食糧の殆どを輸入している。

水資源の問題だけでなく、土壌の劣化の問題も深刻である

このように考えると、水資源の問題には、科学技術の進歩は、ほとんど役に立たない。食糧生産は、気候変動、地下水資源の枯渇、エネルギーの枯渇という3つの障害に直面しており、食糧の大幅な増産は、極めて困難だと考えられる。

求められる対策

このように、食糧生産の問題は、科学技術では解決できない。

従って、我々に残された解決方法は、少ない食糧で満足する以外に存在しない。 具体的には、肉食を減らすことや、人口を抑制する運動を展開し、徹底的な世界人口の管理を行うべきだろう。 現在の世界人口は、持続可能な規模の10倍以上と思われる。

それと同時に、気候変動を最小限に抑えるために、エネルギー使用の抑制、二酸化炭素排出の抑制が何より求められる。 

生活水準を下げても、破滅的な未来を回避する勇気が、今こそ必要だ。  

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