景気回復しても雇用は増えないその理由 --- 岡本 裕明

2013年06月13日 18:23

国際労働機関(ILO)が発表した世界の働く意欲を失った者は2700万人にのぼるそうで、今後も失業率は高止まりすると予想されています。労働意欲喪失の理由が失業期間が長く、就職を断念した人が増えているとあります。その根本理由についてILOでは長引く不況と金融危機の記憶が企業に積極的な雇用増に拍車をかけない、とあります。

果たして本当にそうなのでしょうか?


私は景気がよくなっても雇用は増えないと思っています。

今から18年ほど前にバンクーバーである講演会があり、私はその壇上におりました。テーマは不動産だったのですが、その際、この街でオフィスビルの需要は今後増えないと述べたところ、商業不動産関係の方から反発がありました。私がなぜ、増えないといったかといえば、バンクーバーはもともとビジネスの街ではなく、成長限界がある中で事務所内での電子化や効率化、更には在宅勤務などが増えることでオフィスの需要を創出しないというのが理由でした。

結論的にはその後、15年程度で高層集合住宅は200本以上できたのにオフィスビルは2、3棟しか増えず、バンクーバーでは皆、いったいどこで働いているのだろう、という奇妙な疑問すらあがる状態になったのです。

北米主導の効率化への追及は世界に瞬く間に波及し、製造業の機械化、コンピューター導入で無人化が進んだ工場も増えました。事務所でもパソコンが一人ひとりに与えられることで作業効率は飛躍的に伸びた上に便利なソフトウェアが仕事までしてくれるようになったのです。結果として私の事務所などは昔は経理に二人雇っていたのですが、今は私がほとんど主導で出来るようになったのです。「忙しい人なのに」といわれるのですが、経理ソフトを使うので経理がわからない未経験のアシスタントでも簡単な作業は問題なくこなせるようになったのです。

製造業の企業は賃金の安い国々にその工場をシフトし続けるでしょう。またボーダーレスの国際分業と経済提携などで無税で物流が出来ることはインフレにも強くなり、コストは下がり続けるスパイラルにあると考えてもよいかと思います。結果としてたとえば中国における外資製造業の国内雇用は増えにくくなるでしょうし、東南アジアではあと10年もしないうちにタイがその仲間に入る可能性が高いと思います。

今後はインドやインドネシアといった人口の多い国が製造業を引っ張り、更にアフリカがそのあとに待ち構えるという構図かと思います。そこに見えるのはアメリカや日本など先進国は既にすごろくゲームでいったんゴールしていますから次元を変えた対応が可能ですが、新興国で労賃上昇から「はしごをはずされた国」は失業率で苦しむ可能性があると思います。

南欧は本来であれば域内自由化で雇用が増大すると想定したものが中国を含む世界各地の「域外」との価格競争に負けたともいえます。つまり、雇用は新しい産業が生み出されない限り、成長するのが難しくなっているともいえるでしょう。

たとえばアメリカで失業率が現状の7.5%からFRBが求める6.5%に下がるかといえば単純には不可能であります。しかし、シェールガス関連産業の勃興、製造業の国内回帰、更にはセミリタイア層の増加による労働参加率の低下で失業率改善の可能性は大いにあるのです。

そういえば私がホテルとの仕事をしていて思ったことはホテルで働く従業員が減ったということでしょうか? ベルもコンシェルジュ、更にはフロントの人数も減りました。北米では荷物は自分で持ち、レストランはパソコンで調べ、チェックアウトはルームカードを箱に入れるのです。これは雇用減の具体的例なのですが、街中にはこういう光景がいたるところにあり、我々先進国に住む人間はそれに気がついていない、ということなのかもしれません。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年6月11日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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