復興庁幹部暴言騒動・役人「叩き」ではなく仕事を「減らす」で福島を救え

2013年06月14日 06:30

復興庁幹部の愚かな発言

320px-Kasumigaseki_1_and_2_chome,_Chiyoda復興庁の幹部で、復興や「子ども・被災者生活支援法」などを担当する幹部職員のツイッター上の暴言を、毎日新聞(記事)と「自称市民メディア」のOurplanetTV(以下アワプラ)(記事)がネットで13日に伝えた。同日の衆議院復興特別委員会で根本匠復興担当大臣が、処分を含めた対応をするという発言をして、同幹部は更迭された。(写真は霞ヶ関官庁街、Wikipediaより)

暴言の内容は以下のようなものだ。


支援法関連の諸団体との会合に参加した時にこう述べた。「左翼のクソどもから、ひらすら罵声を浴びせられる集会に出席。不思議と反発は感じない。感じるのは相手の知性に対する哀れみのみ」

前述の支援法をめぐりこう述べた。「今日は懸案が一つ解決。正確に言うと、白黒つけずに曖昧にしておく」

また国会審議の議員の質問のばからしさ、仕事の妨害へのいらだちを繰り返し述べていた。

仕事の無意味さに同情を感じる

私は原発、復興問題で「冷静に」と呼びかける記事を大量に書いたためか、ツイッターで、この人にフォローされ、また国家公務員と書いていたためこの人をフォローしていた。つぶやきの一部しか覚えていないが、真面目さの示された発言が多かったと思う。私の見たときは匿名だったが、船橋市出向中に一時実名を出していたようで、それで現職をたどられたようだ。

一連の発言は「レッテルはり」という点で幼稚だ。しかし同情すべき点もある。

原発をめぐる「市民」集会は異様なものが多い。「意識の高い人々」が、推進派とレッテルを張った人に罵倒を浴びせることが繰り返される。(反原発集会をのぞいた私の記事「「マッカーサーの子供たち」が動かす日本の行く末」)ある問題を勉強して関連する国会審議を聞くと、発言の2割ほどはまともだが8割は新聞記事や行政公開資料に答えが出ている無意味なものだ。こんなものに拘束されたり、罵倒されたりする官僚はとても気の毒だ。

そして「子ども・被災者生活支援法」は後述するように、非常にばかばかしい法律だ。こんなものにかかわることも官僚としてかわいそうと思う。

私はひねくれものであり、記者経験からメディア記者と組織の行動の特性は分かるので、この裏の小細工も見えてしまう。官僚叩きの裏に、トンデモ法を支援しようとする政治意志が垣間見えるのだ。以下は推測だがあながち外れていないだろう。

中立性の疑われる毎日新聞記者

この記事は毎日新聞が13日の朝刊の1面で伝えた。私の見たのは東京13版(区部の最終版と思う)だ。新聞締め切りは原則同日午前1時30分ごろだ。私の関わった6年前まではそうだった。同時に13日午前3時30分に「市民メディア」を自称するアワプラに記事が出た。

推定だが、この時間を見れば、毎日新聞記者とアワプラが、おそらく示し合わせて記事を出したのだろう。この市民メディアは上記の法をめぐる国・復興庁の対応を批判していたので、ここからのタレコミの可能性がある。毎日新聞記事の執筆者である日野行介記者は、放射能の危険を強調する偏向した記事をいくつか書き、私の記憶に残っていた。(福島在住の方のブログ「福島 信夫山ネコの憂うつ」「ついに福島県立医大が毎日新聞(日野行介記者)に抗議!」など)

日野記者は、続報で報道日の13日中に「左翼」批判をされた集会を主催したFOEジャパンという団体や、この法案にかかわる川田龍平参議院議員のコメントを取り記事化している。(「復興相が謝罪 国の姿勢疑う声も」)また同日に国会議員が根本復興相に質問している。一連の動きはとても手回しがよく、日野記者は各政治団体と「つるんでいる」としか思えない。FOEジャパンという団体は、福島で危険を強調して、大変評判の悪い外国団体だ。(私の記事「オペレーションコドモタチを脅迫被害者が刑事告発へ」)

左派系市民団体は、大局観はずれているのに、メディア工作などの小細工には長じることが多い。6月は政策ニュースが一服するときで、小さなネタでも大きく扱われやすい。そして官庁はテレビよりも新聞を気にする。そして印象だが、原発に反対する新聞の中で、毎日新聞が一番「工作」を仕掛けやすいように思える。

毎日新聞は自由と言えば聞こえはいいが、会社の統制が記者に甘い点がある。朝日新聞は原発に批判的だが、デスク、校閲、整理部チェックが厳しく、官僚的で、自社を外部の政治団体が利用することを嫌う。共同通信は原発批判を論説で繰り返すが、通信社であるためストレートニュースでは主張を消す。この場合は記者が政治団体に共感を寄せているのか、または政治団体が記者を利用しているのか分からないが、偏向した考えを持つ毎日記者が危うい情報に食いつく確率は高そうだ。

毎日新聞の社員は、自社の新聞に誇りがあるだろう。ならば特定政治団体に紙面が利用されている、もしくは記者が団体シンパであるという状況を許す人は少ないはずだ。

状況証拠がここまで揃っている以上、日野記者に事情を聞くべきだ。毎日新聞は、質の高いエネルギー、原発報道を重ねて来た。そして伝統もある。それが穢される可能性がある。

今回の報道は事実に基づくもの「らしい」し、復興庁幹部の行動にも問題がある。しかし、このような報道が続けば、報道の客観性が疑われる。特定団体に肩入れ、もしくは報道が偏向する記者がいるとすれば、その人を取材現場から引き離したほうがいい。

「正義」を語れる「正義の味方」か

騒動の情報源と思われるアワプラという団体は、大変なスキャンダルを起こしている。放射能をめぐるデマ拡散で問題となったクリス・バズビーという自称科学者を日本で引き回していたのだ。(大量の映像のうちの一つ

自称放射線の専門家という英国人のバズビーは原発事故直後の11年夏に来日して、低線量被ばくの恐怖を強調して講演を繰り返した。日本では震災がれきで被ばくが広がるという意味不明の主張をする人がいて社会を混乱させている。それを初めて騒いだのもバズビーらしい。その講演窓口がこのアワプラであり、今も残る映像情報はこの団体が拡散したものだ。バズビーの話を信じる人はかなりいた。しかし、その内容は間違い、偏向だらけだった。無意味な放射能の恐怖が社会に広がったのだ。だから私はこのそれほど知られていない団体の名前を、批判を込めて覚えていた。

バズビーは社会に害を与える情報を拡散しただけではない。違法行為を行っている。英ガーディアン紙の報道によれば、バズビーは恐怖を煽った後で、放射能に効果があるとして1瓶1000円のサプリを6000円で販売。相場より数倍高い10万円の尿検査、1万円の食品検査を提供している。刑事告発の事例は聞いていないが、これらは日本の薬事法や詐欺罪にひっかかるはずだ。ガーディアンの記事の後、バズビーは失踪している。

アワプラのサイトは、放射能と原発について偏向した情報を大量に流している。また経産省敷地を占拠する反原発の違法テントも支援している。これらは間違った行為だが、政治団体の主張としては社会的にぎりぎりで許容されるかもしれない。しかし犯罪に加担することは、大変な問題だ。団体が有名であれば大スキャンダルになっただろうし、常識があれば関係者は「メディア」などと恥ずかしくて名乗れないはずだ。

原発の是非の主張と今起きている放射能のリスク評価とはまったく別の話である。前者は自由に語ればいい。ところが、人々の不安につけ込んで後者を強調して前者を語る人がいた。これはとても卑劣な行為だ。このアワプラという団体は「市民」の名を語り、さらに放射能の恐怖を拡散し、その背景の下に反原発を語る問題のある行為をしている。

復興庁幹部の暴言も問題だが、その暴言がもたらしたよりもはるかに大きな混乱を社会に広げた団体が、責任を取らずに正義を語り他者を批判する。当然、私は倫理上釈然としない。

おかしな法律を通すための小細工?

この幹部職員が攻撃を受けたのは、前述の「子ども・被災者生活支援法」という法律の担当でありながら、消極的であるためのようだ。

新聞報道などを検索してもらえばわかるが、これはあまり知られていない法律だ。昨年3月に議員立法で成立したもので、内容は子供や避難者に健康診断、移動、移住、教育などの点で余分に補助を出すというもの。ただし法律を運用する政令などの規定はなく、棚上げ状態だ。支援の対象とする地域の放射線量の基準が決まらないためだ。

私は同法を成立時に読んだが、一言でまとめると無駄な法律だ。より広い補償をという善意は理解する。しかし福島支援の政策パッケージはすでに動いている。それなのに、「屋上に屋根を重ねる」ように、福島、そしてそれ以外の土地にも過重な補償を国費で広げようとしている。

あらゆる科学的な検証が、今の福島・東日本の放射線量では健康被害が起こっていないし、これからも起こる可能性は少ないということを示している。それなのに基準を強化するのは、ばかばかしい。社会に負担を増やし、その準備のために、また無駄な金のために、復興が遅れる。そしてその政策効果はほとんどない。「地獄への道は善意の小石が敷き詰められている」という格言を、読みながら思い出してしまった。

私はエネルギー政策を追っているが、同法はたいした意味がないので関心がなかった。ところが少数になった原発反対派の人が今年になって、なぜか注目している。原発事故で健康被害が起こらず、危険を騒ぐことが批判を集めたため、行く場所がなくなって流れてきたのだろう。もはや「お笑い」と言っていい福島みずほ社民党党首がこの法律をめぐって騒いでいる。この情報を知れば、良識ある人は苦笑と共に、この法律の無意味さが分かるかもしれない。

今必要なのは、どこを補償し、どこを取りやめるかの線引きの問題だ。(私の主張「福島の除染「1ミリシーベルト目標」の見直しを」()())国の関与を限定し、官僚の仕事を減らせば、復興は必ず早まる。ましてや官僚をたたき、国に無駄な労力を増やすべきではない。

この復興庁幹部がどのような態度で、この問題に向き合ったか詳細は知らない。しかし「曖昧な先送り」はこの法律に官僚として向き合う時に適切な対応だ。もしその対応をしていたなら、批判されることを気の毒に思う。

この法案について変な思い入れを持つ人がいろいろと小細工をしている。しかしそれはテレビドラマ「トリック」の決めぜりふを借りれば「おまえらのたくらみは、まるっとお見通しだ」。逆にこのおかしな法律が世に多少知れた。これをきっかけに、私はこの法律を潰すこと、もしくは形骸化をすることを訴えたい。

私はジャーナリストとして品位を保つように努力をしているが、この官僚と同じ表現で、自分が好き勝手なことを言える自由を噛み締めるための発言を最後にさせていただく。書いて思ったのだが、そんなひどい発言だろうか。

不思議と反発は感じない。感じるのは、ばかばかしい法律を賛美する人、何も反論できない役人を糺弾することに血眼になる人、そしてこうした『バカ騒ぎ』が福島と東日本の原発事故からの復興に役立たないことに気づかない人の、知性に対する哀れみのみ

追伸1 15日
この問題団体のアワプラネットテレビなどによると、3月に行われた「左翼のクソどもから、ひらすら罵声を浴びせられる集会」と復興庁幹部が罵った集会は、国会での勉強会で東大大学院教授の島薗進氏、小児科医の山田真氏、前双葉町長の井戸川克隆氏が出席し、問題団体FOEジャパンなどが主催。このアワプラ、そして岩上安身氏のネットテレビが中継した。

私は「クソ」などという下品な言葉は使わない。しかし、このメンバーは放射能、エネルギー問題を追いかけていた私から見ると、とてつもなく偏向しており、放射能リスクに不正確な情報を拡散し続けた人々だ。おそらく、参加者、聴衆から人格を侵害する罵声が大量に浴びせられただろう。こうした「トンデモ」な場で対話をしようとした、この復興庁幹部のまじめさに驚く。普通は逃げ出す。この幹部は愚かな行為をしたが、とても気の毒だ。

追伸2 16日
関連情報だが、毎日新聞日野行介記者と、アワプラネットテレビの白石草氏という代表者は2011年「貧困ジャーナリズム賞」を同時にもらっており、関係は以前からあるようだ。

石井孝明 経済・環境ジャーナリスト
メール ishii.takaaki1@gmail.com
ツイッター @ishiitakaaki 

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