景気回復まであと10年はみておこう

2013年06月17日 08:52

16日のNHKの日曜討論で産業競争力会議議員・慶應義塾大学教授、竹中平蔵、内閣官房参与・静岡県立大学教授、本田悦朗、立命館大学教授、高橋伸彰、第一生命経済研究所 首席エコノミスト、熊野英生ら四氏の所謂アベノミクスに関する討論を拝聴したが、アベノミクスは、解決に10年以上掛かる問題を、1年や2年で解決しようとしているクレージーな政策としか思えなかった。

ここでは、景気回復までに、どのくらいの時間が掛かるのか、考えたい。


日本経済低迷の原因

問題を解決するには、原因を知ることが第一歩である。日本経済が低迷している原因は

(1) 新興国の台頭による国際競争力の低下、
(2) 少子高齢化による国内市場の縮小、生産年齢人口の減少、
(3) 巨額の財政赤字、社会保障費の膨張、
(4) エネルギー資源を始めとする一次産品の高騰

である。日本経済の低迷の原因は、(1),(2),(3)といった日本経済の実力の低下と地球の有限性(4)によるものだ。

これらを解決しない限り、経済成長を加速させることは難しい。現在、かなり円安が進んでいるにも関わらず、輸出数量の増加は、殆ど見られないことから、円安誘導による景気拡大は困難と言ってよいだろう。逆に以前から大きな問題であった(4)は円安で負担が増加しており、実際に食料品やエネルギーコストの増加として表れ始めているし、日本のみならず、世界経済の成長を困難にしているのが、この地球の有限性である。先進国経済全体が現在、苦境にあるのは、地球の有限性によりパイの拡大が望めない中で、新興国のパイ取り分が拡大するために、先進国経済が落ち込む、という極めて鮮明な分かり易い構図であるから、基本的に解決方法は存在しないと考えられる。

従って、残る(1),(2),(3)を解決しなくてはならないが、どれも解決には10年単位の時間が必要な問題である。例えば、移民の受け入れを図って、生産年齢人口の減少を補おうとしても、一朝一夕に問題が解決するわけではない。最近20年間の実質経済成長率は年率0.9%であるから、今後の見通しを考えれば、高橋伸彰教授の言う通り、ゼロ成長を前提に財政再建を行うべきである。 竹中平蔵氏が、小泉内閣時代に2007年にはプリマリーバランス(PB)均衡まで6兆円に迫った、と述べ、経済成長すれば財政赤字問題は解決するかのような話をしていたが、社会保障費の増加で、歳出と歳入の差、所謂ワニの口はどんどん開いており、PB赤字は現在20兆円を大きく超えている。たとえ消費税を10%に上げたとしても、経済成長で財政再建ということは全く考えられない。 現在は先進国は不況に苦しみ、新興国経済も減速するなど、当時と状況は様変わりしており、高い成長は不可能だ。財政再建に必要な消費税は25%でも足りず、恐らく30%を超えるだろう。

政治家が経済の話をする時は、人気取りと割り切った方がよい

このように、一朝一夕には解決しない問題を抱えた日本経済であるが、安倍内閣の布陣を見ると、必ずしも一流の専門家が経済政策についての助言を行っているとは思えない。

例えば、内閣官房参与・静岡県立大学教授という肩書を持つ本田悦朗氏であるが、法学部卒業で、大学院にも行かず、研究論文と呼べるものもない。正直言って経済の専門家とは言えない人物であるが、リフレ政策を唱える安倍内閣のブレーンである。

また、同じく内閣参謀参与、藤井聡、京都大学工学部教授も同じく経済の専門家ではなく、日銀が財政ファイナンスを行い、巨額の公共事業を行って、日本経済を活性化しようという列島強靭化論を唱える人物である。正直、不安を感じざるを得ない。

こういった非専門家に助言を頼むのは、、一流の経済学者に尋ねれば、日本経済の経済成長を大きくする、即効性のある政策は存在しない、という回答しか得られないからだと考えられる。なぜなら日本経済が低迷しているのは、実力の低下と物理的な限界によるものなので、これらを解決するのには10年以上の年月が必要だからだ。

ところが、多くの国民が求めているのは、10年掛けて経済を改善してゆく、といった悠長な政策ではない。1年以内、あるいは少なくとも数年の中に、景気回復を実現してほしいと思っている人が大部分だろう。また、次の選挙までに結果を求められる政治家にとっても任期期間中に結果が出ないような政策を訴えて選挙に臨むことは難しい。

だから、怪しくても即効性のある経済対策を唱える人物が内閣官房参与に抜擢されるのだろう。 もっと言えば、自民党は参議院議員選挙までの株価にしか関心がない。なぜなら実体経済を良くするのは時間が掛かり過ぎるからで、選挙前までに株価を上げて景気が良くなったかのように国民に錯覚させられればそれでよいのだ。あとは野となれ山となれということだろう。

何れにしろ無理なものは無理なので、現在行われている異次元の金融緩和のような政策は成功する確率はゼロとしか言いようがないし、続ければ悲惨な結末を招くだろう。

政治は経済の水準についての約束をするべきではないし、国民もそういう話は人気とりと割り切って聞き流すべきだ。 期待をしても馬鹿を見るだけである。  

財政再建に経済成長を期待するのは誤りだ

経済成長はないよりはあった方がよいが、原油価格が1バレル100ドル近くになっていることからも明らかなように資源の減耗が顕在化している状況では、世界全体の経済成長も今後は縮小してゆくと思われる。

こうした状況で、高齢化が極度に進む日本が経済成長を続けることは、極めて困難であり、経済成長を期待することは、全く理不尽としか言いようがない。 

高橋伸彰氏の言われるように、財政再建は、ゼロ成長を前提に考えるのが、合理的であるし、氏の言われるように、成長率以外の経済指標を導入し、それを政策目標にするのが良いだろう。

景気回復までには10年程度の時間が掛かるとみて間違いないし、景気回復はずっとこないのかもしれない、そういう認識を持つことが、今、国民に必要なことではないだろうか。 経済成長だけが発展ではない。 自分を磨いて充実した生活を送りたい。

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