政党政治の終わりの始まり

大西 宏

東京都議選で自公が圧勝し、また批判票を共産党が吸収、みんなの党がやっと議席を増やした結果となったものの結果を冷静に見れば野党の壊滅です。おそらく株価の暴落とか、国債の暴落でもない限り、参院選も同じような結果になるのでしょう。市場も自公の圧勝を折込んでいたのか、株価に影響もないようです。しかし冷静に見れば、この結果は政党政治の終わりの始まりを象徴する出来事ではないかと感じています。


都議選を待つまでもなく、民主党は政権担当能力で厳しい評価を受け、さらに存在意義そのものすら失っているに等しい状況でした。多くの国民は、政権の不安定に懲りており、また経済の先行きを心配しています。民主党はそれにいずれにも応えることができなかったばかりか、沖縄基地問題で混迷し、菅内閣が国民が関心のある経済で「一に雇用、二に雇用。三に雇用」と叫んで呆れさせ、さらに野田内閣で中国との外交関係に致命的な亀裂を招いたので、もうコリゴリという感じでしょう。与党経験をしてしまったので、それが災いし、鋭く与党批判することもできなくなっています。

また勢いのあった維新の会も石原元都知事や「たちあがれ日本」と合流したことで鮮度もアイデンティティも失い、さらに安倍内閣との対立軸をつくることに失敗したのでこの結果は衆目の予想どおりでした。結果に驚く人は少ないと思います。

議席を伸ばした共産党とみんなの党には悪いのですが、政権担当能力がある野党、投票先として未来を託そうとする野党を都民は見いだせなかったのだと思います。都議選投票率は43.5%と低く、前回の投票率を10.99ポイントも下回り、過去2番目に低かったことがそれを物語っています。東京都議会選は参院選の先行指標です。地方が加わる参院選はさらに自公に有利になってきます。

国民は都議会選と同様に選択肢を失ったまま、参院選を迎えます。政党による選択肢がないということは、政党政治の終わりを意味します。

いやそれでも選挙があるから民主主義は守られているということですが、それも怪しいのです。自民党は選択肢を示しているわけではありません。農業票が多い地域では、TPP反対を訴え、沖縄では米軍基地県外移設を訴えます。

それが自民党の選挙で勝つためのマーケティングです。

各選挙区から選ばれてきた議員が、党内で徹底的に議論しあうのが自民党の良さだということですが、裏返せば、国民の選択ではなく、党内議論で政策が決まることを意味しています。つまり、自民党内で議論しあう人を選ぶ選挙だということです。それもありかもしれませんが、二大政党政治を目指した現行の選挙制度とは矛盾してきます。しかも政党政治ではないのなら、政党助成金は不要なはずです。

それでもアベノミクスに期待し、僅かな希望を見出している有権者の人は自民党に一票を投じるはずです。よほど株価や国債の暴落でも起こらない限り、国民は政権の安定を優先するのではないでしょうか。しかも、都市部に住む若い世代が政治に関心を失って、棄権しても、あるいは別の党に投票しても、都市部では一票に一票の価値はないので、残念ながら大勢に影響はありません。

そんな状況を踏まえて各野党はゼロからの立て直しに取り組むのでしょうか。国民に共感を広げるような政策、日本経済の再生に向けた政策を打ち出せるでしょうか。難しそうです。役者が不在です。そうやって民主主義も後退していきます。

しかし心配することもありません。日本は巨額の財政赤字を抱えているために、日本の経済の再生を行わない限り、財政再建もないので、自民党の最大の敵は「経済の停滞や不況」になってくるからです。

もし民主党や維新の会、みんなの党が、日本と地方を再生するための地方主権推進にでも的を絞って連合し、今以上に国民が分かりやすい議論を引き起こせば、また事情が変わってくるかもしれません。