公会計が生み出す危険なコンクリート構造物の氾濫

2013年06月25日 09:13

危険な国有施設は、経年劣化で天井板が崩落した中央自動車道笹子トンネルだけではない。国有に限らず公有施設も含めて、全ての施設について、建替え等の更新のための財源が全く用意されていないのだから、老朽化で危険なコンクリート構造物と化した施設が放置される可能性は、どこにでもある。


この問題、実は、どうしようもない。施設が必要ならば、そのときの国民の税金による負担で建替えるしかない。必要でない場合は、放置するのも危険だから、民間に売却して、民間の資金力で解体再利用をしていくほかない。恐らくは、施設建設時には、遠い先のことなど全く考慮されていないのだから、施設管理責任者である行政庁も、政治家も、誰も何ともいえないというのが実態ではないのか。

どうしてこのように無計画になってしまうのか。一つの技術的な要因は、公会計の特殊性にあるのだと思われる。簡単にいってしまえば、公会計には、資本性支出の概念がないのだ。施設の建設のための支出も、人件費等と同じように、単年度の予算内で処理されて、それっきりになってしまう。要は、企業会計は、企業の永続性を前提にして無限の将来へ及ぶ時間軸の単年度の輪切りになっているのに対して、公会計は、単年度予算を基礎にした1年限りのものなので、原理的に長期の視点を欠いているのだ。

あからさまにいって、政府としては、予算をとって作ってしまえば、それでお終いということなのだ。まあ、作ることが目的だったのだから、それでよかったのだろう。しかしながら、本当は、個々の施設を作ることが目的なのではなくて、企業会計の視点と同じように、永続性の見地から、国土を整備することが目的だったはずなのだ。

古くは田中角栄首相の時代の日本列島改造、今では安倍首相の国土強靭化などは、確かに長期的な視点での国土整備計画として構想されてはいるのだろうが、実際に個別具体的に予算がついて建設が始まると、建設自体が目的化されてしまって、建設後の施設の維持管理の問題はどこかへいってしまうというのが実態であろう。

そうなってしまうのは、多くの場合、表面的な構想が長期的な国土整備計画であっても、現実的な目的は、短期的な景気対策や選挙対策だ。しかも、悪いことに、公会計の仕組みが単年度という極めて短い時間しか管理できないのだから、会計情報面からの牽制が効きにくいのである。

企業経営においては、企業統治と企業会計は一体である。政治に民間の企業のような統治が働かないのは、公会計が統治の機能を演じないからだ。政治改革の第一歩は、公会計改革である。

森本紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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