リフレ政策のもたらすもの

2013年06月27日 18:08

安倍首相は、今後3年間は基本的にデフレ脱却に集中するそうです。これで日本の直面する、財政再建や社会保障の持続可能性といった大問題が解決するなら大歓迎ですが、果たしてそうでしょうか? ここでは、現在行われているリフレ政策が何をもたらし、その行く末がどうなるのかを考えてみたいと思います。


アメリカの金融緩和で起きたこと

まず、アメリカ量的緩和がどのような影響を与えたのか、検証することで、日本でどのようなことが起きるのか考えてみましょう。

ピュー・リサーチセンターのレポート:An Uneven Recovery, 2009-2011 A Rise in Wealth for the Wealthy; Declines for the Lower 93%によると上位7%の裕福層の純資産は今回の調査期間である2009年から2011年にかけて+28%上昇し、317万ドル(ミーン値)になったのに対し、残りの93%は-4%の13.4万ドルと減少しました。ピュー・リサーチセンターは「裕福層の場合、資産に占める株式などの金融資産の比率が高い。これが資産が増えた理由だ」、としています。

このように、金融緩和は、金融資産を持つものを富ませ、格差を拡大します。その一方、インフレーションにより、大部分の人たちの生活は圧迫されます。 なぜなら大部分の労働者の賃金は、新興国との競争や機械との競争のために、インフレ率ほど上がらないからです。 

実際、現在、アメリカの一握りの資産家を除いては、アメリカ国民の生活はかなり追い詰められています。 Not Prepared: 17 Signs That Most Americans Will Be Wiped Out By The Coming Economic Collapseから抜粋すると、次のようなことが起きています:

#1 76%のアメリカ人は給与をフルに使ってその日暮らしをしている。彼らは現在の仕事がずっと続くという前提で行動しているが、大規模なレイオフが起きるのは日常茶飯事である。

#2 27%のアメリカ人は全く貯蓄を持っていない。

#3 46%のアメリカ人は$800以下の貯金しか持っていない。

#4 賃金は下がり続けるのに生活費は上がり続ける。 下位90%のアメリカ人の年間収入は平均すると$31,244に過ぎない。

#5 スモールビジネスは消滅しつつあり、アメリカの自営業者は労働者の僅か7%に過ぎない。

#6 1989年にはアメリカの世帯収入に対する負債の比率は平均58%だったが、今日では154 %に達している。

以上のようにアメリカでは中流家庭は、ほぼ消滅し極端な貧富の格差が生じていることが良くわかります。 金融緩和はインフレーションを通じて、下位93%の富を収奪する一方、上位7%の富を増大させました。

一方、量的緩和で雇用は改善されたのでしょうか。 下のグラフのように、過去のリセッションに比較して非常に緩慢な改善に留まっていることが分かります。

 jobless
 

金融緩和は、格差を拡大しただけで、雇用改善には殆ど効果がなかったと言ってもよいでしょう。

アベノミクスで何が起きるのか。 

さて、現在進行中のアベノミクス、特に日銀の異次元緩和でどのような影響が将来表れるのでしょうか。

まず、アメリカでは金融資産の多寡が、格差を拡大させましたが、日本人の持つ金融資産はどのようになっているのでしょうか?  

第一生命のレポート;「貯蓄なし」世帯3割の驚愕(2012年2月27日)は次のように始まっています:

金融広報中央委員会が 2011 年 10 月に実施した「家計の金融資産に関する世論調査」では、現在、金融資産を保有していない世帯が、世帯構成員 2 人以上の世帯で、28.6%となっている。この数字は、遡及可能な1963年以来で過去最高である(図表1)。前年2010年の調査が 22.3%だったので、1 年間に+6.3%も無貯蓄世帯の割合が跳ね上がったということになる。3,800サンプルの標準誤差が信頼区間 1.8%程度の変化が有意とみられるので、この変化幅はこの 1 年間に母集団に大きな変化が起こっている可能性が高いということを示すものである。

このように、日本の家計も余裕がなくなっており、貯蓄大国であった過去とは様変わりしています。 

このまま、金融緩和を続けたらどうなるのでしょうか? 
現在、アベノミクスは実体経済に影響を与えていません。かなり円安に振れましたが、実際、輸出数量は伸びるどころか減少しています。

日本経済の体質が変わり、円安によりむしろ、原材料費やエネルギーコストの上昇分の転嫁の出来ない中小企業は苦しくなっているようです。 2年で(消費税増税分を除いて)2%というインフレを起こすことは難しいでしょう。このまま株価が上がっても、もしインフレが起きたとしても、アメリカと同じように格差を拡大するだけでしょう。 私には、インフレを起こすという目標自体が、そもそも誤っているとしか思えません。 

ただ、このまま緩和を続けた場合、何も起きないわけではありません。金融緩和は永遠に続けることはできないからです。何れかの時点で、インフレは起き、日銀は手持ちの国債を大きな損失を出しながら売り、インフレ抑制をしなくてはならなくなります。

そのとき金利が高止まりすれば、日本の財政はアウトですが、それをどうやって防ぐのか、私には全く分かりません。黒田日銀総裁も、出口戦略を考えるのは時期尚早だと公言しています。 撤退を決断すべきではないでしょうか? 

参院選が終わり、少し経つ頃には、おかしなことが起きるはずです。金融緩和という物理的に全く何もしない操作で、景気が良くなることはありません。 政治も、日本経済再生といった下らないキャッチフレーズを掲げることを止め、財政再建と社会保障改革に邁進すべきです。 

我々は、自らの身を自ら守ると共に、政府が景気を良くしてくれると期待することを完全に捨て、自力で自らの未来を拓くようにしたいものです。

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