「50代・男性・正社員」受難の時代 --- 山口 俊一

2013年06月30日 20:29

大手電機メーカーの人員削減が後を絶たない。この1年の主な実施・発表のニュースを拾っても、次のような感じだ。

・ルネサスエレクトロニクス 10,000名
・NEC           2,400名
・シャープ          2,000名
・パナソニック        5,000名
・ソニー           2,000名
・富士通           5,000名
・パイオニア           800名

他の業界でも人員削減は行われているが、電機業界のそれは、企業の顔触れにおいても、削減規模においても群を抜いている。


ただし、アベノミクスの影響か、2001~2002年のIT不況、2009年のリーマン不況の頃に比べ、電機以外の広範囲な業界に広がっていないのが、せめてもの救いといえる。

通常、人員削減は希望退職者の募集というかたちをとる。その際、45歳以上、40歳以上というように年齢条件を設定することが一般的だ。

なぜ年齢条件を設けるかというと、同じ1名であっても、社員の年齢によって人件費削減効果に大きな違いが出るからである。

以下は、厚生労働省が毎年調査・発表している「賃金構造基本統計調査」の平成24年版から算出した、社員数1,000名以上の製造業における男女別・年代別の平均年収(大卒・大学院卒社員)。

年齢層      男性     女性

~24歳     3,364 千円  3,309 千円

25~29歳   4,886 千円  4,384 千円

30~34歳   6,096 千円  5,153 千円

35~39歳   7,221 千円  5,807 千円

40~44歳   8,766 千円  7,256 千円

45~49歳   9,651 千円  7,713 千円

50~54歳   10,621 千円  8,428 千円

55~59歳   10,700 千円  7,429 千円

20代前半の社員に比べ、50代の男性社員の平均年収は3倍に及ぶ。すなわち、50代の男性社員を1名削減すれば、新卒社員3名分に匹敵する人件費が削減できる。すぐに人件費効果を発揮したい企業のメインターゲットは、50代の男性社員ということになる。

「女性の50代だって、そこそこ貰っているじゃないか」と思われるかもしれないが、大手メーカーで、大卒50代社員に占める女性の割合なんて、人数的に10%にも満たない。

希望退職の場合、50歳の社員に支払われる割増退職金は、大手メーカーで平均1,000万円程度と推測される。仮に年収1,000万円とすると、社会保険料や福利厚生費、通常の退職金などを合わせると、年間1,500万円程度の直接的な人件費が発生する。すると、

1,500万円×10年間(60歳まで)=1億5,000万円

この社員が、定年までの10年間で会社にもたらしてくれるであろう付加価値が、これより明らかに少なければ「1,000万円の割増退職金を支払ってでも、この機会に」という理屈だ。

日本の年功型賃金は、「若いうちは会社に奉仕し、中年以降で会社から返してもらう」制度だと言われてきた。もしそうなら、中高年社員にとっては「今頃になって、会社はズルい」という文句も言いたくなるが、会社から見れば給料分働いていない人たちということになる。

これまで企業組織において、非正規社員などに比べ、最も既得権益を享受してきたのは「50代・男性・正社員」であるが、この層が受難の時代を迎えている。高給であるがゆえに、次の転職先が見つかりづらいという問題も抱えている。

「社外に出ても通用する人材に」とは昔からよく言われる言葉だが、いざ社外に出る段階になってからでは遅い。電機業界に限らず、JALや東電の例もある。どれほど安定していると見られる組織に属していようとも、「もし明日、社外に出たら」自分に何ができるか?

定期的に、自分のスキルや実績、人脈について、棚卸してみることをお勧めしたい。

山口 俊一
株式会社新経営サービス
人事戦略研究所 所長
人事コンサルタント 山口俊一の “視点”

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