これで比較と言えるのかいな --- ヨハネス 山城

2013年06月30日 21:34

はじめに断っておくが、今回、ワシ、全く自信がない。もともとのワシの立場は、原発懐疑論(補償までちゃんと考えたら原発は引き合わない)や。原子力なんて所詮は道具なんやから、安全を考えて手当てして十分安いなら、どんどん使ったらええし、だめならやめたらええ。というしらけた立場や。

人類は核を廃絶するべきだとか、国体護持のために核武装の選択肢を維持すべきだとか、の暑苦しいことを言う気は全くない。

今回の福島の甲状腺がんのデータも、いくらなんでも、こんな早期にそんな数値が上がるはずがないやろ、ぐらいに考えておった。甲状腺がんは100万人に1人というデータも、検査機器の精度や、検診の参加率の低さで説明できるやろ、と漠然と考えていた。


前の原稿で、「何で比較調査をせんのやろ」と書いたときも、「きっとそれぐらいあるやろ」と、何となく思っておった。そやから、甲状腺がん高発生率説に反発するなら、ちゃんとしたデータを引用するべきで、「チェルノブイリ原発事故で小児甲状腺がんが多く見つかったのは被曝の4~5年後からで」などと、逆に不安をかきたてるような、妙な反論のしかたを福島県はするな、と書いたつもりや。データがないなら、「ボケてるヒマで、ちゃっちゃと調査をせんかい」とな。

おかげさまで、原稿が掲載されたあとコメントやらブログやらで、環境省が実施した県外での対照調査のデータを教えてもらえた。何はともあれ、教えてくれたひと、この場を借りて感謝させてもらうで。ほんま、ありがとさんです。

こういう調査をちゃんとするんやから、日本の官僚も見くびったもんやない。とも思ったが、ただ、今となっては、「この調査では力不足」という状況にあるように思う。

もともと、今回の6月の騒ぎは「一般に100万人に1人と言われている甲状腺がんが福島第一の周りでは1万人に1人ぐらいの頻度であるように見える」という説からはじまった。これに反論ための調査するなら、最低でも10万例ぐらいほしいところや。

もっとも、数千例の調査でも、「最新の機器を使えば、かなりのがんが見つかります」という結果が出れば、それはそれで重要な反論になる。がんが見つかった人も、調査に参加したおかげで早期発見できたという幸運に恵まれて、とりあえず目出度しということになる。

ところが、環境省の調査は、5000例弱しか集めていない。これでは、仮に福島と同じ頻度で甲状腺がんが発生していたとしても、1例も見つからない可能性がけっこうある。

ただし、このことをもって、環境省の怠慢を指摘するのは筋が違う。なぜならば、この調査は、福島で調査対象の子供の約40%から「小さなのう胞等」が見つかったことが、どの程度異常か検証するために行われたもので、「特に福島は統計上は異常ではない」という明確な結論を示す、しっかりした調査や。

そやけど、このことと1万人に1人ほどの、福島の甲状腺がん(含む疑い例)の話とは、かなり距離があるように思う。だいたい、調査報告書自体「この調査で実施された甲状腺超音波検査は、スクリーニング検査であり、甲状腺がんの診断を目的とした検査ではありません」と言っているのやから、これ以上の詳細な分析は無理や。

もしかすると、今回の調査地(甲府、弘前、長崎)などで、もし何らかの甲状腺の異常を感じた人がいたら、無料の調査に進んで協力する可能性が高いから、ランダムに被験者を選ぶより異常が見つかる率が高くなる可能性かてある。実際、小のう胞等の発見頻度が、どの調査地でも福島より高いのは、この理由で説明できそうにも思う。

また、野生動物の場合、海辺から遠くなればヨウ素が不足しがちで、甲状腺が肥大化することが多くなるということを考えれば、海から遠い甲府、弘前、長崎の順に、小のう胞他が増えるのも、なんとなくわかる気がする。この場合でも、福島の値は、多すぎもせず少なすぎもせず、正常ということになる。

ただ、いずれにせよ、この調査が有効なのは、数10%単位の小のう胞等の話で、甲状腺がんを議論するには、どう考えても例が少なすぎるように思う。福島と同じように、甲府・弘前・長野でも調査結果がBやった子には、念のため二次検査をしてもらったらどうやろか。それでかなり話がはっきりすると思うが。

ただ、これはあくまで、甲状腺医学世界では、いっぱしの素人であるワシの見解やから、他の読み方があるのかも知れへん。別にきちんとした数のそろった対照データがあるのかも知れん。

データが無い限り、「どうもヤバそうや」という漠然とした危機感が解消できん。早く追加調査をするべきやろう。もし既にデータがあるなら、だれぞ、紹介してくれんかのう。

ヨハネス 山城
通りがかりのサイエンティスト

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