未来の働き方を考えよう

2013年07月02日 08:08

未来の働き方を考えよう 人生は二回、生きられる著者は2010年に外資系企業を辞め、いま流行の「ノマド」的な生き方をしているらしい。元マッキンゼーの伊賀泰代氏だともいわれているが、経歴はほぼ一致する。一度、隣合わせに座ったときも、覆面だったがそんな感じだった。

本書のテーマは「人生を2回生きる」ということで、これは私とも共通する。著者は40前後で会社を辞めたらしいが、外資系ではそれほど珍しいことではないだろう。しかし20年前のNHKでは驚天動地の出来事で、部長や人事や組合に呼び出されて大騒ぎだった。そのとき私が思っていたことも、著者とよく似ている。人生80年と考えると、終身雇用のサラリーマン人生の後半には無駄が多すぎるのだ。


特にマスコミでは、40過ぎると現場には出なくなり、各地の放送局や外郭団体の行政職を転々とする。仕事は基本的には番組の品質管理で、調整や会議などの非生産的な仕事ばかりだ。私もデスク業務をやってうんざりしていたので、あと20年以上の人生をデスクワークで過ごすのはとても耐えられないと思った。

ただ40前後で辞めると、リスクは非常に大きい。著者の本業はたぶん独立のコンサルタントだと思うが、世の中のコンサルで食えている人は少ない。再就職も、40を過ぎると大学の教師ぐらいしかない(これも今はほとんどない)。失敗もトラブルも山のように起こる。平穏無事な人生を望む人にはおすすめできない。

しかし今、あのとき辞めないでNHKの局長か何かになっていた生活と、今の生活のどちらを選ぶかと問われると、絶対に前者は選ばない。50過ぎると仕事がなくなって粗大ゴミ扱いだし、地上波テレビという終わった業界ではつぶしもきかないので、65歳を超えると完全無職になる。そこから平均20年も人生があるのだ。

ただし著者が「能力や環境は無関係」というのは間違いである。よほど稀少な能力があり、人脈や環境に恵まれ、やりたいことがはっきりしていないと、ノマドは失敗する。日本の社会がそれに適していないからだ。ネットで情報を発信することは容易だが、それでサラリーマン並みの所得を得ることはきわめてむずかしい。

ただ著者もいうように、今年、大企業に就職した社員が定年まで生き残れる確率は(公務員などを除いて)きわめて低い。人生を2度生きる訓練をしておかないと、40歳ぐらいで会社が消滅したときのリスクは、もっと大きい。著者のようにブログや著書で売れっ子になれる人は100人に1人もいないので、サラリーマン生活の中で専門能力を磨いておくことをおすすめしたい。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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