出口戦略って何?

2013年07月04日 00:08

久しぶりに1ドル=100円を超えました。これはFRBのバーナンキ議長が出口戦略についてふれたためにアメリカの金利が上がってドルが上がった・・・といわれていますが、小学生のみなさんにはむずかしいですね。ここでは「出口」って何のことかだけ説明しましょう。

金融緩和の「出口」とは、要するに今まで中央銀行が買ってきた国債などの資産を売って緩和をやめることです。債券市場では、売りが増えるわけだから、値段が下がって金利が上がります。これも小学生のみなさんにはむずかしいと思うので、解説しましょう。

たとえば日銀が1%の金利で発行された額面100円の10年物国債Aを保有していて、その満期までの残存期間が平均5年だとすると、期待できるリターンは100円×1%×5年=5円の金利と償還価格100円の合計105円です。

ここで金利が上がり、新しく100円で発行される5年債Bの金利が3%になったとすると、3円×5年で金利は15円になります。このときAが市場で売れるためには、残り5年で得られるリターンがBと等しくなければならない。つまり日銀の今もっている国債Aの市場価格を100×Aとすると、

 100+5=(100+15)×A

でないと売れません。この計算は小学生でもできますね。Aは約0.91、つまり91円でないと売れません。金利が3%に上がると、日銀のもっている国債Aの価格は9%も下がってしまうのです。

これは極端な例ですが、日銀は今、130兆円以上の国債をもっているので、ちょっと金利が上がっただけで何兆円も値下がりします。そして日銀が国債を売ると価格が下がり、それによって民間銀行などがさらに国債を売る・・・という悪循環に入るおそれがあるので、出口戦略はむずかしいのです。

バーナンキ議長が出口戦略にちょっとふれただけで世界の金融市場が動きましたが、実は日銀の保有している資産は173兆円、GDP比でみると35%で、FRBの2倍です。だから日銀が出口を出るのは、もっとむずかしいのです。黒田総裁が「そろそろ量的緩和をやめよう」といっただけで、国債が暴落する可能性もあります。

そういうわけで、たぶん日銀にはもう出口はありません。このまま巨額の国債を抱え続けるしかないでしょう。しかしアメリカの金利は急に上がり始め、2.5%ぐらいになってきました。この影響でヨーロッパや新興国でも金利が上がり始めています。

日銀の黒田総裁も「2%のインフレ目標を設定しているのだから長期金利が3%ぐらいになるのは当然だ」と国会で答弁してから、あわてて「金利は抑制する」と訂正しました。でもマーケットが本当にインフレを予想したら、3%ぐらいにはなるでしょう。そうすると、上のような計算で日銀は20兆円近い評価損を抱える可能性があります。日銀の自己資本は5.7兆円しかないので、債務超過(普通の会社だと倒産)になります。

もちろん日銀は普通の銀行と違うので、債務超過になっても政府に穴埋めしてもらえますが、その財源は税金です。つまり黒田さんは国民の税金で270兆円のギャンブルをやっているのです。ギャンブルなんだから、出口なんて考えない。勝つまでやるのでしょう。かつての日本の戦争のように。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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