エジプトの政変にみる経済政策の限界

2013年07月04日 13:31

エジプトで軍事クーデターが勃発し、緊張が高まってる。 ここではエジプトの政変の原因と、それが示唆する経済政策の限界について考えたい。


エジプトの政変の原因

軍事クーデターが起こったエジプトであるが、今までのところ、その背景については詳しく報道されていない。 

その原因については、エジプト在住の方のブログ:どこまでもエジプト「エジプトの経済危機」を見ると良く分かる。 

エジプトは、国民の生活必需品である小麦やガソリンなどを輸入に頼っており、それらを購入できるだけの外貨(一か月50億ドル程度)を持っていないと、国民生活が成り立たない。 エジプトは世界最大の小麦輸入国であり、毎年800万トンの小麦を輸入している。 一方、食糧、エネルギー価格は高騰している。 食糧価格の高騰がムバラク政権を倒したアラブの春の主要な原因の一つであることは間違いない。

エジプト中央銀行は11月末にエジプトの外貨準備高が危機的水準にまで低下していると(11月末時点での外貨準備高は150億ドル)と発表していたが、ついに今年の3月支払いに行き詰まった。 

エジプトが外貨を調達する手段は、スエズ運河通行料金や出稼ぎ労働者の仕送り、外国からの投資、観光業などだが、革命後、後二者がふるわず外貨準備高の低下は危機的な状況だった。

国民の30%が貧困ライン以下の生活、つまり1日1.25ドル以下の生活を送っているエジプトでは、政府は大量の補助金を投入して、国民の生活必需品の値段を安く押さえるという補助金政策をとっているが、増税もままならず、政府も金がなく行き詰まっている。

革命でムバラク政権を打倒したエジプトだが、エネルギー、食糧価格の高騰、観光、綿花栽培などの国内産業の不振の前に、なすすべがない状態である。ムバラク政権は確かに腐敗していたのだろうが、彼らが掠め取っていた富の総量は、国民全体で分けると微々たるものだったのだ。

世界的なエネルギー、食糧価格の高騰の前には、政治体制を刷新しても何の効果もないのである。 これは石油資源の減耗と食糧生産の低下で起きたシリアの内戦の場合と同じ構図である。 

このように経済の問題を政治で解決することには限界がある。

経済政策の限界

エジプトの例を見れば分かるように、エネルギー、食糧の産出という、世界全体の物理的な豊かさに限界が生じ、これが世界経済の成長の見えない天井になっている。

日本では異次元の金融緩和が行われているが、経済政策には限界がある。 経済政策が出来ることは、経済資源の配分を変えることだけで、物理的な問題は解決しない。

食糧価格の高騰やエネルギー価格の高騰は円安に振れているため、その影響は増幅されている。 食料品の値上げが進んでいるが、電気料金の値上げなどのエネルギーコストの上昇、原材料費の上昇により、コスト上昇分を簡単に転嫁できない中小企業の経営は圧迫されている。

コスト増に悩むこうした中小企業は、とても給料を上げるどころではないだろう。輸入価格の高騰により、デフレ脱却が達成されたとしても、給与が上がる見込みは、ほとんどないように思われる。日本企業の体質は変わっており、円安にすれば経済成長が加速するという構造になっていないのである。

恐らく、円安がこのまま継続すれば、輸入物価から食糧、エネルギーの価格が上昇し、我々の生活は圧迫されるだろう。 デフレを脱却したら生活難が待っているということになりかねない。、日銀は、早期に金融緩和をやめるべきだろう。 金融緩和といった物理的にゼロサムの操作で豊かになれるはずがない。

結局のところ、少なくとも短期的には、政策対応で、経済成長を加速させることは、不可能なのである。 なぜなら、日本経済が解決しなくてはならない問題は、食糧、エネルギーといった一次産品の価格高騰と新興国との競争による賃金低下圧力の二つが主なもので、これらを政策対応で同時に解決することは不可能だからである。

政治に経済を成長させることを期待することは、やめるべきだ。 何度、政権交代をしても、実現しないだろう。 ムバラク政権を倒しても何ら問題が解決しなかったエジプトと同じことだ。 既得権益の打破くらいで、成長が加速すると考えるのは合理的ではない。 我々が直面する真の問題は物理的な限界だからだ。

我々は、個人の出来る範囲で、自らの能力を高め、政府の経済政策に頼らないようにするべきだ。

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