世界のエネルギー問題について ~ 片桐さんへの反論

松本 徹三

今週月曜日の私のアゴラの記事に対して、片桐さんという方からコメントを頂きましたが、「アゴラの記事には、検証なしに『思い』だけで書いてあるものが多い」という事については、私の基本的な執筆の姿勢とは全く相反するので、黙っているわけにもいかず、異例ですがこの記事で反論させて頂きます。

  1. 先ず、この記事は、ずっと先に実現するものを含んだ「技術的な可能性」について論じていることをご認識ください。また、この記事は世界規模での問題を論じているのであり、日本の事を論じているわけではないこともご認識ください。

  2. 日本について言うなら、「日照時間が短いこと」と「土地が少なく高くつくこと」の二点から、大規模な太陽光発電は不可能でしょう。日本で使われる電力の一番安い調達方法は、矢張りサハリン或いは沿海州で天然ガス又は水力を使って発電したものを輸入する事だと思います。勿論、これでも、中近東などで将来の太陽光発電技術で発電したものと比べれば、相当に割高になるとは思いますが、それは仕方のないことです。エネルギーも水も、場所によってコストが違うのは当然のことです。
  3. 同様に、私は、たまたま金持ちで環境意識が強いドイツのような国が太陽光発電などに力をいれるのも、殆ど無意味だと思っています。こんなやり方でちまちまとCO2を減らしていても、地球規模では大した事にはならないからです。コストが石油や石炭より安くならなければ、中国やインド、インドネシアやブラジルのような「大人口をかかえてこれからエネルギー需要が急増する国」ではとても採用できず、そうなると、「これによって地球規模でCO2を削減しよう」という考え自体もが非現実的となります。
  4. しかし、もし仮に、シリコンの使用量が現在の結晶を使う方式の二十分の一以下の薄膜方式で、理論的には可能とされている変換比率30%が実現出来、且つこのようなパネルを低コストで製造する技術を見出す事が出来れば、日照時間が長く、且つ土地がタダ同然の場所では、どのような化石燃料より安く太陽光で発電することも可能となるでしょう。具体的には、北アフリカ、中近東、中央アジア、米国南西部、メキシコなどがこの条件を満たすでしょう。
  5. ここで発電された電力を海水淡水化に使うとなれば、適地条件は若干狭まりますが、例えば北アフリカなどでは、パネル製造工場自体をここに作り、毎日生産されるパネルを毎日砂漠の上にどんどん敷き詰めていき、これによって毎日増加して行く発電量で淡水化の規模も毎日大きくして行くような、気の遠くなるようなプロジェクトを20年も30年も続けて行くような雄大な構想が必要となります。
  6. 辻さんの仮説は「有限なエネルギーが地球上の全人類が作り出せる富を有限にする」という雄大な仮説なのですから、これに反論する私の仮説も雄大でなければならなかったのです。これに対して、片桐さんのコメントは失礼ながら対象がが卑小すぎて、議論として噛み合っておらず、これをもってアゴラ上での議論の質を云々されるのは如何なものかと存じます。