短期的には原発再稼働、中長期は技術革新で乗り切れ --- 岡本 裕明

アゴラ

原子力発電再稼動がいよいよ本格化する動きが見えてきました。現在再稼動申請の4電力5原発は早ければひとつぐらい本年中に動く可能性もないとは言えないでしょう。来年にかけてはぐっと増えてくるものと思われます。


一方、東京電力の柏崎原子力発電所の再稼動申請を巡る新潟県とのやり取りは泉田県知事と東電広瀬社長の第一回目会談が平行線に終わりました。が、広瀬社長は柏崎市と刈羽村には7月17日に再訪問、新潟県とも調整中ということで近日中の第二ラウンドがありそうです。第一ラウンドを巡っては私もこのブログのトピにあげさせていただきましたが、その後、甘利大臣の「県知事の勘違い」発言の意味は政府側の大きな意思を内示している気がしています。

東京電力としては「取締役会」で承認されていることがポイントだと思います。役所よりお堅い東電の取締役会の承認とは「やる」ということですから私は何らかの形で再稼動にこぎつけるのだろうと思っています。

原発反対派にとってはとんでもない話だと思われるのでしょうけど、原発がない日本が今、立ち行かないのも事実です。発電構成比は3割もあった原発はいまや2%、88%が火力発電でうちLNGは約半分の42%にものぼります。結果としてあるのは電力は供給できても電力会社の経営が非常に厳しくなる、というものです。

電力会社は民間会社ですから電力安定供給のためには電気代を上げなくてはいけません。政府としてはそれは日本経済にも日本国民の生活にも決してよいことではない、という結論から十分な安全対策を施し、慎重なる審査を踏まえて安全と判断できる原発を再稼動させるというものです。

論理としてはやむをえないと思います。

ただ、超長期的な展望にたってみれば日本から原発が消える可能性はあるのかもしれません。その理由のひとつにいわゆる代替エネルギー源がどんどん発明、開発される可能性はあります。10年、20年というスパンでみれば太陽光や地熱、バイオマスを含む新技術により原発一つ、二つ分という形で供給が増えていくかと思います。

また、発電で大きな比率を占めるようになったLNGについてもあと数年でアメリカ、カナダからのLNG輸入が見込まれるほか、ロシア ウラジオストックからも期待できます。つまり、LNGの輸入価格が下落し、電力価格は下押しする公算はありうるということです(もっとも、為替次第という言い方も出来ますが)。

また、需要側についてもLEDなど消費電力が小さいものが家庭やオフィスで普及し、低電力消費型の工場機器が普及してくれば、電力需要全体そのものが下がりますので比較的安価な電力による需給バンラスは可能ではないでしょうか?

原発の最大の問題点はその処理のサイクルが決まっていないということかと思います。実に中途半端であり、更に廃炉にするのに膨大な資金を要する点において世界で見切り発車をしてしまったということになるのかもしれません。この事態が解決できない限りにおいて、原発が電力のスタンダードであり続けることはないでしょう。

発電技術も一定の進化を遂げてきています。原発が今後、発電の主流として世界で伸び続けることが可能かどうか、個人的にはやや疑問視し始めています。日本発の新たなる技術に大いに期待したいと思います。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年7月12日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。