「異種交配」ビジネスのススメ --- 岡本 裕明

2013年07月15日 09:14

一年に一度ぐらい行くレストランがすっかり違う店に変身していました。思わず、ビールが飲みたくなって入って出されてたメニューには寿司にどんぶり、カレーライス。店の内装はどうみてもカナダのローカルが好みそうなパブスタイルで、店員も白人ばかり。難しい日本の寿司ネタの注文もすんなりと通じます。周りを見ると大きな店なのに全員ローカルのお客でごく普通に寿司を食べ、ビールを飲んでいます。


20年前、白人は寿司にしょうゆをどぼどぼに漬け込んだり、わさびをそのまま食べてうまい、と言っていたのにずいぶん進化したものです。というより、北米における寿司は明らかに日本の寿司とは違う進化を遂げたと思います。日本の寿司職人に言わせれば「こんなの寿司ではない」というのだろうと思いますが、その発想そのものがもはや古いのかもしれません。

私の家の裏にあるレストランは典型的なウエストコースト料理。メインのビーフや鴨、ポークに対して前菜のロール寿司はなかなかおつなもので「こんなところで寿司」という発想はもはやまったくありません。

数ヶ月前、私の経営するカフェで貸し自転車をやろうと企てました。このカフェから著名な観光地、スタンレーパークは目と鼻の先。近隣の貸し自転車屋は黒山の人だかり。ならば、私はカフェのランチパック付で貸し自転車をやろう、と考えたのです。事前調整のため市役所を訪れるとつれない返事。「カフェと貸し自転車業は業種のギャップがありすぎて兼業はだめです」。これほどショックなことはありませんでした。役所は思った以上にビジネスにコンサバだと思います。ならば、ガソリンスタンドとコンビニの組み合わせはなぜ許されるのか、とふと疑問に感じましたが。

日本のコンビニがなぜあそこまで進化したかといえば商品のみならず、公共料金の支払いから荷物の受け取り、コピーからコンサートのチケットまで買える「異種交配」の勝利だったと思います。つまり、専業に対していろいろなものを混ぜ合わせることによる新業態のクリエーションということでしょうか?

商店街を古典的な専門店街とすればそれが発展したのがデパートや巨大スーパーマーケットでした。そこでは大規模店舗を通じて専門店並みの品揃えがひとつの建物でそろうという新スタイルが出来たのです。現在は楽天のようにインターネットを通じた専門店街が発生しました。この思想原点はいわゆるモザイク的発展であり、モザイクの一つ一つが専門店として繋がっているという形態をとります。

一方、異種交配とはメルトポット。ニューヨーカーがなぜメルトポットかといえば、そこにさまざまな人が集まり、メルトポットに入れてぐるぐるかき混ぜてまったく新しい文化、社会、芸術を作り上げたという意味であります。

日本人はどうも専門を深め、本流を好みます。「匠」とか「極」という言葉があちらこちらに出てきて、それに大きな価値を感じていませんか。

最近私がはまっているのが、赤ワインとコーラを半々で割るカリモッチョ。確かスペインかどこかが発祥だと思いますが、これがうまいのです。ジンジャーエールとビールを割ったシャンディは昔、イギリスのパブで「発見」したのですが、このような組み合わせは亜流、邪道といって片付けるには惜しいと思います。私がカナダに来たばかりのころ、クラブでよく飲んだのがウォッカパラライザー。これはコーラ、牛乳にウォッカという聞いただけで気持ち悪くなるドリンクですが、これはカナダスペシャルでアメリカにはありません。

北米は人種も多く、人それぞれの好みは違います。そこで生まれるのはあちらこちらのよさを取り込んだまったく新しい商品。そのたくましいまでの発想がiPhoneやface bookを生み出すのかもしれません。日本がガラパゴスといわれるのは突き詰める良さ。一方、世界に眼を向ければそこにはさまざまな人と多様な価値観。それをひとつの定規で測定し、判定することは出来ません。だからこそ、まさかと思うその組み合わせがとんでもないヒットを生むのかもしれません。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年7月14日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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