米情報機関の欧州での成功例 --- 長谷川 良

2013年07月27日 12:09

読者に少し過去に戻って頂く。オーストリアの首都ウィーン市7区には北朝鮮唯一の直営銀行「金星銀行」(ゴールデン・スター・バンク)が開業していたが、2004年6月末、北側が自主的に営業を中止し、閉鎖した。
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▲オーストリア軍情報機関とNASの協力問題を報じるプレッセ紙


1982年に創設されて以来、北の対中東ミサイル輸出や偽造米紙幣などの不法活動の拠点となってきた同銀行は久しく米国から睨まれてきた。その銀行は創設22年で閉鎖に追い込まれたわけだが、その背後に米中央情報局(CIA)と米国家安全保障局(NAS)が関っていたことが改めて明らかになった。

「金星銀行」は1982年、ウィーンに開業された。開業を支援したのはオーストリアのクライスキー社会党(現社民党)単独政権だった。同銀行には不法武器密輸や核関連機材取引に関与しているという疑惑が度々浮上したが、社会党政権の加護もあって、大きな政治問題とはならなかった。しかし、オーストリアで2000年2月、親米派の国民党主導のシュッセル政権が発足して以来、米国の「金星銀行」壊滅作戦が本格的に始まった。

米国は2001年以降、オーストリア政府に「金星銀行」の閉鎖を強く要請してきた。そこでオーストリア政府は財務省独立機関「金融市場監査」(FMA)に「金星銀行」の業務監視を実施させた。その一方、米財務省は、金星銀行のオーストリア主要取引銀行にも対北取引の停止を要求した。米国企業との銀行取引が停止されるのを恐れ、オーストリアの銀行側が自主的に「金星銀行」との取引を中止していった。

そのため、「金星銀行」関係者は当時、「オーストリアの銀行がわが銀行との取引を中断したので、銀行業務が実施できなくなった」と嘆き、銀行業務の停止を余儀なくされていった。

その背後には、NASとCIAの工作があった。NASは「金星銀行」が送信するFAXや電話通信の情報を掌握する一方、CIAは「金星銀行」の隣りに韓国系テコンドー道場を開き、24時間、銀行を監視していた。

「金星銀行」が閉鎖した直後、同テコンドー道場も姿を消した。何処に引越ししたのか、誰も知らない。CIAとNAS関係者は「金星銀行」の閉鎖を見届けると、任務は完了した、というわけだ。ハリウッドのスパイ映画を観るように、そのプロットの展開はスピーディだった。

CIA元技術助手のエドワード・スノーデン氏の情報暴露で説明責任を強いられているCIAやNASは「過去、50件以上のテロ計画を壊滅させた」と説明し、理解を求めている。明らかな点は、両機関は北朝鮮の欧州工作拠点だった「金星銀行」の壊滅に深く関ってきたことだ。「金星銀行」を失った北はその後、欧州で不法な経済活動を実施できなくなっていった。

米国がウィーンで「金星銀行」を監視していたことはオーストリア側はもちろん知っていたし、米国側から関連情報を入手していたことはいうまでもない。オーストリア日刊紙プレッセは26日1面トップで同国の軍情報機関とNASが情報提携していたことを報じている。

ちなみに、欧州で核関連物質を調達してきた北の核物理学者・尹浩鎮(ユン・ホジン、現在、南川江貿易会社責任者)氏のウィーンのアパートを盗聴していたのはワシントンから派遣されたCIAエージェントだったことを付け加えておく。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2013年7月27日の記事を転載させていただきました。
オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。


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