日本が「真の軍隊」を持てば二つの恩恵を受けるだろう --- ノア・スミス(Noah Smith)

2013年07月29日 21:23

安倍政権の発足と先日の参議院での自民党の勝利により、日本の政治において再度この議論が浮上してきた。

日本は憲法を改正して「真の軍隊」を持つべきなのか?

自衛隊の代わりに「真の軍隊」を持つ理由として二点挙げられる。

  1. 中国や北朝鮮による危険
  2. 日本の国家としての威信

である。私は防衛の専門家ではないし、日本国家の威信とも無関係だ。しかし、日本が「真の軍隊」を持てば、二つの恩恵をもたらすだろうと考えている。


一番目の恩恵、これは学術研究に関係する。米国では、インターネット技術を含む根本的な技術革新の多くはペンタゴンの国防高等研究計画局(Defense Advanced Research Projects Agency)によって行われている。米国の学術研究者は軍隊から多額の補助金を得ているのだ。

その一方、日本では技術的な進歩の大半は民間企業によって推進されているが、民間企業はリスクを回避した利益中心の考え方を持つ。企業は「安全(つまり既存の技術から大きく離れていない)」で、短期間で実用化できる市場性の高い技術に注力する傾向がある。欧米の軍隊では、すぐには実用化できないが長期的にみると広範囲なポテンシャルを持つ技術に対してインセンティブを設けている。

もし日本が「真の軍隊」を持った場合、本当の意味での軍事研究が行うことができる。もちろん現在でも軍事研究に関して法的に制限するものはないのだが、日本は自分たちの軍隊を米軍の補助的存在としている。日本の軍隊が独自の軍隊として認められれば、軍からインセンティブとして技術的研究に更に資金が投入され、経済効果が起き、世界各国にも恩恵をもたらすであろう。

「真の軍隊」を持つことによる二番目の恩恵は政治面に関するものだ。現在、日本は多くの東南アジア諸国から疑いの目で見られており、多少なりとも恐れられている。なぜなら、第二次世界大戦中の占領によって、東南アジア諸国から日本は本質的に軍国主義で好戦的な国家であると考えられているからだ。以前、シンガポールのリー・クアンユー元首相は日本の再軍備化を「チョコレート・リキュールにアルコールを加えるようなもの」と評している。

この考えは誤りである。「真の軍隊」を持つことで日本が再びこれらの国々を占領することはないし、戦争をすることなど全くあり得ない。

まず、核の抑止力により、現代では全面戦争はあり得ない。大国による全面戦争は1950年代以来起こっていない。核兵器の使用があまりに危険だからである。また第二次大戦以降、戦争による経済的恩恵のないことが明らかになっている。かつては天然資源によって富の大半がもたらされていたから、領土の征服によって天然資源が獲得されてきた。しかし、現代では物的、人的資本から富が得られるため、占領や搾取によって富を獲得することはできない。イラク戦争における米国をみればわかるように、天然資源の豊富な弱小国を占領しても戦勝国が豊かになることはないのだ。

また、米国の心理学者、スティーブン・アーサー・ピンカー(Steven Arthur Pinker)氏が『The Better Angels of Our Nature』で述べているように、(先進国間での)戦争の時代はおそらく終わりに近づいている。したがって、もし日本が「真の軍隊」を持ったからといって、実際に軍隊を行使する可能性はほとんどない。

このようなことから、日本が暴力を振るう「アルコール中毒」患者ではないことを世界に対して示すことができる。これはどうしようもないことだが、平和憲法があることによって周りの国々は日本には平和的な憲法が「必要」であると確信している。東南アジア諸国に対しては、日本はもし再軍備しても平和国家であり、再軍備による問題はないことを示す必要がある。こうすることによって日本の「ソフトパワー」が世界に伝わっていくのである。類似したケースとしてフランスが挙げられる。フランスは1800年代にナポレオンの指揮下で残忍な侵略戦争を行ったが、現在では「真の軍隊」を持ちながらも平和的で安定をもたらす国家とみられている。

それゆえに憲法改正に対する議論において、これらの二つの恩恵に関しても検討するべきだと考える。もちろん、日本が憲法を改正して「真の軍隊」を持つべきだと言っているわけではない。これは日本人自身が決める問題だ。見過ごされる可能性の高い二つの恩恵を単に提示しているだけである。

ノア・スミス(Noah Smith)
Noahpinion

※編集部より:この投稿はノア・スミス氏の「Two Benefits of a Real Japanese Military」を編集部で和訳したものです。

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