金正恩第1書記の不毛な投資 --- 長谷川 良

2013年07月30日 11:24

韓国動乱(1950~1953年)の休戦協定締結から60年目に当たる7月27日、南北両国で記念行事が行われた。特に、同日を「戦勝記念日」と呼ぶ金正恩第1書記が率いる北朝鮮では盛大な軍事パレードやさまざまな行事が開かれた。

韓国動乱ではどちらが最初に侵略を図ったかで南北間で「正しい歴史認識」がない。日韓米など国際社会では故金日成主席が中国の支援を期待して戦争を始めたが、北側は韓国軍の先制攻撃を戦争の主因として批判してきたことは周知の事実だ。


当方は昔、駐オーストリアの北朝鮮大使館の若い外交官とどちらが戦争を仕掛けたかで激論したことがある。当方が「北側が侵略したことは明らかだ」と述べると、30歳半ばの若い外交官は「バカなことをいうな。南側が最初に侵略してきたのだ。そこでわが軍が応戦した」と反論してきた。当方は歴史的な背景や学者たちの見解などを簡単に説明した。

「歴史は証明している。1950年6月、北軍は、南への一斉攻撃を始めて戦争が勃発した。その後、米国を中心とする国連軍と中国人民軍が参戦。53年7月に国連軍、北軍、中国軍が休戦協定を締結した」

若い外交官の怒りは激しくなってきた。当方を軽蔑するような目つきで「お前は南側の洗脳を受けている。お前と話していても意味がない」というと大使館内に入っていった。その荒れ具合に当方も驚かされたものだ。

韓国動乱で南北間の見解が異なっていることは知っていたが、北側は国民に徹底的に南側の戦争責任を教えているわけだ。普段は穏やかな会話ができる若い外交官が、韓国動乱(朝鮮戦争)問題になると人が変わったように声高らかに叫ぶ姿を見て、少々怖くなった(「北朝鮮書記官と『あの日』」2008年2月27日参考)。

あれから5年の月日が経過した。金正日労働党総書記は死去し、その息子金正恩第1書記時代に入った。27日は「戦勝記念日」と呼ばれ、国を挙げて祝った。世界約30カ国に対し少なくとも140億ドルの対外債務を抱え、多くの国民が飢え苦しんでいる国が約1億5000万ドルの資金を投入してその日を祝った。その額は故金日成主席生誕100年目の祝賀会(2012年4月)の費用を大きく上回っている。不毛な投資といわざるを得ない。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2013年7月29日の記事を転載させていただきました。
オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。


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