もし「俺のイタリアン」が「ボクのイタリアン」だったら? --- 内藤 忍

アゴラ

出版社のベテラン編集者の方とミーティングをしていて、面白いお話を聞きました。本を書くときの文体についてですが、10年以上前は「である」調が基本だったのに、ここ10年で「です・ます」調が主流になってきたというのです。

実際私の書いた20冊以上の本もほとんどすべて「です・ます」調です(新刊ももちろん「ですま・ます」調)。雑誌の原稿で、たまに「である」調で書くことがありますが、どうしても論文調で硬い文章になりがちです。何より、何だか偉そうな、上から目線になりがちな気がして、個人的には「である」調にはネガティブでした。


しかし、最近この「である」調で、本を書いてみるのも面白いのではないかと思うようになりました。

例えば

「資産運用には銘柄選びやタイミングを考えることより圧倒的に重要なことがあります。それは、アセットアロケーションです」

と書くのと

「資産運用には銘柄選びやタイミングを考えることより圧倒的に重要なことがあるのをご存知だろうか。それはアセットアロケーションだ」

と書くのでは、後者の方がインパクトがあるように思います。上から目線にならないような「である」調の文章が書けないか。そんなことを考えています。

しかし、そこでもう1つの疑問にぶつかります。もし「である」調で文章を書くとしたら、自分のことは何と呼べば良いのでしょうか?

通常、「私」を使っていますが、「僕」「ボク」「俺」など、1人称表現もいくつかの選択肢があります。

「私も最近マレーシアで不動産投資をはじめました」

と書くのと

「ボクもマレーシアで不動産投資をはじめた」
「俺も最近マレーシアで不動産投資をはじめちまったぜ」

と書くのでは、印象はかなり変わります。「僕」「ボク」というのは何だか子供っぽいし、「俺」は品が無いように勝手に思い込んでいましたが、文体次第で面白い表現になるのかもしれません。

「俺のイタリアン」というお店がブレイクしていますが、店名が「ボクのイタリアン」だったらどうでしょうか?何だか迫力無くなって、インパクト弱く、イメージが変わります。本も同じではないかと思うのです。

書くことが大好きなので、ブログも本も雑誌の原稿も仕事というより自分の趣味のように取り組んでいますが、より多くの人に役に立てたり、喜んでもらえれば、さらに自分としても楽しくやりがいを持って取り組むことができます。そのために出来ることは何でもやってみるつもりです。

現状に満足することなく、常にチャレンジャーとして、新しいリスクを積極的に取りに行く。迷ったらやってみるというスタンスをいつも忘れないようにしたいです。

編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2013年8月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。