包括的核実験禁止機関(CTBTO)ゼルボ新事務局長に聞く --- 長谷川 良

2013年08月17日 14:43

包括的核実験禁止機関(CTBTO)準備委員会のラッシーナ・ゼルボ事務局長は8月15日、ウィーンの事務局内で本紙との単独会見に応じた。CTBTは署名開始から今年9月で17年目を迎えるが、米国、、中国、イランなど8カ国の発効要件国の批准が遅れているため、依然発効していない。そこで今月1日に事務局長に就任したばかりのゼルボ氏に条約発効の見通し,課題、特に北朝鮮の核問題の対応などについて聞いた。(聞き手・ウィーン小川敏)

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▲CTBTOのゼルボ事務局長、王毅・中国外相と会談(2013年8月7日、CTBTO提供)


──事務局長は中国から帰国されたばかりだが、中国訪問の成果について先ず聞きたい。公表された報道文によると、CTBTOと中国は中国国内の監視施設のデータをウィーンの国際データセンター(IDS)へ試験送信することで合意したと聞く。

「中国では10年前から監視施設の建設を進めてきたが、これまで監視施設からのデータをIDSに送信するまでには至っていなかった。今回、中国側とデータの試験送信で合意した」

──中国の観測所からのデータ送信の実施によって北朝鮮の核実験の検証がより進む、という期待の声がある。

「中国国内に放射性核種監視施設が整備され、データ送信が可能となったとしてもそれが即、北の核実験の検証が進むということではない。なぜならば、放射性物質の検出は気流の動きに大きく作用されるからだ。ただし、中国の施設からのデータは北の核実験の追加情報として検証をより迅速、正確に行う上で大きな手助けとなることは間違いない」

──中国当局者と北朝鮮の核問題で話し合ったのか。

「CTBTOのついて話し合う場合、北朝鮮問題を抜きに考えられない。中国側は北の過去の核実験を不快に受け取っているはずだ。私は王毅外相と国防部の張玉林副部長(次官)と会見したが、北の核問題はそこでも出た。私は核兵器のない安全な世界を実現する上でCTBTの重要性を強調。王毅外相もそれに同調し、中国側も核拡散防止条約(NPT)の枠組みでCTBTの重要性を再確認した」

──中国は批准の具体的日程を表明しなかったのか。

「具体的な批准の日程については話し合わなかった。私は8カ国の未批准国には批准できない国内事情や安全問題があることを理解している。そこで信頼の醸成に取り組む意向を強調する一方、中国が条約の早期発効のために未批准国の中で指導的役割を果たしてほしいと語った。いずれにしても、外相と国防次官との話し合いは非常に建設的だった。私は中国がCTBTの早期発効に貢献してくれると信じている」

──ところで、韓国日報によると、韓国内の観測所が6月21日から24日、3回、北の核関連施設のある付近から放射性物質希ガスを検出したという。CTBTOの国際監視サービス(IMS)の3か所の放射性核種監視施設(ロシア、モンゴル、高崎市)も検出したのか。韓国当局は北の軽水炉の原子炉実験の際に希ガスが放出されたとみている。

「IMSも観測したが、量的に少なく、北の核関連活動に関連するものではなかった。キセノン自身は大気中に常に微量だが存在する」

──IMSは北の3回目の核実験の場合、実験55日後に放射性物質を検出したと発表したが、検出された放射性物質を解析すれば北の核実験がウラン核爆弾かプルトニウム爆弾かを判断できたのではないか。

「われわれはキセノン131とキセノン133を検出したが、北の核爆弾がウラン爆弾かプルトニウム爆弾かを判断するためにはもっと情報が必要だ。ただし、CTBTOは核実験の種類を判断する権限を有していない」

──北を訪問する予定はないか。

「事務局長に就任したばかりだ。現時点では考えていない。北朝鮮問題の解決のためにどのようなアプローチが可能か、有識者から意見を聞きながら決定していくつもりだ」

──CTBTの早期発効の要は米国の批准だが、ワシントンから早期批准のシグナルはあるか。

「オバマ米大統領はプラン演説で『核兵器なき世界の実現』をアピール、ニューヨークの国連安保理の場、そして最近ではべルリンでCTBTの早期批准の重要性を強調している。大統領の発言内容を信頼している。われわれはCTBT体制の技術的な観点から米国の信頼を勝ち得ていく方針だ。CTBTのIMSが如何なる核爆発も探知でき、米国の国家安全の上でプラスであることを訴えていく努力だ。それを通じて、オバマ政権が上院で批准可能な支持を得るように支援していく」

──米国はイランの核開発計画に懸念を有している。

「私はイラン政府が条約に早期批准することを期待している。イランは同国の核開発計画が核エネルギーの平和利用と主張している。そのイランが核実験禁止条約のCTBTを批准すれば、同国の主張が正しいことを国内外に実証できるからだ」

──原子炉を有するなど、潜在的な核開発能力を有する44カ国(発効要件国)のうち、未批准国は8カ国(米国、中国、イラン、エジプト、インド、パキスタン、北朝鮮、イスラエル)だが、そのうちどの国が批准に最も近いか。

「8カ国が同時に批准してくれれば理想だが、現実は難しい。私としては米国と中国2カ国の核保有国が他の未批准国に率先して批准してくれることを願っている。米中両国のリーダーシップに期待する」

──未批准国の8カ国の一国でも批准を拒否し続ければ、CTBTは永遠に発効できない。そこで44か国の批准を条約発効の条件と明記している条約14条の修正、ないしは条約の暫定発効案も加盟国の間で聞かれる。

「署名国は8月現在、183か国、批准国は159か国だ。条約は署名国数、批准国数で既に普遍的条約の水準に達している。条約署名が始まった時、3年、長くて5年で条約は発効すると予想したものだ。それが17年目を迎える現在も発効していない。条約の暫定発効案の声もあることは知っている。いずれにしても、われわれは条約の早期発効の実現に向かって努力しなければならない」

【ゼルボ事務局長の略歴】西アフリカのブルキナファソ出身、2004年11月以来、ウィーンの「国際データセンター」(IDS)所長、昨年10月、次期事務局長に選出され、任期は今月1日からスタートした。パリ大学で地球物理学博士号を取得。CTBTO事務局長としては初の技術専門畑出身者だ。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2013年8月17日の記事を転載させていただきました。
オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。


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