バブル世代の「倍返し」に期待する

新田 哲史

今週日曜夜は「半沢直樹」がお休みだったので寂しかった。
次回から舞台を東京に移し、案件もスケールアップするので心待ちにするとともに、視聴率が今後どこまで伸びていくのか実に楽しみだ。大阪編完結の第5回の平均視聴率は29%(ビデオリサーチ、関東地区)。気の早いスポーツ紙は最終回に40%の大台を叩き出した「家政婦のミタ」超えも期待しているようだが、ブログ論壇でもヒットの要因を探る記事で盛り上がっている。BLOGOSの「半沢」記事のなかでは、ESQさんのブログが筆者の感想をほぼ言語化してくれていて印象に残った。

……まさに日曜日の夜に月曜日を迎えるのが憂鬱だと感じる多くの社会人がこの番組のキャスティングの本物さに触れて新鮮味を感じ、テンポの良いシナリオ展開に胸を躍らせ、そして、「10倍返しだ!」と理不尽なことには決して怯まない姿勢で戦う主人公、半沢直樹に、共感しているのであろう…

このくだりは100%アグリーですね。特に主人公と同じバブル世代の視聴者から見れば、共感の思いがひとしおではないのかな。リアルの大企業でも彼らは入社後20年の時を経て、社内外での評価がほぼ定まってきた。出世競争で敗色濃厚という人は受難の様相。大量採用時代の裏返しで会社から処遇に困られ、年功序列制度の下で、後輩のロスジェネ世代から「さっさと席を開けろよ」と突き上げを食らう。銀行員生命をかけた半沢のギリギリの攻防に、自らの境遇を重ねあわせるバブル世代も多いはず。

※写真=原作も売れ行き好調な「半沢直樹」シリーズ@東京・六本木にて筆者撮影
130819半沢直樹

●ウザったい!?バブル世代
75年生まれの筆者はロスジェネ世代の中間期。筆者がいた新聞社も始め、マスコミも半沢の働く邦銀と似たような、年功が幅を利かせる旧態とした業界であり、ボリュームゾーンになっているバブル世代の“ウザったさ”を、同世代が腹の底では不満に思っていると感じることも多い。そこら辺の感覚、東洋経済オンラインの佐々木編集長が近著「5年後、メディアは稼げるか」の終盤に書いていたな。これからのメディア人のあるべき姿を世代別に挙げた中で、40代については「中途半端」「新世界実現には30代へ一気にパワーシフトすべき」と手厳しい。

自己保身に汲々とし、イノベーションの妨げになっている方々に対しては、筆者も佐々木編集長と同意見である。メディア業界でいえば、難題であるウェブ化にあたって、バブル世代が「新しいカルチャーになじめない」(本より)のは確かな傾向かもしれない。しかし、解雇解禁と言った人材の流動化がなかなか進まない日本の企業社会にあっては、バブル世代をどう人材活用していくかの視点もそれなりに必要な気がする。

●バブル世代の「リアル倍返し」が見たい
バブル世代の強みの一つは「お金の使い方」を肌感覚で知っていることだ。ロスジェネ世代は「嫌消費世代」と言われる一方で、バブル世代の体験に裏打ちされた「投資力」は消費喚起に必要だ。賛否両論はあるものの、「LEON」とか「美魔女」的な仕掛けは景気の浮揚感を演出する上で前向きだと評価する。日本が今後も人口オーナス、つまり少子高齢化、労働人口減少などで人口が経済の負荷要因となっていく中で内需を拡大するには、若い世代の手本としての「消費力」に期待したい。一方、経営視点でいえばバブル世代の「起業力」も注目だ。たとえば当時隆盛だったパーティービジネス。マハラジャなどのディスコを拠点にぼろ儲けした大学生たちの中には、その後も起業家として活躍した人が少なくない。消費者の動向をつかむ嗅覚、ビジネスモデルを編み出す力は侮れない。

昨今、「40歳定年」が話題になるように、生き方や働き方をある時点で個々が見直し、前向きに生きていこうという時代である。バブル世代の方々は、老け込むにはまだ早いし、我々のアニキ、アネゴとして、日本再生の一翼を担っていただかねば困ります。そういえば筆者が初めて半沢直樹の存在を知ったのは3年前、週刊ダイヤモンドの連載小説だった。今は単行本になったシリーズ第3作「ロスジェネの逆襲」。系列の証券会社に飛ばされた半沢が、ロスジェネ世代の部下と“共闘”しながらIT企業の買収劇を巡る理不尽に立ち向かう話である。試練に直面した半沢が部下に語る台詞はもちろん「倍返しだ」。リアルビジネスでも、アニキ、アネゴのそんな意気込みを聞きたいですね。リストラに怯えながら保身に汲々とするのではなくギラギラとした往年のパワーを若手に見せ付けてほしい。

ところで今回のドラマでは「ロスジェネの逆襲」のお話は入らないようなので続編、あるいは映画化に期待したいです。ではでは、お盆休み明け、今日から一緒に頑張ろうじゃありませんか!ちゃおー(^-^ゞ

新田 哲史
Q branch
広報コンサルタント/コラムニスト
個人ブログ