高成長より公平性の確保を

2013年08月20日 10:15

日本では、消費税増税について安倍首相がどのような判断を下すのか、多くの人が関心を持って見ているようだ。予定通りなら来年4月に消費税を3%増税して8%に、そして再来年10月にさらに2%増税して10%にというのが予定だったのが、本田悦郎内閣官房参与が、来年4月から毎年1%づつ増税する案を主張したり、麻生財務大臣は予定通りの増税を主張するなど、政権内部でも様々な意見があるようだ。


なぜこのように、様々な意見が出るのかというと、消費税増税が景気の腰を折らないか、という懸念と、財政規律に関する疑念から長期金利が上昇する懸念を両天秤に掛けているからである(勿論、長期金利が急騰すれば取り返しが付かないので後者の方が重要だ)。 

増税による景気腰折れを懸念する人たちにとって、4-6月期の経済成長率は年率換算で実質2.6%(速報値)、これが予想より低いということらしい。

日本経済の実力はどの程度なのか?

しかし、年率2.6%の成長というのは、随分高い成長である。実際、最近の世界経済の先進国とその他の国々の経済成長を比較すると下のグラフのようになっており、先進国の経済成長は年率1%程度に落ち込んでいる。実際、EUの今年の経済成長はマイナスの予測だ。
2.6%というのは異常なくらい高い数字である。

percent-change-in-real-gdp-by-part-of-the-world

また、2005年から2011年までの実質成長を比較しても先進国は圧倒的に低く、日本はほとんど0に等しい(グラフではアメリカの成長が日本を上回っているように見えるが、一人当たりの成長率では、ほとんど同じである)。

percent-economic-growth-2005-2011

(以上2つのグラフはOil Limits Reduce GDP Growth; Unwinding QE a Problemからの転載)

こういった先進国全般の実質成長率の推移を見ると、日本の4-6月期の年率換算2.6%もの成長というのは異常値と言ってよい。

実際、日本の潜在成長率の推移を見ると、次のグラフのように現在は0%台になっており、このまま高齢化が進めば、0.0%になる日も近いだろう。

潜在成長率

従って、現在の日本経済が長期的に維持できる実質成長率は、0%台であり、1%を超える成長は実力以上のものと言ってよい。

経済成長による再分配は諦めよ

日本の潜在成長率を上げるには、生産年齢人口の減少をどのように補うか、あるいは日本の産業の国際競争力をどう高めるのか、といった取り組みが必要で、いくら成長戦略を立てても、それが実を結ぶまで、10年程度は掛かるし、その間に高齢化は進行する。だから、短期的に、いくら金融緩和や財政出動で経済水準を引き上げても、いずれ揺り戻しがあり、元の木阿弥になる。

これは、日本のバブル崩壊、リーマンショックなどを見ても分かることで、上のグラフが示すように、先進国が高成長をする時代というのは完全に終わったといってよい。

なぜなら、先進国と新興国が限られた資源を分け合い、新興国の方が成長が高いからである。このことは下のグラフを見ても明らかだ。
oil-consumption-by-part-of-the-world

Oil Limits Reduce GDP Growth; Unwinding QE a Problemから転載)

それでもなお、安倍政権の経済政策(=アベノミクス)に見られるように高い経済成長を実現しようという声は強い。

安倍政権は8月上旬、「中長期の経済財政に関する試算」を公表したが、それによると、アベノミクスが掲げる3本の矢(大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略)が成功し、今後10年の平均成長率は実質2.1%、名目3.4%となる「経済再生ケース」を基本シナリオとしている。

これは明らかに不可能であり、実際には長期的には実質年率0%台の成長が続くものと考えてよいだろう。

経済成長への努力は続けるべきだが、不可能な目標やシナリオを立てるのは愚かなことだ。

中期財政見通しに見られるような高い成長を期待する声があるのは、バブル崩壊前まで、長く高度成長が続き、その後も自民党のバラマキ公共事業による形を変えた福祉政策で、富の再分配を歪んだ形で行ってきたために、政府に過剰な期待が掛かっているからだと思われる。

しかし、残念ながら、政府は借金漬けで、最早、国民を豊かにする術を失っているわけで、経済成長による再分配は、もう諦めるべきだ。

従って、これからは、本当に困った人に再分配を行うシステムの構築や、物質的に貧しくなっても公平性だけは保てるような社会にすることが求められる。 財政再建を先送りすれば、財政破綻の可能性が高まる一方、財政破綻は避けられたとしても、将来の増税が大きくなり、世代間の格差は耐え難いものになるだろう。

また雇用に関しても、今後、二極化が一層進み、所得格差の問題も深刻になると思われる。 フランスの週35時間労働のように、経済成長より雇用の確保といった考え方も参考になるだろう。

何れにせよ、日本が今目指すべきは、高い経済成長ではないことは明らかだ。

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