北方領土交渉は今が好機である --- 岡本 裕明

2013年08月20日 10:54

8月19日夜半の日経電子版に「日ロ首脳9月5日会談で合意 外務次官級協議」というタイトルにいよいよか、と思ったのは私だけではないでしょう。このブログで時々北方領土の話題を振っています。理由はいくつかあります。


ひとつは戦後の未清算案件としては日本人にとって最も気になる問題であること

竹島、尖閣と領土問題を隣国と抱える中で北方領土だけは歴史を通じて対話がつづいており、解決の糸口がありそうなこと

第二期プーチン大統領政権の焦点は極東にあり、ロシア経済の建て直しは重要な課題であること

ロシアと中国の関係を踏まえ、日本との関係を密接にする外交的メリット

ロシアにとって国境が定まらないのは日本との北方領土を残すのみとなっていること

これらの理由も含め、過去と違い、プーチン大統領の解決へのパッションが大いに見られるのであります。報道によれば「昨年11月に都内で開いた貿易経済の日ロ政府間委員会でロシアは共同議長をプーチン氏の腹心、シュワロフ第1副首相に格上げし、訪日団も極東発展、運輸、外務各省次官級や極東の地方知事など約80人の要人らが勢ぞろいした。外務省幹部は『ロシアがこれほど日本との協力に強い関心を示したことはない』と意気込む。」(日経電子版)とあります。

北方領土の返還交渉について「無償、無条件で」というのは交渉の経緯からしても無理な要求でしょう。日本はどういうディールをするのか、そのあたりは双方の交渉カードの戦いですのでまったく見えませんが、安倍首相や外務省幹部にとってこのチャンスを逃せば再び何十年もこの解決の糸口を見出せなくなるかもしれない、という気持ちはお持ちのはずです。

考えてみれば沖縄返還交渉ですらスムーズではなかったし、それは小説にもドラマにもなりました。今回は日本が譲歩するかもしれないところとロシアとの経済提携が日本にプラスに働くという総合点で評価すべきだと思います。勿論、歴史を語る人にとってみればロシアに譲る点は何もない、と強く主張するでしょう。しかし、言い分というのは双方にあり、その結果、今までなんら進捗がなかったことも事実です。勘違いされても困るのですが、私は北方領土の一部返還をあきらめろ、と言っているのではありません。統治の仕方はいろいろある中で双方が歩み寄れるポイントがあればそこに落とし込む発想もありではないか、と考えています。

もうひとつはこの交渉の成否は今後、尖閣問題を取り扱うに当たり、重要な意味を持つ可能性があると思ってます。少なくとも中国側から見れば北方領土問題の解決は嫌なことになりやしないでしょうか?

一方、アメリカの出方も注目すべきでしょう。北方領土問題にはどうも裏でアメリカとのやり取りがあるように思えます。もともとアメリカは本件について日本側に「ロシアに譲歩するな」としていた節があります。天敵であるロシアとディールをする日本はアメリカには当然気持ちがよくありません。安全保障条約との絡みもあるかもしれません。ましてやスノーデン問題が佳境となっている今確かにいやな点であります。

これも考え方次第なのですが、アメリカとロシアの関係が微妙である今だからこそ、日本がロシアとディールをし、いざと言う時、両国の間に入れる体制を作るという口説き方もあるでしょう。北方領土問題解決を通じたロシアから日本への地政学的ラインの建設はアメリカの太平洋防衛戦略にも合致するのではないでしょうか?

まずは9月5日の会談で4月からの「お約束」がどのような進展を見せるのか、そして北方領土問題解決の前提となる平和条約の草案が出来、締結できる目処が出来つつあるのか、このあたりでしょうか。更に秋にラブロフ外相が来日するのはそれなりのスケジュール感があっての話だと想像しています。私の個人的期待は盛り上がっております。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年8月20日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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