非正規雇用の増加と格差問題

2013年08月22日 22:37

「非正規社員比率38.2%、男女とも過去最高に」というニュースが示すように非正規雇用が増え続け、ここ20年で16.5%ほども増加している。 

非正規雇用が増え続けるのは、何故だろうか、ここではその理由について考えたい。


労働時間の減少と非正規雇用の増加

非正規雇用が、なぜ増加するのかを考えるために、まず

   生産量(付加価値)= 労働生産性 × 労働時間  (1)式

 生産量(付加価値) = エネルギー投入量 × エネルギー効率 (2)式 

の2つの式が成り立つことを注意しよう。 これら2つの式から

労働時間=(エネルギー投入量 × エネルギー効率)÷ 労働生産性 (3)式 

が成り立つ。ところが、現在、原油が1バレル100ドルを超えていることからも分かるように、エネルギー資源の投入量に限界が生じており、省エネルギーが進んだ日本ではエネルギー効率の改善は次第に難しくなっている。一方、多くの企業では、機械化、IT化が進み、労働生産性を上げている。従って(3)式から、労働時間は減少しているはずである。

実際、次のグラフで確かめられるように、日本人の労働時間は、現在、アメリカより少なくなっている。 
労働時間

ところが、「日本人の労働時間-時短政策導入前とその 20 年後の比較を中心に-」を見るとフルタイム雇用者の場合、日本が週50時間以上働いているのに対し、アメリカは週40時間強と少ない。 フルタイム雇用者の労働時間はアメリカより2割以上も多いのだ。  

つまり日本では、フルタイム雇用者が長時間労働をする一方、非正規雇用を増加させることで、社会全体として労働時間を減少させてきたことが見て取れる。 

日本の場合、引用した日経の記事にあるように

20年前の調査と比べると、非正規の比率は16.5ポイント上昇した。男性・女性ともに過去最大の比率となった。正社員の比率が大きい製造業は生産拠点の海外移転などで雇用が減り、パートの多い小売やサービス業で働く人の割合が高まったことが背景だ。なかでもパートやアルバイトとして働く人が多い女性は非正規の比率が57.5%と、半数を大きく上回る。

  
というのが、現在起きている非正規労働増加の現状をよく表していると思われる。  

実質賃金の減少と労働形態の変化

日本では、「経済成長しても実質賃金が下がるのはなぜか?」で書いたように、エネルギー価格の高騰を実質賃金の減少という形で吸収してきた(これは、この記事でも書いたように、アメリカを見ても同じである)。 そしてそれは主に、高賃金、高生産性の製造業から、低賃金、低生産性の対人サービス業への人材の移動という形で行われた。

このようにエネルギー価格の高騰は、(2)式から生産量の物理的限界を形作ると共に、実質賃金を低下させる。また、エネルギー価格の高騰は生産性の向上と共に(3)式を通じて、パートタイム、アルバイトといった、非正規雇用を増加させる。このため、労働が二極化し低賃金労働者を増加させる。  

実質賃金が下がり、低賃金労働が増えれば、消費は必然的に低価格志向にならざるを得ない。これが、日本のデフレの大きな原因だと思われる。 消費者の低価格志向は統計的にも確かめられている。 

消費が低価格志向になれば、労働はどのような影響を受けるだろうか? 低価格志向になれば、人件費を抑えるために、大部分の労働者をアルバイトなどの非正規雇用にし、労働を細分化し、マニュアル化し、代替を容易にして、正社員を安く使い潰すといったことになるとしても、少しも不思議ではない。これが所謂ブラック企業の問題と言われるものの正体だろう。  

また、低価格志向になれば、高スペックで高価格の商品は売れにくくなり、技術力や高スキルを生かす場が減少することも考えられる。 例えば、高級フレンチレストランよりも、低価格のファーストフードが持てはやされ、高スキルのシェフの需要は減少するだろう。 このことは、マクドナルドの高価格路線が上手くいっていないことにも見てとれる。 

2つの選択肢

このように考えると、エネルギー価格の高騰が今後も続くことを考えれば、非正規雇用は、これからもどんどん増え続け、賃金格差は益々増大すると思われる。 

こういった現象は、世界の先進国に共通であり、解雇規制が緩やかなイギリスでも、パートタイム労働が増加し、正規雇用と非正規雇用の賃金格差は依然として大きい

さて日本が採りうる選択肢として次の2つが考えられるだろう。

一つの選択肢は、解雇規制を緩和して、あとは現状を放置するやり方で、イギリスの事例を見る限り、解雇規制を緩和したとしても、企業が安心してどんどん正規雇用を増やすといったことには、到底なりそうにもない。 この場合、かなりの格差社会になることを覚悟しなくてはならないだろう。  

一方、もう一つの選択肢としては、同一労働同一賃金を徹底し、社会全体で雇用のセーフティネットを拡充し、職業訓練の機会を増やすことで雇用の流動化を図り、公平性を確保するといった北欧のやり方、あるいは週の労働時間を短くするといったワークシェアリング的な方法が考えられる。  

こういったやり方の場合には、当然、社会全体として、かなりの負担を分かち合う必要があるし、移行には相当の時間とコストが掛かるだろう。  

どちらの選択肢も、なかなか大変ではあるが、日本の雇用もどちらの方に舵を切るのか、社会全体として考える時期に来ているように思われる。

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