楽天球団の観客席報道を巡る不思議

2013年08月23日 09:45

昨日は野球ファンとして血沸き肉躍る日。まずはイチロー選手。日米通算4000安打達成、おめでとうございます。そして夜には、元担当記者として愛するロッテが、史上5度目となる1イニング2本の満塁弾など怒涛の猛打で圧勝。首位・楽天が5連敗となり、2位ロッテが2.5ゲーム差と迫った中で、今宵からいよいよ直接対決の3連戦に突入する。パ・リーグの趨勢を決める「天王山」になりそうな気配で目が離せない。


●Kスタ観客席問題の経緯
さて決戦の舞台は楽天の本拠地、クリネックススタジアム(Kスタ)宮城。いま試合以外で注目されているのが観客席の増設問題だ。プロ野球ファン以外の方に簡単に説明しておくと、2004年に楽天が新規参入した際、典型的なおんぼろ地方球場だったスタジアムを大改装し、収容約2万と12球団最少でスタート。その後、増設を続け、今季は約2万3千で開幕。そしてチームが初のリーグ優勝、日本シリーズ進出が現実味を帯び始めると、球団は約2千席の増設を発表した。

観客席増設が注目されるKスタ(wikipediaより、2008年9月)
130823Kスタ

それでも収容人数が12球団最少であることに変わりはない。プレスリリースにもあるように、チケットが買えないことへの不満が出ていたためにシーズン中では異例となる増設となったのだが、楽天に対してファンだけでなくNPBや他球団も注文を付けていた。仮に楽天が日本シリーズ進出となると、主催者がNPBになり、他球場より少ないキャパのままではNPBの収入に関わる。楽天は球界参入時にシリーズを意識して観客席を増やすことを約束しており、10年近く経っても“目標”が達成されないことに不満を抱く意見が球界にある――という構図だ。

●不思議な夕刊フジの楽天批判
そこら辺の詳しい経緯は、夕刊フジのコラムをお読みいただきたい。ところが不思議なのは記事では、楽天サイドを随分と一方的に叩いている。今回の増設について「姑息な手段」と切り捨て、観客席が増えないことを「大罪」とまで断じ、最後にはコミッショナー人事を巡る権力闘争を絡めるなど“印象操作”の思惑すら感じる。

先日、筆者が産経の高校野球の“でがらし”記事を徹底批判し、今度も「産経憎し」で矛先を夕刊フジに向けたのかと思われそうだが、それは違う。筆者は夕刊フジの野球記事の大ファン。独自視点から一般紙やスポーツ紙が書けない話を、ユーモアと品の良い嫌みを交えつつ鋭く踏み込んでおり、読み始めた中学生の頃、ネット裏の事情に興奮したものだ。

ところが最近のアンチ楽天報道には敵愾心むき出しで戸惑いを覚える。たとえば「企業努力を怠ってきた」というくだりがあるが、楽天球団の観客動員は過去3年間、増加している。この間、大幅に観客を減らした球団もある中で、東日本大震災の被災地にあって健闘ではないか。なによりも楽天の球界参入でパ・リーグが活性化し、球界全体にビジネス感覚を植え付けた経緯は、なぜか評価の対象外らしい。

●観客席を増やさないワケ
たしかに、Kスタのキャパは際立って少ない。大都会にある東京ドーム(約4万5千)はともかく、仙台市と人口が近い広島市のマツダスタジアム(約3万3千)と比較しても少ない。では、そもそも、なぜ楽天サイドが観客席を大幅に増やさないのか?他紙を含めてだが、その経営戦略を検証する報道は見かけない。ちなみに球団の創業記である「原点ノート」を紐解くと、三木谷さんは巻末でこう述べている。

私が指示したのは、球場のキャパシティはあまり大きくしないでおこうということです。これはMLBやNFLに学んだことで、なんといってもファンとゲームの「近さ」が臨場感を増してくれます。そして満場感=人出がいっぱいあるというイメージのために、シートを赤くすることも考えました。

ミッキーが参考にしたMLBの事例とは、レッドソックスが典型だ。本拠地フェンウェイ・パークは約3万7千。日本の球場ではヤフオクドーム級だが、ドジャースタジアム(約5万6千)を筆頭に4万台が当たり前のMLBでは、下から数えた方が早い少なさ。ファンの渇望感を巧みに煽り、常に満員にしてMLB随一のプレミアチケットにして人気を持続させている。楽天もそういう営業戦略を参考にしているのだろう。たしかに、東北は春先といえど平日ナイターはクソ寒く、チームが不振になれば観客席は閑古鳥になるリスクはあるし、その場合、「とにかくデカイ球場を作って、人を埋めるんだ!」的な“日本流”でやった場合、プレミアもクソもなくなる。資産稼働的なものも重視するほど、Kスタの観客席の大幅増設には慎重になる――そんな風に見受けるのだが、そのあたりを掘り下げる記事はないのかな。

もちろんメディアとして球団批判をすべき時もある。ノムさんの解任騒動の折、ファンの続投運動を取材しようとしたテレビクルーを退場させたことは、報道の自由の観点から疑義があった。NPBの財政面というポイントもある。ただし、今回の件で言えば、日本的な考えと、MLB的な考えのどちらがいいか悪いかではなく、経営哲学の違いにも思える。夕刊フジは、楽天批判を結論にするにせよ、ファンに判断する材料を提供すべきではないだろうか。

ではでは、今夜の試合が楽しみです。
ちゃおー(^-^ゞ

新田 哲史
Q branch
本を書きたいけど、その機会は永遠になさそうな(泣)
広報コンサルタント/コラムニスト
個人ブログ

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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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