資本主義の行き詰まりと格差の拡大

2013年08月27日 11:28

資本主義は、資本の運動が社会のあらゆる基本原理となり、利潤や余剰価値を生む体制である。20世紀を通して、資本主義は、我々を豊かにしてきたと言えるだろう。 しかし、現在、資本主義は行き詰まり、格差の拡大から人々の不満が鬱積している。 

ここでは、その理由について考えたい。


フロンティアの喪失

資本が利潤や余剰価値を生むためには、基本的には生産の拡大が必要である。しかし、生産の拡大を支えるには、新たな市場、安くて豊富な労働力、安くて豊富な資源といったフロンティアが必要である。

しかし、そういったフロンティアは急速に失われつつある。たとえば、グローバル化により先進国は、東南アジア諸国・ブラジル、東欧への生産拠点移動による生産性向上の恩恵を得てきた。 しかし新興国の賃金が上昇してくると、その旨みは減ってくる。競争に打ち勝つために、より安い人件費を求めようにも、東南アジアから先の新興国は今のところ見つからない。最早、ミャンマーといったところにしかフロンティアはなくなってきた。

そもそも、

生産量 = エネルギー投入量 × エネルギー効率

であるから、エネルギーの投入に限界が生じれば、生産の拡大は行き詰まる。エネルギー投入量は原油価格が1バレル100ドルを超えている現状をみれば分かるように限界がある。生産量の拡大には限界が生じているのだ。エネルギーだけでなく、食糧、金属など一次産品の価格の高騰は、益々顕著になっている(最近、国内でエアコンの室外機の盗難が頻発しているが、これは銅の価格高騰が原因と思われる)。

最後のフロンティアとしての格差の拡大

このように、拡大生産が行き詰まってくると、競争に打ち勝ち、資本が利潤を生むためには、他の企業のシェアを奪うか、コスト、特に人件費をカットするしかなくなってくる。

そのため、先進国においても、大量の低賃金労働者が生み出されることになる。アウトソーシングが容易な現在の世界では、労働者は無力であり、経済成長をしても、大部分の低賃金労働者には、経済成長の果実は殆ど配分されない。 実際、次のビデオを見れば、アメリカの経済成長は、トップ1%のためのものでしかないことは明らかだ。 

つまり、アメリカは国内に第三世界を現出させることで、無理やりフロンティアを作ったのだ。 

貧富の格差の苛烈なことは、このとおりだが、次のグラフは、アメリカ社会の格差が固定化されている状況を表している。

グレート・ギャツビー

The Great Gatsby Curveから転載)

このグラフの横軸はジニ係数、社会における所得分配の不平等さを測る「不平等の尺度」で0から1の間の小数値になり、0ならば完全な所得平等を示し1(1人が富を独占した状態)に近づくほど格差が大きな社会である。アメリカは近年急速に0.4に近づいている。 ジニ係数が0.4を超えると暴動の発生など社会が不安定化するとされており、アメリカの格差拡大は限界に近い。

 一方、縦軸は所得の世代間の弾力性の指標で、これは父親の収入が1%上昇するとその子供の予想される収入にどの程度影響するかを示す。この数値が高いほど格差が次世代に渡り固定化している、すなわち社会的流動性が低くなっていることを示す。

このグラフから、「貧しくても努力すれば巨万の富を得ることも夢ではない」というアメリカンドリームは、完全に失われているといってよい。このように格差が固定化されても、経済が活力を失わないのは、移民社会アメリカの特殊性で、これは、日本、ヨーロッパでは真似できないだろう。 

行き詰まったアメリカの資本主義

アメリカの事例が示すように、経済成長が国民を豊かにするというのは、既に成り立たなくなっている。これは何故だろうか?

これは、資本が利潤や余剰価値を生むためには、自然を含め、どこからか搾取をする必要があるが、こういったフロンティアは、既に見出すことが難しくなっており、搾取の対象が自国の労働者に及んだ、と考えるべきだろう。 

つまり、人員整理や賃下げ、非正規雇用の増加による人件費の抑制以外に、資本に利潤や余剰価値を生ませることができない状態であると考えてよい。

しかし、それでも、投資家の欲望に見合った利潤を投資が上げることができないので、バブルが起き、それが崩壊すれば、金融システム救済のために、巨額の税金が投じられ、富裕層は救済される一方、金融資産をほとんど持たない庶民は、益々貧しくなる。このことはピューリサーチセンターの調査でも裏付けられている。 

このように、バブルの生成と崩壊そのものが、庶民から富を吸い上げるポンプの役割を果たしている。

だが、アメリカのジニ係数は0.4に近付いており、これ以上の格差拡大は極めて困難だ。これ以上、格差が拡大すれば、社会が不安定化するだろう。  

以上のように、既にアメリカの資本主義は行き詰まっているように見える。 

日本の選択

日本は、ジニ係数はドイツ・フランスといった国とほぼ同等で、アメリカのような格差社会ではない。しかし、既に非正規雇用が38.2%という高率に達しており、格差の拡大は今後一層進むと考えられる。

こうした現状を踏まえれば、所得分布を調整する、再配分機能の強化が求められよう。格差の固定化が進めば、社会の活力は失われ、経済は一層衰退するからだ。  

こうした観点から、所得税の課税最低限の引き下げ、累進課税の強化、消費税を25%程度にまで引き上げるといった増税を行うことは、社会の活力維持や持続可能性の観点から望ましい。

なぜなら、移民国家でない日本の社会が活力を維持するには、公助による機会均等の実現が必要だからだ。 

そして、より広く、世界という枠組みでは、新たなフロンティアを失った資本主義は、資源の減耗という物理的な限界から、別のものに変わって行かざるを得ないだろう。

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