学校に通うと貧しくなる

2013年08月29日 08:25

以下は、ある医療法人の求人情報を加工したデータである。年額賃金には、賞与を加えてある。月額も年額も、所定内労働時間(40時間/週)の賃金のみであり、残業手当や退職金は含まれていない。所定内労働時間には、夜勤も含まれる。

一見してわかるのは、養成費用と賃金との間に、何の相関もないことだ。


医療職職種別報酬額

高卒後6年が必要な薬剤師と、集中講習を受ければ、16日で資格取得できるヘルパーとの間の年間賃金の差は、わずかに30万円でしかないし、正看護師と比較すると、逆に、3年で取得できる看護師の方が、6年かかる薬剤師よりも、128万円も多くなっている。逆転してしまっているのだ。

学費を考慮すれば、さらに、看護師と他の医療職との待遇格差は広がる。

看護学校(3年)の学費は、100-300万円であり、特定医療機関への卒後勤務を条件として、返還する必要のない奨学金が用意されている。事実上、タダで看護師になれる。

これに対して、薬剤師の学費は、国立だと300万円だが、定員は非常に少ない。私立だと1500万円が相場である。教育ローンはあるが、看護学校のような、返還不要の奨学金はほとんどない。

PT,OT,STの医療専門学校の学費も高い。3年制で、400-700万円くらいかかる。

逆に、無資格に限りなく近いヘルパーが、意外と高賃金なのに気づく。所定内労働時間だけで、初任給317万円は、賃金デフレ下の日本では、悪くない数字だ。

学費に加えて、学校に通う間の逸失所得(ヘルパーの場合、年間300万円)も考慮すると、看護師以外では、教育投資は回収できない。

学校に通う目的は、将来の賃金を増やすことだけではない。学問自体が目的でもあるし、学校内のコミュニティに参加することが楽しいという人もいるだろう。学歴がほしいだけの人もいる。しかし、そのコストとして、例えば、薬剤師の約3300万円(逸失所得1800万円+学費1500万円)という数字は、いかにも高い。6年制薬科大学は、大金持ちの子弟以外には薦められない。

井上晃宏(医師、薬剤師)

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

関連記事

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑