競技場に立った男 ~ 吉田昌郎 --- 山中 淑雄

2013年08月31日 17:40

アメリカの第26代大統領のセオドール・ローズヴェルトが、1910年4月23日にフランスのソルボンヌ大学で「Citizenship in a Republic」という主題でスピーチした中に、今でもよく引用されるらしい次のような言葉がある。

It is not the critic who counts; not the man who points out how the strong man stumbles, or where the doer of deeds could have done them better. The credit belongs to the man who is actually in the arena, whose face is marred by dust and sweat and blood; who strives valiantly; who errs, who comes short again and again, because there is no effort without error and shortcoming; but who does actually strive to do the deeds; who knows
great enthusiasms, the great devotions; who spends himself in a worthy cause; who at the best knows in the end the triumph of high achievement, and who at the worst, if he fails, at least fails while daring greatly, so that his place shall never be with those cold and timid souls who neither know victory nor defeat.


拙訳だが参考までに下記しておこう。

強い者が如何につまずいたか、あるいは大きな仕事を成し遂げた者がどこでもっとうまくやれたかといったことを指摘するような批評家が偉いわけではない。名声は実際に競技場に立つ男のものである。その顔はほこりと汗と血にまみれ、勇敢に奮闘し、(間違いや後一歩のところで届かないことがあるからこそ努力が生まれるので) 間違いを犯し、何度も何度ももう少しのところで届かないが、最後には偉業を成し遂げる。大いなる熱意と献身を知っており、価値ある目標に全力を尽くす。最善の場合には最終的に偉大なことを成し遂げたという勝利感を得、そして最悪の場合彼が失敗したとしても、それは少なくとも大きな危険を犯した上での失敗であるから、彼の立場は勝利も敗北も知らない薄情で臆病な者たちと一緒になることはありえない。

私はこの引用を Andrew Ross Sorkinの”Too Big to Fail: The Inside Story of How Wall Street and Washington Fought to Save the Financial System–and Themselves” (邦訳は加賀山卓朗訳『リーマン・ショック・コンフィデンシャル』早川書房)で知った。この本はいうまでもなく 2007年に始まった アメリカの金融危機における、ベア・スターンズの破綻から、リーマン・ブラザーズの破綻、そして最終的な公的資金注入までの流れを詳細に追ったノンフィクションである。

アメリカの金融危機に際して指揮官となったのは、ゴールドマンサックスの元CEOのヘンリー・ポールソン財務長官だが、公的資金注入による救済措置の後さまざまな議論が噴出した。JPモルガン・チェースのCEOのジェイミー・ダイモンは、この混乱の時期の大手金融機関の経営者で唯一首が飛ばなかった人物だが、批判にさらされるポールソンにこのローズヴェルトの演説の一節を引用した短い手紙送り、慰めたという。

昨日、東京電力福島第1原発の事故当時の所長だった故吉田昌郎氏(享年58歳)のお別れの会・告別の会が青山葬儀所で開かれた。吉田氏が亡くなった後、なぜか急に自己弁護に力を入れだした菅元首相も参列した。

吉田氏も菅氏も母校の後輩である。吉田氏のご冥福を祈るとともに、私は吉田氏をローズヴェルトのいう「競技場に立った男」として記憶するだろう。そして菅氏は、残念ながら「勝利も敗北も知らない薄情で臆病な者たち」の一人として。

平成25年8月24日

山中 淑雄
元外資系企業社長

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