人はなぜ刺青を入れるのか

アゴラ編集部

もう海水浴シーズンも終わりです。今年の夏は猛暑だったせいで、各ビーチは大賑わいだったでしょう。海へ行くと水着の若い人がたくさんいます。目立つのはタトゥー、つまり刺青をしている人の多さ。黒髪のメイクもおとなしめの女性が、けっこう派手な刺青を入れていたりして驚きます。


それが日本についての著述だとして、日本における刺青の最古の記録は、有名な『魏志倭人伝』にあり、男性は顔面と体に様々な刺青を入れていたらしい。アルプスの氷河で発見された「アイスマン」は5300年前のヨーロッパの男性なんだが、彼も刺青をしていました。刺青を入れるのは苦痛をともないます。なので現代の世界でも、成人になるための「通過儀礼」として刺青を入れさせ、共同体へ受け入れる儀式とするような部族がいるようです。

刺青は、江戸時代に犯罪者を種別するために強制的に入れたように、一度入れると簡単には消えません。犯罪者に刺青を入れるのは、古代中国に「墨(ぼく)」や「黥(げい)」があったとされ、かなり古くから行われていた刑罰です。また、ホウレンソウを食べて元気になるポパイの腕の錨の刺青のように、船乗りたちは海難して水死体になっても身元がわかるような刺青をよく施していました。

また、暴力団やヤクザなど反社会的組織の構成員だという証(あかし)として刺青を入れることもよく行われています。つまり、先史時代からごく普通に我々は刺青を入れていたんだが、やがて刑罰としてネガティブなマーカーとなり、また特定の職業に就く人たちの特殊な風習になり、さらには「極道」として一般社会との訣別を決意させる印章になっていった、というわけです。

一般社会と反社会との敷居やモラルの垣根が低くなり、とりわけ1970年代の世界的な反体制運動の盛り上がりからヒップホップムーブメントにいたる流れの中で、社会に対する批判を意図した刺青が一部の若者たちの間でファッションとして流行っていきます。それまで眉をひそめられる存在だった刺青が、カッコ良くてオシャレな行為になり、同じ価値観を共有する人たちの感覚を象徴するアイテムになっていく。ハリウッドスターやヒップホップ歌手、DJ、モデルら、ファッションアイコンたちも普通に刺青をし、それを隠さないようになっていきました。

その一方で、まだまだ社会には、刺青に対する偏見や制限が多く残っています。たとえば、温泉やプール、サウナ、スポーツジムといった肌を露出する公共施設では、刺青をしていると入場を断られることがあります。また、刺青の顔料に含まれている物質が火傷などを引き起こす恐れがあるため、医療用MRI(核磁気共鳴画像法)での検査ができない、という話もあります。

さらに、刺青師は免許制度もないため、知識も技術もない人が素人考えで友人などに彫ってしまう、ということをよく聞きます。その際、衛生的に危険性が高く、C型肝炎などにかかってしまうリスクも無視できません。日本での刺青は医師免許を持っている人しかできない、ということをよく知っておいたほうがいいでしょう。たとえ刺青師の看板を掲げていても、医師免許なく刺青を施せば医師法違反に問われます。

もちろん、一度、刺青を入れてしまえば、簡単に消し去ることは難しい。現在のどんな方法でも皮膚に深刻なダメージが残ってしまうでしょう。ある刺青師は、特に若い女性に対して訪ねて来てすぐに彫ることはせず、必ずよく考えてからの再訪をうながすそうです。刺青を自己主張や自己表現、ファッションの一種だと考えれば、ネガティブなことばかりではありませんが、よくよく考えてから入れたほうがいいでしょう。

表題記事では、英国の音楽アーティスト、シェリル・コールが背中の下部からヒップにかけてドデカい刺青を入れた、と報じています。彼女、人気ポップグループ、ガールズ・アラウドのメンバーだったんだが、グループが活動休止後、一人だけ人気者になった。英国プレミアリーグのサッカー選手、名左サイドバックとして名高いアシュリー・コールの元夫人。この刺青についてシェリル・コールのファンの中には、自分の体を「自ら台無しにした」と批判的な声が多いようです。

TechinsightJapan
シェリル・コール、お尻全体に毒々しくタトゥーを彫り込む! ファンはショック。


Sprayable Energy provides a caffeine hit through the skin
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スプーンが少女を救う!イギリスが抱える”強制結婚”問題
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フィボナッチ数の魅力 ─ 自然界に現れる数列
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人間がおもしろいのは、こうしたことを発見して喜ぶからです。我々もある特別な数列によって形作られている。らせん、黄金比、いろいろと関係しています。右巻きのらせんと左巻きのらせんで、開放と集中というようにそれぞれ感じ方が違う、という話もある。動画では巻き貝やヒマワリとともにトンボの羽や複眼も紹介。法則なので当然なんだろうが、生命進化の過程で試行錯誤の末、到達した世界なんでしょう。


アゴラ編集部:石田 雅彦