ホームグロウン・テロリストの脅威 --- 長谷川 良

2013年09月12日 17:03

オーストリア内務省の「連邦憲法擁護・テロ対策局」(BVT)は10日、「2013年憲法擁護報告書」を発表した。全89ページの報告書の中で最も注目される内容は、オーストリアに居住するイスラム教活動家約50人がシリア内戦に参戦しているということだ。彼らの中には戦死した者もいるが、その身元確認はできていない。一部はシリアのイスラム過激派グループと共にアサド政権打倒で戦闘した後、オーストリアに帰国しているという。

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▲2013年連邦憲法擁護報告書」を発表するBVTのペーター・グリドリング局長(左)=オーストリア内務省提供


BVTのペーター・グリドリング局長は「シリア参戦者のうち、9人が帰国したことを確認している。彼らの動向を監視しているが、目下のところ、危険な兆候はない」という。

同局長は「シリア参戦者は戦地間の地理的、通信活動の掛け橋の役割を果たしている。国内のイスラム教徒のリクルートも考えられる」という。そのうえ、「オーストリア政府は先日、500人のシリア難民の受け入れを表明したが、彼らの身元確認も行う考えだ」と指摘し、難民の名目でイスラム過激派が侵入することを警戒しているわけだ。

同国では2011年6月15日、ウィーン国際空港からパキスタンに飛び立とうとしていた3人のテロ容疑者が逮捕されたことがある。また、オーストリア人のテロ容疑者が11年5月16日、アフガニスタンのテロ訓練キャンプから帰国したところを逮捕されている。BVT関係者によると、アフガンやソマリアでテロ訓練を受けているオーストリア人の数は年々、増加している。彼らの特長は移住者家庭の2世、3世たちだ。

西側情報機関関係者によると、欧州で生まれ、成長したイスラム教徒が自身のイスラム教の教えを絶対視し、欧米民主主義の価値観を拒否、国際テログループの手足となり、財政支援する過激なイスラム主義者(通称・ホームグロウン・テロリスト)の脅威が現実味を帯びてきている。オーストリアも例外ではないわけだ。

一方、極右過激派の動向については、昨年の極右過激的、民族主義的、イスラム排斥的言動で告訴された件数は519件で前年比40件増加。検挙率は前年の50・3%から54・1%に上昇した。BVT関係者によると、「極右過激派の言動はわが国の民主主義、公共治安を脅かすものではない」という。一方、極左過激派活動では、昨年の告訴件数は142件で前年の93件から増加。その検挙率は26・2%(前年18・3%)だった。

米国家安全保障局(NSA)の情報活動に関連して、ウィーン市内の米国大使館所属の建物内に情報収集関連施設があるという報道については、「公に発表されたさまざまな情報の翻訳、分析を進めているだけで、盗聴などの情報活動はしていないだろう」という。

米中央情報局(CIA)元技術助手のエドワード・スノーデン氏(30)がNSAの情報収集活動の実情を暴露し、欧州大使館でも独自の情報収集を行っていると報道されて以来、オーストリアでもNSAの活動が大きな話題となっている。

同報告書によると、「オーストリアは冷戦時代から外国のスパイ合戦の拠点だったが、その状況は今日も変わらない」と警告している。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2013年9月12日の記事を転載させていただきました。
オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。


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