失敗続きのオバマ大統領 --- 岡本 裕明

アゴラ

北米の日曜日の午後遅くのニュースに私も思わず、「えっ」と手が止まりました。

ラリー・サマーズ氏、FRB議長の候補を辞退

私は9月15日付のこのブログで「サマーズ氏のFRBはどうなるのだろう」という内容で記事を書かせていただいたばかりなのですが、そのバックボーンはその前日の日経の世界スクープとされた「オバマ大統領がサマーズ氏をFRB議長へ推挙する」という自信満々の記事でした。記事は「関係筋によると」という表現で出所はわかりませんが、日経としては相当の裏づけがあっての記事だったと思っております。


そして、その記事は翌日、世界を駆け巡りました。「日本のメディアによると…」という速報は私も日経、やるな、と思ったぐらいです。

ではこれは日経の誤報だったのでしょうか? 私はそう簡単な筋書きではない気がします。

このニュースが世界をめぐった際、当然、ラリー・サマーズ氏もその話を聞いたのだろうと思います。そして、アメリカの記者などから執拗にこの真偽の確認を迫られたような気がします。サマーズ氏はそれまでに大統領に何度も会いながらその話をしているはずですから後は本人次第でした。そして選んだのは「辞退」でそれをこのタイミングで公表したというのが流れではないでしょうか?

辞退理由はメディアの報道の通りだろうと思います。彼のクリントン政権時代の金融規制緩和の問題、および、ハーバード大学学長時代の発言などでパブリック受けが悪いことを自覚した上でFRBのトップというポジションにもっとも必要とされている「人格」について自己否定したのでしょうか?

“I have reluctantly concluded that any possible confirmation process for me would be acrimonious and would not serve the interests of the Federal Reserve, the administration, or ultimately, the interests of the nation’s ongoing economic recovery,”

オバマ大統領にこのような書簡を送ったのであります。

さて、ここで頭を抱えたのはオバマ大統領でしょう。

オバマ大統領がサマーズ氏を指名することで期待をしていたとしたら大統領はまたしてもやらかしてしまった、ということになりそうです。事実、アメリカのメディアではオバマ大統領のFRB議長のノミネートのプロセスを間違えた、という批判記事が既にあがっています。先日のシリア問題で批判の声が高まっている中、まさにダブルパンチとなる「失策」となってしまいました。

この二連続のエラーはアメリカの景気が回復過程にある中でオバマ氏のポピュラリティに大いに疑問を投げかけることになり、共和党の勢いは一気に増す公算があります。折りしも債務上限問題が10月の中心的課題となる見込みの中、共和党の押し込みに大して劣勢の民主党がどうディフェンスに回るか、という展開が想定されそうです。

一方、市場はわがままでラリー・サマーズ氏が辞退したことを受け、金融緩和がもしかしたら長引くのではないか、という期待感が一気に高まり、株と金は高くなっています。FRBの議長候補のNO.1はイェレン副議長に傾く公算はあります。彼女はオバマアドミニストレーションとはあまりクロースな関係にはない、とされていますが、逆に今となってはそれが幸いする可能性はあります。

オバマ氏としてはすっかりシナリオが崩れてしまい、自分のペースで動けない自分を責めている日々なのでしょうか?

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年9月17日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。