次のネット選挙はもう始まっている~その2(書評)

2013年09月20日 07:00

やっとネット選挙の話題を書こう。ちなみに「その1」はこちら。で、今回は連載再開にあたり、書評にする。ただし私のバイアスがかかりまくりですが・・・。


さて、初のネット選挙を事後検証する本が、参院選終了から1カ月を経て出版され始めた。きょう20日には、西田亮介さんの「ネット選挙とデジタル・デモクラシー」(NHK出版)が出るらしいので、密かに献本を待っているのだが(笑……西田さんお願い!書評書きます)、その前に、高橋茂さんの「マスコミが伝えないネット選挙の真相」(双葉新書)を取り上げる。

130920ネット選挙書評

●業者ならではの目線
高橋さんは通称ヨロンさん。社長を務める世論社は、コラムニスト勝谷誠彦さんの有料制メール日記を配信している会社としてご存じの方も多いだろう。著名人のメルマガビジネスで成功した草分けだ。そしてもう一つの異名が「デジタル軍師」。もともとは政治と縁遠い電子楽器のエンジニアだったそうだが、2000年の長野県知事選で初当選した田中康夫氏の選挙サポートをしたのを機に政治と関わることに。豊富なネットの知識を生かして、政治家や政治団体のコンサルティングをしたり、選挙情報データサイト「ザ選挙」の運営をしたりしている。

高橋さんの経歴をちょっと細かく書いたのは理由がある。この本を特徴づける「視座」が理由だ。ネット選挙関連本といえば、公選法改正前に発売された津田大介さんの「ウェブで政治を動かす」、前述の西田さんの「ネット選挙 解禁がもたらす日本社会の変容」が知られているが、津田さんはジャーナリスト、西田さんは学者だ。時には現場(津田さんは取材、西田さんはフィールドワーク)目線に立つことはあれど、職業柄どうしても歴史的な経緯や社会的意義の考察に力点が置かれるので、大所高所のお話も増えてくる。オープンガバメントなどという、現時点ではユートピアに見える構想を声高に語っているあたりが象徴的だ。

しかし、ヨロンさんは10数年、選挙の表も裏も知り尽くした業者だ。選挙事務所の内部と候補者の間近に視座があるので、津田さんたちと同じ話題を取り上げたとしても見方が微妙に違う。参院選における各党や候補者の動きなどの振り返りをするにも、例えば私も当事者として苦しめられた鈴木寛さんを巡るデマの話。ヨロンさんは、鈴木陣営がデマへの反論を動画などで展開した事例などを挙げながら、「今後の選挙においても候補者はデマに正面から向き合うべきだと思う」と指摘する。広報の専門家によっては意見が割れそうだが、技術的な知識と長年の経験に裏付けられた進言は、やはり記者や学者と違う重みがある。

●理想への冷めた見方
その意味で極めつけは、「候補者のネット選挙戦略」の章。政治家やこれから選挙に出る方にとっては参考に値する内容が雄弁に語られている。写真の撮り方、選挙期間中のアクセス数の動きといった実践的な中身もさることながら、傾聴に値する苦言がある。とかくネット選挙対策というとテクニカルなことに目が向きがちな政治家・候補者に対し、日頃の政治活動との結びつけを最も強調しているあたりは、目下、ネット選挙で初めてとなる統一地方選へ浮き足気味の地方議員にとって良い戒めになるだろう。そのあたり、また連載で次回以降書いていく。

そして、ネット選挙導入で期待されたネット上の政策論議、候補者と有権者とのネット上の質疑応答の活発化についてもヨロンさんは、現実主義者らしく実に冷めた見方だ。本では、大勝した自民党が、選挙が始まると政策を語るのを抑制した経緯を振り返り、有権者に対し、次のように指摘する。

「細かな政策的な論議は選挙前にやっておく」そして「選挙期間中は細かな政策の論議はしない」「差し障りのない選挙活動だけを流す」、これが今後、政党のソーシャルメディアの使い方のスタンダードになっていくだろう。

この夏、私も実際に選挙に携わってみて有権者とネット上で政策論議をするのは、時間的・物理的に容易ではない現実に向き合った。それでも鈴木さんは、医師の有権者からの疾病予防対策に関する専門的な質問に対し、Facebookノートで長文の返答をするなど極力対応していた。私は業者の立場でもあるけれど、ヨロンさんと異なり、もう少し理想を追いかけてみたいとも思う。

●最後に1点だけ・・・
「マスコミが伝えないネット選挙の真相」。今夏のネット選挙の動きを最も網羅し、最もまとまった本です。ただし、1点だけ間違いあり。66ページで「すずかんVSメロリンQ」のネットバトルを取り上げたくだりで、互いに批判を行ったのと同時期にネット上で鈴木さんを誹謗するデマが流れ始めたとの記述があるが、先にデマが流れ、その後バトルに発展したというのが元広報担当としての見解です、ヨロンさん。

さて本を読んだ後、自分の経験に加味して、維新の会と大阪都構想の生死を決める堺市長選を注視する。ネット選挙の視点からみると色々面白いことが見えてくるもので…。
それについてはまた今度。ちゃおー(^-^ゞ

新田 哲史
Q branch
広報コンサルタント/コラムニスト
個人ブログ

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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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