QE縮小先送りで、Fedは政治的波乱のタネを蒔いたか --- 安田 佐和子

アゴラ

昨日の衝撃からさめやらず……。思わず、FOMC前にNY市場関係者の方からいただいたリストを振り返ってしまう筆者です。こうしてみると、いかにマーケットがQEを予想していたかが分かりますね。

ゴールドマン・サックス→100億ドル、米国債のみ

モルガン・スタンレー→100億ドル、米国債のみ

ソシエテ・ジェネラル→100億ドル、米国債のみ

UBS→100億ドル、米国債 70億ドル、MBS 30億ドル

ドイツ銀行→150億ドル、米国債 100億ドル、MBS 50億ドル

JP モルガン→150億ドル、米国債 100億ドル、MBS 50億ドル

クレディ・スイス→200億ドル、米国債 100億ドル、MBS 100億ドル

バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ→100億~150億ドル、米国債とMBSで等分

バークレイズ→150億ドル、米国債とMBSで等分

CNBCは一夜明けてからも、朝からFOMCのQE縮小先送りについて盛り上がってましたよ。同局のFed番であるスティーブ・リースマンが登場し、FOMC声明文に基づき見送りの理由を3点を挙げてました。

・成長と雇用の回復ペースに対する懸念

・金利の上昇

・財政引き締め、および債務上限引き上げ交渉の難航と政府機関の閉鎖

反対に、QE先送りのダメージとして

・市場の信頼感喪失

・Fedの入札に応じないリスク

を提示してましたね。ダウ平均とS&P500が過去最高値を更新し、米10年債利回りが約2年ぶりに3%に乗せた後で頭打ちとなってますし、金融機関が入札にそっぽを向くとは思われませんが・・。

個人的には、デュケーヌ・キャピタルの創立者スタンリー・ドラッケンミラー氏がCNBCで朝から「Fedはトリクルダウン経済を導入してるけれども、5年にわたって富裕層から中低所得者層へ富は分配されていないね」と皮肉交じりに話していた点が興味深かった。金融危機の回復過程でアメリカの富の95%を1%の超富裕層が占めるまでに至り、同氏も恩恵をこうむったはずなのに、諸手を上げて歓迎してないんです。

ドラッケンミラーさん、Fedの決定に辛口な言葉を投げかけます。

stanley

広告クリエイターの筆者の家人ですら、前日の決定を受け「え、まだ毎月850億ドルもバラまいてるの?インフレやばいんじゃない?」なんて言い出し始めてます。今回のFOMC予想を外したエコノミスト諸氏だけでなく、著名人から一般人まで疑問を投げかけているのが気掛かりなんですよねぇ・・。

量的緩和(QE)の継続には、共和党陣営はインフレ上昇を始め副作用のリスクを警戒し反対していました。2014年の中間選挙を控えますし、債務上限引き上げ交渉がFRB議長の後任人事を絡めもつれにもつれる事態が考えられます。共和党はすでに債務上限引き上げ交渉にオバマケアを人質に取り始めましたし、10月にかけ政治要因で再び相場が荒れ模様となるシナリオも想定しておきたいところ。FOMC声明文で財政引き締めに懸念を示したFed、QE先送りで政治不安にタネを蒔くという結果にならなければよいのですが……。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2013年9月20日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。