「キリンが首を長くした方法」に自己成長のヒントがある --- 内藤 忍

アゴラ

キリンの首はなぜ長くなったのでしょうか? 生物の進化論の話ですから、私の専門外のエリアですが、どうやら突然変異によって首長のキリンが生まれ、それが生き残っていく過程で長くなっていったというのが定説のようです。

キリンの首が長くなったのは、たまたまなのかもしれません。しかし、このキリンの話は、突然変異を意識的に作り出すことが、自分の活動の枠を広げるのに重要であることを示唆していると思います。


日本人の思考法は「職人型」と言われます。与えられた環境の中で、決められたことをきちんとこなす技を磨いていく。以前、日本製のゲーム機の部品の精度が、アメリカのNASAの宇宙飛行に使う部品より精度が高いという話を聞いたことがあります。

1つのことをコツコツと改善していって、究極まで追求する。これが日本の得意技なのです。

しかし、別の考え方もあります。以前アメリカに留学した時に驚いたのは、学生が自分の専門科目をコロコロと変えていることでした。エンジニアリングをやっていたのにビジネススクールに入る、ビジネススクールを卒業してアウトドアのインストラクターを始める、医者が経営学を勉強しにやってくる……。当時の日本では考えにくいキャリアが珍しくなかったのです。

一貫性が無いといえば、そうも言えますが、逆に異分野に挑戦することで、「突然変異」の可能性を高められます。決まった枠の中で究極を目指す場合、限界は100点満点です。しかし、その枠を超えたまったく新しい領域にブレイクスルーすれば、200点、300点を得ることができるかもしれないのです。

キリンのように他の動物には無い、独自の進化を遂げるためには、この「突然変異」を意識的に作り出すことが大切なように思います。日々やっていることを改善していくことも重要ですが、その延長線上で職人芸を極めても限界がいつかやってくるからです。

今やっていることを、さらに少しでも改善するという努力を否定するのではなく、その作業だけをやって満足しているのではどこかで成長が止まってしまう危険があるということです。現状の枠の中にいると、技術進歩によって、突然陳腐化してしまい努力がムダになってしまうこともあるかもしれません。

突然変異には、異質なものとの意識的なぶつかり合いがカタリスト(触媒)になると思います。違うエリアの人、違う世代の人、違う考え方の人、違う国の人……。多様性を受け入れ、そこに自分の身を置くことで突然変異の可能性は高まります。意識的にそんな多様性に触れることで、自分もキリンのように突然変異することの必要性を忘れないようにしたいと思います。

編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2013年9月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。