看護師は激務ではない

2013年09月28日 11:18

「普通の能力の人が、大した努力も教育もなしで就ける職業で一番給与が高いのは看護師だよ」と言うと、オウム返しに「でも看護って激務なんでしょう?」と言われる。

じゃあ、どのへんが激務なのかと聞いても、「夜勤があったり長時間労働だから」「肉体労働だから」という答えしか返ってこないのだが、そのどちらも間違っている。


夜勤については、週40時間の制限内で行われている。三交代の(日勤→深夜勤)とか、(深夜勤→準夜勤)みたいなシフトだと辛いが、最近増えてきた二交代だと、まとまった休みが取れる。

医療業界以外でも、夜勤はある。夜勤の方が短時間で金が稼げるので、夜勤を専業にする人もいる。夜勤には法規制があり、それらが守られている限りは、大して健康被害は発生しない。警備員や運送業や建設業や24時間スーパーが激務なんて話はないのと同様、看護の夜勤も激務ではない。

「肉体労働だから激務」というのも、大して根拠がない。患者の体位変換や移動に力が要ることは事実だが、それって、農林水産業や建設業や運送業や小売の荷運びよりも高負荷なんだろうか。もっと負荷の高い肉体労働はいくらでもある。

看護師には女性が多いので、「母性保護」という問題があるが、妊娠したら業務軽減を申し出る権利はある(労基法65条、66条)。しかし、看護師側が申し出ないので、妊婦にも夜勤が割り当てられる。「申し出たら」という留保をなくして夜勤制限を強制にすれば、金を稼ぎたい労働者の「働く権利」とぶつかるだろう。これも、看護師だけの問題ではなく、夜勤をする女性すべてに共通する問題であり、看護師が特別に過酷とも言えない。

結局、看護師労働問題とは、しんぶん赤旗の紙面のように、経営側の事情を一切考えなくていい労働者が、互いに矛盾する主張を言いたい放題言っているだけだ。

やたらと激務を喧伝する看護協会も困ったものだと思う。労働闘争的には正しい戦略だが、その結果、新規参入が少なくて、看護師の水準が低くなっている。

看護業界には、月8回も夜勤をこなす激務の職場もあるが、月4回かそれ以下というところもある。忙しい職場も、のんびりした職場も、給与はほとんど変わらない。週3日だけ、昼間だけのパートタイム勤務を選ぶこともできる。パートタイムでも時給は2000円もある。職場を選ぶ自由がある以上、ブラック企業なんて成立しない。

毎年15%の看護師が退職するというデータがあるが、15%の退職率は多くない。3年で半分が辞めるのはむしろ普通だ。常に不足していて、転職市場が整備されている看護師の場合は、退職しても、すぐに次の職場が見つかる。看護師は、決して「使い捨て」ではない。

新卒未経験の人が、週40時間労働で年収500万円ももらえて、高齢になっても働ける職種なんて、いまどき看護師ぐらいしかないのだから、もっと新規参入者が増えてほしいと思う。

井上晃宏 医師(産業医)、薬剤師

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