「下克上」にも程があるのでは?

2013年10月15日 07:00

プロ野球のクライマックスシリーズ(CS)は、セ・パともに3位チームが突破する“番狂わせ”で滑り出した。パのロッテは2010年に史上初めて3位から頂点に立った下克上日本一の元祖。当時の担当記者として改めてチームに息づく短期決戦巧者ぶりを見せつけられた思いだった。ただ世間の注目はセの広島の方に集まっているみたいですね。


●勝率5割未満の日本一っていいの?
筆者は以前、カープが15年連続Bクラスなら、アゴラやBLOGOSで、カープ球団の身売りを提案する記事を書こうと思っていたのだが、今季は終わってみれば16年ぶりのAクラス入り、初のCS進出という話題性は勿論のこと、巷でカープファンが急増中というのだ。先日、NHKのニュースウォッチ9で特集が放映されていた際に知ったのですが、カープの応援は目下、「社会現象」らしい。巨人や阪神のような資金力のある強豪チームに挑む弱者という構図が、広島とゆかりのない「にわかファン」の心を魅了し、日本人特有の判官びいき的なマインドを刺激したというのだ。半信半疑で見ていたのだが、甲子園球場の左翼席の過半を真っ赤に染める一団をテレビで見てやっと実感。阪神ファンならずとも、甲子園の阪神戦でビジターチームがあれほどの存在感を示す光景に驚いた方は多いはず。

●就任4年目で悲願のAクラス入りに導いた広島・野村監督(wikipediaより)
131015下克上

ただ、冷や水をかけるようで恐縮なのだが、カープが仮にこの後、巨人を撃破してさらに日本シリーズのタイトルも奪取してしまったとしよう。釈然としない思いがどうしても残る。レギュラーシーズンの戦績ではカープは借金3だった(ロッテは同じ3位でも一応、貯金6)。もしカープがセで初の下克上を達成となれば、日本シリーズのチャンピオンフラッグはシーズンで負け越したチームの手に渡るのだ。勝率5割に満たないチームが巨人の栄光のV9、80年代に鉄壁の強さを誇った西武の黄金時代などと記録上は同列の「シリーズ制覇」。他球団のオールドファンはブランドを毀損されたような不快感を覚えるかもしれない。いや、広島ファンの皆さんも「江夏の21球」で勝ち取った日本一と同列に扱うことを素直に喜べるのか。

●制度設計の不備とカイゼン先送り
こうした疑問を呈させる状況を引き起こした要因を3点指摘する。まずはCSの制度設計をした時点で甘さがあった点。おそらく3位チームが5割を切る想定が不十分だった。例年、首位が独走しても3位は、5割は何とかキープできることが多いが、交流戦導入後にパがセを圧倒し続ける事態が続いてセ球団の負けが込んでしまった。2010年は上位6球団をパが独占するような格差は予想外だったろう。

2点目は「経営戦略の揺らぎ」。野球界でも5割未満のチームが日本一になる可能性を意識していなかったわけではない。2009年にもセではヤクルトが勝率5割に満たずに3位に入り(71勝72敗1分)、セの理事会はその年の秋、2位チームに1勝のアドバンテージを与えるなどの方策も検討していた。しかし結局は棚上げされ、改善策は放置されたままだ。日本一の品格を重視するほど上位にアドバンテージを与える方策を考える。いっそのこと3位が5割未満ならCS出場権を与えないという選択肢もあるだろう。ところが興行面でCSは実に魅力的だ。毎試合ほぼ満員が見込めるので球団としてはおいしい「臨時収入」になる。もし出場権没収措置となれば、2位球団は最低2試合の売上げが消えるだけではない。3位チームもレギュラーシーズン終盤に5割に届かない事態が確定した時点で、残り試合を観に行かなくなる。

●経営メッセージを求む
3点目は改革の先送りをしてきた球界上層部の経営判断。一般のビジネスでも事業計画に狂いが生じたならすみやかに見直しをして、改善策を断行できるかが問われるように、CS制度に疑義が生じた時点で各球団がきちんと詰めるべきだったし、その動きが鈍いようならコミッショナーがリーダーシップを発揮して指導しておくべきだったのだ。統一球問題やWBCの監督人選ばかりがクローズアップされるが、その下のレイヤーの小さな経営課題を普段から解消しようとしていない積み重ねが結局NPBのガバナンスの迷走につながっているのではないのか。CS制度で再び沸いた下克上の疑義はその一端のような印象を持つ。もし「勝率5割に届かなくても立派な日本一だ」というなら、興行性に基づいた一つの見識として明確に打ち出してほしい。どんな経営判断にせよ、新しいコミッショナーはそういう理念やメッセージ性のある方を望みたい。

なお、筆者はCS制度を否定はしない。前後期制で単純に王者を決めた往年のパ・リーグのプレーオフ制度よりは完成度は高い。長期戦と短期戦の魅力を融合した年間王者の決め方には一定の評価をしている。もちろん、選手や首脳陣、裏方さんなど現場は与えられた条件で死力を尽くしている。もし野村監督が日本一になって球界最高賞の正力賞をもらったとしても(たぶん今年はマー君が受賞するだろうけど)、現行ルールで認められた成果として誓ってリスペクトはする。カープファンのことも祝福する。

ただ、やっぱり年間で負け越しチームが日本一なんておかしいと思いませんか?
では、今日はこんなところで。ちゃおー(^-^ゞ

【ご参考までに関連記事】
(The PAGE)「CS 3位チームの”下克上”はあり?」
(拙稿)「次のコミッショナーは誰がいい?」

新田 哲史
Q branch
楽天―ロッテ戦を仙台へ観に行きたいと思っている広報コンサルタント/コラムニスト
個人ブログ

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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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