ロッドマン氏は北朝鮮のタブーを破った --- 長谷川 良

2013年10月20日 17:00

米プロバスケットボールNBAの元スター選手デニス・ロッドマン氏は9月3日、平壌を再訪したが、同氏は先日、英大衆紙サンとのインタビューで北朝鮮の最高指導者、金正恩第1書記の贅沢な生活ぶりを暴露する発言をしてしまった。ロッドマン氏は多分、何をしたかのか理解できないだろうが、同氏の発言は金正恩氏を激怒させたことは間違いないだろう。


ロッドマン氏によると、金正恩氏はハワイのような島を保有し、そこでは豪華なヨット、水上バイク、乗馬など楽しみ、「世界のどんな金持ちも驚くほどの贅沢な生活をしている」という。

金ファミリーの生活ぶりは最高の国家機密に属する。それを他言したり、メディアに流した場合、その人物は北の最高指導者を汚した人物とみられ、敵視されるか、最悪の場合、殺害される。実際、北の特殊工作員がソウルで亡命(1982年)中の李韓永氏(故金正日総書記の元妻・成恵琳の実姉の息子)を暗殺している。故金正日総書記の個人料理人だった藤本健二氏が長い間、平壌に置いてきた妻子と再会できなかったのは、同氏が日本で金ファミリーの生活ぶりを暴露した本「金正日の料理人」を出版したからだ。北側は裏切り行為と受け取ったのは当然だ。

ロッドマン氏が今年3月、平壌を初訪問した時、金第1書記は同氏と一緒にバスケット試合を観戦し、抱き合って大喜びだった。北の国営放送がバスケットボールの試合を放送し、ロッドマン氏を映したが、正恩氏が念願のスターに会えて有頂天の姿が印象的だった。9月の訪問では、金正恩氏はロッドマン氏を島に案内し、その生活ぶりを見せてしまったのだ。ロッドマン氏は金ファミリーの余りにも贅沢な生活ぶりに驚いたわけだ。だから、サン紙とのインタビューで自然にその話が飛び出したのだろう。しかし、この発言はロッドマン氏と金正恩氏の蜜月関係を決定的に破壊したとしても不思議ではない。

ロッドマン氏は先月9日、帰国後の記者会見で「平壌で来年1月、米朝両国チームによるバスケットボール大会を行う」と発表した。開催日は金正恩氏の誕生日の1月8日前後という。同時に、同氏は北のナショナル・チームを指導するため12月にも平壌を再度訪ねるという。果たして、米朝親善バスケットボール試合が開催できるだろうか。

ところで、ロッドマン氏が金ファミリーの生活ぶりを暴露したが、問題の発端は金正恩氏の不注意な言動にあったことは間違いない。当方の推測だが、子供時代の英雄に会った嬉しさのあまり、警戒心が揺るぎ、見せてはならない部分まで披露してしまったのではないか。もし、その推測が当たっているとすれば、「金正恩氏は北の最高指導者としては未熟だ」と批判されても弁解できないだろう。若い正恩氏の日頃の行動を苦々しく感じてきた人民軍幹部たちからは「そら、みたことか」といった呟きが聞かれたとしてもこれまた不思議ではない。

当方は1990年代、国際原子力機関(IAEA)に勤務していた北朝鮮出身の金石季査察官とよく会った。金査察官は核問題では結構、いろいろと教えてくれたが、当方がある日、金ファミリーのことを聞いた。すると、金査察官は「そのような質問はしないでほしい」と怒り出した。金ファミリーのことはタブーなのだ。語ることも聞くことも出来ないテーマだ、ということをその時、学んだ。

果たして、金正恩氏のヒーロー、ロッドマン氏は北朝鮮を再度、訪問できるだろうか。出来たとしても、正恩氏が3月と9月に会った時に見せたような歓迎を示さなかったとしても、ロッドマン氏は決してビックリしてはならない。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2013年10月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。


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