ぴあが「ももクロ」本で詐欺まがい

2013年10月21日 12:33

江戸中期の思想家、石田梅岩は、商人の得た利益は社会の「宝」と説きました。その思想の根幹は「足るを知る」と言われ、いかに商売で成功し、富を築いても、奢侈淫佚でそれを失えば元も子もない、という経験則から、三井や鴻池などの江戸商家の質素倹約を旨とする倫理観がつちかわれた、とされています。コンプライアンスやCSRなどと言っても、企業というのはしょせんは営利追求組織。しかし、損して得取れ、と言うように、目先の利益にくらんで顧客や取引先などとの信頼関係を壊しては長期的な企業の存続など危ういでしょう。


出版社の「ぴあ」が、10月17日、7月に出した人気アイドルグループ「ももいろクローバーZ」のムック本について、印刷物数を虚偽報告し、所属事務所の「スターダストプロモーション」に対し、本来より少ない印税を支払っていた、と発表したそうです。ムック本というのは、雑誌のような返本期限を回避させつつ、安い制作費で単価を安くさせ、在庫を確保しながら長く流通させることができる書籍扱いのISBNコードで出す雑誌形態の出版物のこと。ぴあ側は事務所に対し、刷り部数を6万部と報告していたそうです。しかし、実際の印刷部数は10万部だったらしい。内部告発によって明らかになった、とのことなんだが、ぴあは4万部分の印税をネコババしていた、というわけです。

印税契約の場合、出版後にどれだけ返本が来ようが刷り部数でカウントするのが一般的だったんだが、昨今の出版不況で実売部数でカウントするケースも増えています。ぴあとスターダストプロモーションの場合、実際に刷った部数、印刷部数での契約だったんでしょう。しかし、印刷した部数は出版社か印刷会社でなければなかなかわかりません。著者や契約者は調べようがなく、出版社側の報告を鵜呑みにするしかない。出版社によっては印刷会社からの部数証明などを出すこともありますが、両社がツルんでたらどうしようもない。いくら契約書を交わしても、これをやられたらお手上げです。DNPや凸版印刷などの大手印刷会社は、左前になった出版社へ出資したり援助したりすることも多く「同じ穴の狢」化しています。

ぴあは「業界のタブー」を冒したのでしょうか。今回の事件は、出版界においては「常態」であり氷山の一角なのかもしれません。印刷部数に対する出版社と著者の間の信頼関係は、これまで築かれてきた暗黙の了解における危ういものだった、というわけです。

立場の強弱で言えば、よほどの大作家でない限り、版元に対して著作者側は限りなく弱い。印刷部数に疑問を抱いたり、それを口に出そうモノなら「そんなうるさい作家はゴメン」とばかり、遠ざけられたり切られてしまうでしょう。しかし、それは卵を産むガチョウを食べてしまうことにほかならない。

ぴあは内部処分で社長を減給し、責任者の取締役を降格させたようです。一方、スターダストプロモーション側は、内部告発者に配慮を示すだけで特に事を荒立てるつもりはなさそう。しかし、虚偽の印刷部数報告は「詐欺」であり、れっきとした犯罪です。法的な責任はまぬがれない。もしかすると、人気タレントを抱える大手芸能プロダクションは自衛策として、今後、編集者を集めて自前の出版社を興し、自前の印刷屋で刷り始めるかもしれません。今回の事件による出版界へ与える影響は予想以上に大きいでしょう。

Webooks Log
『ぴあ』それをやっちゃぁおしめぇよ…(出版社が絶対やってはならないこと)


医療に従事しない医師免許取得者はこれからの社会にとって極めて重要な人々
生きるすべ IKIRU-SUBE 柳田充弘ブログ
医薬関連の研究開発については、医師免許がないとほとんどなにもできない、と書いているブログです。医学部を出て基礎研究へ進路をとる医師は少ない。もちろん医師としての医療活動で社会貢献したい、という人がほとんどだと思うんだが、研究者はあまり「儲からない」から、という動機も無視できないでしょう。せっかく大金を払い、苦労して医学部を出たのに、どうしてそれ以後もコツコツ地道な研究を続け、清貧に耐えなければならないのか、と考える人も多いわけです。社会や大学、指導教官などが、医師資格を持った者の社会的な使命の一つに、研究活動や医学の知識を活かした別分野での活動があることの重要性を日常的に学生に訴え、唱導する、という考え方が必要なんでしょう。このブログでは、最後に「医師は忙し過ぎて現実から目を背けがち」と書いている。この、忙し過ぎる医師がほとんど、という状態も社会的損失であり、なんとかしないといけないのかもしれません。

“日本の大学”が消滅する未来─知的創造の場を目指して
研究者の仕事術
米国の大学の教員事情について紹介している記事です。米国に限らず、大学は教育期間でもあり同時に研究機関でもあります。ほとんどの教員は、教育者であると同時に研究者だったりする。日本でも同じなんだが、講義の準備や学生のケアに追われ、特許申請や大学関係の事務作業に追われ、自分の研究をしたり論文を書いたりする時間がなかなかとれないらしい。米国の大学の中には、ノーベル賞を受賞すると講義が免除になる、なんてところもあります。ノーベル賞受賞者がゴロゴロいる米国の大学では、ノーベル賞はたいしたモチベーションにならないんだが、講義をしなくていい、というのが、教授連にとって大変に美味しい飴になったりするらしい。学生側から点数をつけられて評価され、自身の研究を基礎に起業して莫大なストックオプションを手にする米国ならではの話です。このブログの最後のほうに、日本の大学がどうすべきか、書いてある。耳に痛いウサギの逆立ちの人も多そうです。

上司・社長が従業員に隠している9つの真実
ICHIROYAのブログ
コレ海外のブログを紹介しているんだが、なかなか秀逸です。組織で上に立つ、というのは下が考えてるほど楽じゃありません。最近では中間管理職になりたがらないサラリーマンも増えているそうです。この9つの中では「自分がしていることを、オレはいつもわかっているわけじゃない」ってのが、うなずける。仕事を命じるとき、命じること自体が目的化することはよくあります。

Milk myths and facts: Some food for thought
Natural News
「牛乳」が果たして人間の健康にいいのか悪いのか、ずっと議論が続いています。逆に骨粗鬆症になるとか、内臓の細菌のバランスを崩すとか。この記事でも、今の「牛乳」が半ば「人工的に作られた」ものだと警告し、ある種のガンを引き起こす可能性もある、と書いています。一方の酪農業界や医薬の専門家からは、こうした「牛乳」への見方は偏見であり、これまでと同様に「牛乳」は優れた栄養食品だ、という反論が出ている。ここから先は「陰謀論」めいてしまうんだが、酪農業界を中心にした米国のピラミッド体制は、既得権益を保持するため、従来の「健康にいい」という主張を繰り返しているらしい。農薬やホルモン剤、抗生物質に「汚染」されていない「牛乳」を飲むことが大事、というわけです。


アゴラ編集部:石田 雅彦


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