失業率は「現実」を正しく表し続けるか --- 岡本 裕明

2013年10月23日 13:54

政府機関の閉鎖によって遅れていたアメリカの9月の雇用統計は予想の18万人増を下回る14万8000人でひとまず着地しました。失業率は0.1%ポイント下がって7.2%となり、着実に改善の兆しを見せています。今日はこのあたりを題材にアメリカの失業率、ひいては金融緩和を推進したオバマ政権の判断は正しいのか、考えてみたいと思います。


失業率を語るには労働参加率を考慮しなくてはいけません。これは仕事を求めている人がどれぐらいいるかという母数に影響するもので、社会の変化により上がったり下がったりします。今回の労働参加率は63.2%と先月とは変わりませんが34年前の水準まで低下しており、この参加率は更に下がる公算があると見ています。

一般には労働参加率が下がっている理由はベービーブーマー層のアーリーリタイアメントではないかと見られています。特に2008年のリーマン・ショックに伴う企業のリストラ、レイオフ後に就業するのを諦めた層が多いとされています。しかしながらFRBあたりではこれだけでは説明がつかない数の人が就労をあきらめているのではないかと分析しています。

私の直感ですが、若年層で労働しなくてもよい経済的に恵まれている層が増えているのではないかという気がしております。アメリカは相続税(=遺産税)はありますが、基礎控除が非常に高く(約5億円)、一部の資産家を除き、親の資産を子が相続しやすい環境にあります。つまり、極論すれば親の財布の中を計算すればどうしても働かなくてはいけない状況にならないということではないかという気がしております。

もうひとつは金融緩和の効果は株式などへの資金流入といわれていますが、デイトレなど株式市場で小遣い稼ぎをしながら、という人も増えているのではないでしょうか?

更には日本でいうフリーター的な仕事をしたり、学校に戻ったりするケースもあるはずです。つまり、労働がすべてではない、と考える人やアメリカ版ロストジェネレーションが増えている結果がこの労働参加率の低迷に繋がっている可能性は否定できないはずです。

人間、一度緩い生活をするとなかなか厳しいところに戻ることが出来ません。生活のためとして結局、労働をしなければいけないと思っても責任を取らなくてもよい時給ベースのような仕事について身軽になる人はカナダでも相当見受けられます。

アメリカはブーマー族の本当の意味でのリタイアメントがまさに始まるところですから今後、この労働参加率は更に下がる公算があることは含んでおく必要があるかもしれません。これが意味することは失業率は案外速いテンポで改善してくるかもしれないということです。6.5%のターゲットへの到達は2014年度中に達成してもおかしくないかもしれません。

雇用統計においてほとんどのメディアはネットの就労者の増減に一喜一憂していますが、よく考えればこの労働参加率に影響される失業率の計算はもっと注目すべきアイテムだと思っています。確かバーナンキ議長は以前、失業率よりもネットの就労者数増減に重きを置くといっていた気がしますが、FRBの雇用に対する目標はあくまでも失業率であります。

そのあたりの社会構造の変化を汲み取っていくとこの雇用統計の数字、或いは金融政策の流れがどうなるのかよく見えてくるかと思います。

では、最後にオバマ大統領のリーマンショック後の金融緩和政策は正しかったのかと言えば失業率が順調に下がってきている事実を踏まえれば文句は言えないでしょう。共和党はさまざまな理由をつけるでしょうし、「もっと早く経済問題を解決できたはずだ」ぐらいは平気で言うと思いますが、リーマン・ショックからのアメリカの経済の再生は早かったと思ってます。日本は20年も失ったのに対してアメリカがそこに学んだとすれば「一気に」という思いっきりのよさが功を奏したといってもよいでしょう。

今日はこのぐらいにしておきましょうか。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年10月23日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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