米上院の中の懲りない面々、共和党有力議員がFRB議長指名を阻止へ --- 安田 佐和子

アゴラ

政府機関の閉鎖で共和党の支持率が過去最低を更新したため党内で激震が走り、暫定予算案および債務上限引き上げで民主党多数派の米上院を飲み込んだ──とは、ニューヨーカーだけでなく日本の方も想像されたことでしょう。ついでに言うなら、似非フィリバスターを行使したテッド・クルーズ米上院議員(テキサス州選出)なんて不支持率は倍増。さすがに強硬な対決姿勢は懲りたであろうと、楽観視した人々も少なくなかったはずです。

政府機関の閉鎖は誰のせいか、という質問に対する世論調査の結果は以下の通り。

▽ロイター・イプソス(10月4~8日実施、対象1300人)

共和党→24%

・オバマ/民主党→19%

・両方→46%

・どちらでもない→11%

▽NBC/WSJ紙(10月7~9日、対象800人)

共和党→53%

・オバマ/民主党→31%

・両方→13%

・どちらでもない→3%

▽ピュー・リサーチ・センター(10月9~13日に実施、対象1504人)

共和党→46%

・オバマ米→37%

・両方→13%

・どちらでもない→5%

挙句の果てに、政府機関の閉鎖を受けてCNNの調査でもこんな嘆かわしい結果が飛び込んできました。米下院での共和党多数派の現状についての質問では、失望ぶりが明らかになっています。

米下院で共和党が多数派であることは、アメリカにとって

・良い→38%(12年12月時点で51%、11年5月時点で48%)

・悪い→54%(12年12月時点で43%、11年5月時点で44%)

・どちらでもない→4%(12年12月時点で5%、11月5月時点で6%)

・意見なし→3%(12年12月時点で1%、11年5月時点で3%)

ベイナー米下院議長にいたっては「辞任すべき」との回答が63%と、「続投すべき」の30%の2倍を超えていました。

それでも米上院の中は、懲りない面々が並びます。

ランド・ポール米上院議員(ケンタッキー州選出)が、イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)副議長のFRB議長指名の採決を妨害するリスクが浮上してるんです!今度はFRB議長の後任人事を人質に、自身の要求を呑ませる気なんですね。同議員の関係者が明かしており、来週に再開する米上院で法案の採決を目指す見通し。ニュースを受けて声明で「FRB議長の後任人事を検討するに当たり、私が提案し超党派議員が支持する米連邦準備制度に透明性を求める法案採決を望む」との見解を表明してます。

法案は、米会計検査院(GAO)にFRB議長をはじめ理事、地区連銀など金融政策担当者への監査、および米議会への報告を義務付ける内容。すでにFRBにはGAOのほか、監査部門が眼を光らせてはいるのですが・・。

ポール議員といえばティーパーティー寄りで知られるほか、2012年の大統領選に出馬したロン・ポール前米上院議員で長男。父親がFRB廃止論者であるだけに、意思を受け継ぎ狙い撃ちです。自身も2016年の大統領選を視野に入れており、5月の終盤にはフェイスブックをはじめグーグル、eベイなど政治資金集めを目的にシリコン・バレー詣でに打って出ていました。

ポール議員、12年の選挙ではテッド・クルーズ議員誕生に尽力。

rand-paul

CNBCが米上院の民主党関係者のコメントを元に報じたところ、イエレン副議長の指名妨害には「60人の支持者が必要」。コリー・ブッカー前ニューアーク市長(ニュージャージー州)が米上院再開後に議員に就任するため、米上院の議席数は民主党が55、共和党が45となります。民主党が優勢な状況が変わらない上、リッチモンド大学のカール・トビアス教授(憲法学)によると、「共和党から少なくとも5人」がイエレン議長の誕生を支持する公算。同教授にしてみれば、「大した問題ではない」といいます。それでも2週間程度は採決阻止が可能といいますから、侮れません。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2013年10月26日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。