海外に行くと見えてくる「日本の常識は世界の非常識」 --- 内藤 忍

アゴラ

上海に来て2日目になりました。出かける前に、東京で良く言われたのが「上海って大気汚染は大丈夫?」といった質問です。北京の大気汚染の報道を中国全土と思い込んでいる日本人は意外に多いのです。逆に中国では、「原発事故の影響で東京は危険なの?」と聞かれることがあるそうです。情報の正確な伝達とは、なかなかうまくいかないものです。

それはともあれ、上海では、現地の人たちが行くようなお店を中心に案内してもらっていますが、食のレベルは極めて高いと思います。初日に行った台湾の有名な小龍包のお店「鼎泰豊(ディンタイフォン)」は、皮が薄く、台北で食べた味に近いものでした。小龍包は、皮が厚いのは冷凍もので、美味しくありません。上海では、お店で作って蒸して出していることがわかります。日本の有名店はどうなんでしょう?

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上海ガニも、既に何回は食べました。カニの入ったお粥(写真)は夜食に食べたものですが、濃厚なカニの内臓がお粥と一体化して、脳天にガツンと来る味わい。鍋を食べた後のお腹一杯の深夜にも関わらず、一口食べると止まらなくなってしまいました。上海カニは何回食べても飽きません。帰国するまでにあと2~3回食べて帰ろうと思っています(笑)。

そんな上海の飲食事情ですが、経営サイドから見ると、市場が成長しているので大きな可能性があるようです。

日本の飲食業界は、過当競争に陥り、収益性が極めて低くなっています。人件費が高いので、稼働率が上がっても、利益が大きく伸びない構造になっています。また、低価格帯のお店は大手との真正面からのぶつかり合いになり、中小の会社では価格競争に勝てません。個人が起業しようとすると、ニッチな市場をきめ細かく開拓していくミクロの戦いになってしまいます。

上海では、まだ開拓されていない業態がたくさんあり、チャンスが溢れているようです。日本に比べると賃料が高いというマイナス面がありますが、人件費は低いので、高付加価値の商品を提供して、稼働率を上げれば、大きな利益につながる可能性があります。しかし、日系企業の多くは中国の現地スタッフのマネジメントに苦労しているようです。

その原因は、現場のトップに権限が100%委譲されず、誰が責任者なのかよく分からない日本の大手企業の仕組みにあります。中国では「誰がボスなのか?」が明確になっていなければ、誰の言うことを聞くのかわかりません。東京本社と現地のトップのどちらを向いて仕事をして良いかわからないと混乱するのです。

その点オーナー系のお店は現地で100%意思決定でき、現地のスタッフから見れば、誰を見て仕事をすれば良いかわかりやすいのが強みです。Kemuri上海も岡田さんというオーナーがまとめあげることで、現地のスタッフと日本人のチームワークが生まれているのがわかりました。

ウェットで曖昧な人間関係によるマネジメント、責任者を明確にせず、合議制によってみんなでリスクをシェアする意思決定の仕組み。日本では通用しても、世界では通用しないのです。

上海でも「日本の常識は世界の非常識」を再確認することになりました。

編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2013年10月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。